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事例研究のやり方と書き方を例を用いて解説-具体例で見る卒論事例研究の分析方法

卒業論文や修士論文を執筆する際に事例研究という手法を用いることが有ります。事例研究とは、ある理論について分析する際に、事例を用いてその理論を肯定もしくは反証する手法のこと。

この記事では卒論で事例研究を行う場合の事例研究の書き方や分析方法について、具体例を用いてご紹介します。

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事例研究のやり方と書き方を例を用いて解説-具体例で見る卒論事例研究の分析方法

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論文を書くときには、統計的研究と事例研究という2つの方法を使用して卒業論文の執筆に取り掛かることが多いです。

統計的研究と言うのは、無作為に隔たりの無いサンプルを集め、統計的な手法を用いて分析する研究方法のこと。広く当てはまる傾向などを調べるときに使われる手法で、ある事象がどの程度一般的なのかを考えるときなどに役に立ちます。

一方で、その事象が発生する因果関係(原因や理由)までを解き明かすことができないという欠点があり、また、調査に膨大な費用が発生したり、隔たりの無いサンプルを集めるのが難しいと言う欠点があります。

事例研究は、統計的研究とは異なり、物事の傾向や法則を解き明かすことは苦手ですが、実際にある事例を研究して、現在ある理論などが正しいのかどうかを検証するのに適した研究方法です。

この記事では事例研究について、分析方法や書き方などを筆者の修士論文を参照しながら詳しくご紹介します。

 

事例研究とは

事例研究は、実際の事例を研究して、既存の理論などが正しいかどうかを検証することが得意な研究方法です。

事例と言うのは、ある特定の集団や固体などを指し(全国調査ではなく、○○大学の例など)、事例研究ではその集団で起こる出来事の背景(コンテクスト)を観察できるのが特徴。

例えば、統計で「メキシコではトウモロコシを多く消費する」という結果が得られたとしても、では何故トウモロコシなのかというところを解き明かすのが難しいです。

一方で事例研究だと、トウモロコシを食べる地域の歴史や風土などその背景にまで焦点を当てて、分析することが可能です。

  

事例研究の分析方法

事例研究の分析方法は、まず自分が解き明かしたい理論を見つけ、その理論に関する先行研究をレビューし、理論の問題点を明らかにします。

続いて、理論を肯定するための事例もしくは反証・一部反証するための事例を探し、事例について理解を深めます。

そして最後に自分が分析した事例を用いて理論の正当性を述べたり、理論の不足しているところを補ったり、訂正したりして、自分の研究の成果をその理論に付け加えるという形で新しい視点を論文として発表し、完成です。

 

理論を事例を用いて肯定/反証する

理論を事例を用いて肯定したり反論すると言うのはどういうことでしょうか。

例えば、Aという理論があるならば、そのAという理論は、○○の場合には当てはまるが、△△の場合には当てはまらないということを、Bという事例を用いて証明し、論文でA'という結論を提示するというものです。

 

事例研究の手順とやり方

ここからは事例研究を行うときの手順とやり方を紹介します。

事例研究の手順は次の通りです。

①事例を用いて研究したい理論を探し整理する

②事例を用いて理論を肯定/反証する

③理論に自分の理論A'を付け加える

 

①理論の整理(先行研究のレビュー)

事例研究の最初の一歩は自分が研究したい理論を見つけ、理論を整理するところから始まります。

理論と言うのは、例えば、経済学ではマルクス経済学について書かれた研究だったり、経営学ならマーケティング論について書かれた研究、国際系ならフェアトレードについて書かれた研究などを指します。

理論については既に多くの論文が執筆されているので、それらの論文や研究レポートを読み、その理論についてどのような論文が書かれているのかを整理します。これを先行研究のレビューと呼びます。

先行研究のレビューを行う際に意識したいのが、先行研究リストを作成すること。

卒論の最後には参考文献を一覧化することが必要なため、先行研究を集めるの時点でリストを作っておくと後で時間をかけて情報を探す必要がなくなるのでおすすめです。

また、本の概要をまとめておくことで、卒論執筆時に参照し易くなります。

・本や論文の場合、「本のタイトル、著者、出版社、発行年月日、本の概要」

・ホームページの場合、「HPのタイトル、URL、閲覧年月日、HPの内容」

をExcelやWordを使って一覧化しておきましょう。

 

※先行研究の集め方についてはこちらをご参照ください

sumikuni.hatenablog.com

 

②理論を肯定/反証する事例を研究

理論の整理が終わったら、その理論を肯定したり、足りない分を補ったり、現実とそぐわない部分を訂正したりするための事例を整理します。

事例研究の場合、先に事例について研究したいと思ってからその事例が使えそうな理論を探す方法もあるのですが、一般的には、理論を研究するために事例を考えます。

例えば、林檎は赤いという理論があったとしたら、青い林檎を探して、どのような条件下で林檎が赤いという理論が当てはまらないのかなどを、青い林檎という事例を研究して立証していくという作業となります。

  

③レビューした理論へ事例研究の結果を上乗せする

最後はレビューした理論へ事例研究で見つけた条件や結果を付け加えて、既存理論に自分の研究を上乗せします。これが巨人の肩の上に立つということです。

例えば、林檎は赤いの例であれば、「通常は林檎は赤いが、実がつき始めるタイミングで気温が○○度以下の日が10日続いた場合には林檎が青くなる可能性がある」というに理論を付け足します。

  

具体例を使って事例研究の書き方を解説

事例研究のやり方がわかってきたところで、最後に筆者の修士論文の例を見ながら事例研究についてのイメージを膨らませていきたいと思います。

 

題名

まずこの論文のテーマとなる題名ですが、私の論文では、

「企業の長寿戦略-○○の事例」

というタイトルで、経営学の長寿戦略の理論について実際の長寿企業を事例として分析ました。

 

はじめに-序論・問題提起

まず、「はじめに」から。問題提起です。

私の論文の「はじめに」を要約すると、

企業を長く存在させるというのは、多くの人々が関心を示す事柄で、これまで様々な研究がされている。

代表例としてルメルトの多角化戦略(ラインナップと市場を広げる)と三品の転地(売れなくなる前に別の産業へ移動する)があるが、両者の戦略を採用することができるのは資金力のある大企業だけであり、日本に多く存在する中小規模の長寿企業の説明ができない

この論文では規模が大きくない長寿企業がどのような生存戦略を採ってきたのかを、実際に市場を多角化させて生き延びている○○社の事例を元に分析する

 

というものです。

最初の段落で「一般的に企業を長く存在させる方法が研究されている」ことが書かれており、次の段落で「先行研究の例とその問題点」、そして最後の段落で「別戦略を採っている事例を元に先行研究への批判的考察をする」ことが書かれているのが分かるかと思います。

 

※「はじめに」の詳しい書き方はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

第一章-先行研究と分析視座

続いて第一章は先行研究と分析視座。

具体的には

①戦略論の諸研究(経営学の分野の理論の紹介)

②Rumeltの企業戦略(経営学の権威ルメルトの企業戦略理論)

③三品の長寿戦略(長寿戦略を研究する三品氏の理論を紹介)

④本研究での視座

⑤研究方法

としました。

①では戦略論の歴史的変遷の一般的な部分を紹介。所謂その分野の概要です。

この論文は経営学の分野なので、戦略論が軍事分野で生み出された言葉で、その後アンゾフ、ルメルト、プラハラートとハメル、ストークJr.と、様々な研究者によって多くの理論が生み出されていったことを記しました。

②は更に絞ってその中からルメルトの理論を整理しています。

③では三品の理論の整理。

④は分析視座なのですが、分析視座というは、先行研究を整理した上で、この論文が何を解き明かしたいのかを説明することです。私の論文の分析視座は下記の通り。

(前略)

二つの先行研究を概観すると、 Rumelt(1974) では企業がどの程度多角化しているかという、企業の状態に着目しているのに対し、三品 (2007) では企業がどの様に生き延びれば良いのかという手法に着目しているという違いがあることがわかる。

一方、 Rumelt(1974) 、三品 (2007)のどちらの戦略も新しい技術と新しい市場を同時に変化させること で企業が長く生き延びることができるという、自社技術の変化を前提とした結論を出している。

企業の状態と手法という差異がある両者の理論ではあるが、企業が生き延びるためには自社技術の変化が必要という点は類似した理論と考えられる。しかし、この自社技術の変化という点において、 規模の小さな企業では本業を変更するという行為がリスクとなり、採用が難しい戦略といえる。

本稿では、規模の大きくない企業 でも採り得る戦略という観点から、自社の技術は維持しながら市場を拡大していくという、市場の多様化 と
いう視点を提示する

 

この最後の黄色の部分が分析視座です。先行研究の問題点を指摘し、自分が解き明かしたい新たな理論について分析することが書かれています。

⑤第一章の最後の項目は研究方法です。

研究方法は、私の研究の場合、ルメルトと三品の論文を主として参考とすること、事例研究として○○社の事例を取り上げること、事例研究のため、インタビューなどを行うこと、などが明記してあります。

 

第二章-本論(事実に基づいた自分の分析)

本論は論文のメインとなる部分。この論文では○○社の事例研究がメインとなるので、この第二章を丸々事例研究に使いました。

具体的には

①○○社が所属する業界について

②○○社について

③○○社の特徴

④○○社の歴史(どういう戦略を採ってきたか)

⑤事例のまとめ

となっています。

この部分は事例について詳しく解説する部分ですので、自分が調べてきたことを分かりやすく整理していくことが大切です。

 

第三章-結論・自分の考察・今後への課題

そして第三章は結論です。私の論文では「第三章-事例の解釈」という題名にしました。

ここまで事例の○○社について詳しく解説してきたので、この事例を

①ルメルトの視点での解釈(多角化すれば生き残れる)

②三品の視点での解釈(転地をすれば生き残れる)

③本稿の視座での解釈(市場を多角化することで生き残れる)

の3つの視座で解釈し、最終的にルメルトの視点でも、三品の視点でもなく、③の自分の仮説が正しかった、と結んでいます。

そして最後に

④ディスカッション

として、ルメルトの多角化戦略、三品の転地はどちらも大企業だからこそできる戦略で、そもそも製品ラインナップを拡大したり、今の事業とは別の事業に主戦場を移すというのは規模が小さい企業だと難しく、そのような企業が採るべき戦略として、「市場を多角化させること」が有効なのではないか、そしてこの「市場を多角化させること」を「準多角化」として、この両者の理論に付け加えたい。

と、自分の研究で新しく提唱した「市場を多角化させること」を「準多角化」と命名し、「巨人の肩の上」にすこし付け加えるという論文の意義を示して、結んでいます。

 

※卒業論文の書き方についてはこちらをご参照ください

sumikuni.hatenablog.com

 

リフレッシュにはオンラインの習い事がおすすめ

卒論を執筆していると、思うように進まなかったり、考えがまとまらないという場合があります。

そんなときのリフレッシュ方法として、オンラインの習い事がおすすめ。

コロナ禍で外に出にくかったり、ジムや教室に通うのが難しい状況ではありますが、現在はオンラインでもヨガやフィットネス、英会話、プログラミング、ボイトレ、楽器など、様々なことをなることができ、家に居ながら趣味の幅を増やしていくことが可能です。

卒論を書いているとストレスが溜まってしまうこともありますが、今あるツールを使いながら上手に発散して、執筆に取り組んでいけると良いなと思います。

 

※オンライン教室の情報サイトはこちら

「くらする」-やってみたいが見つかるオンライン教室の情報サイト

 

終わりに

この記事では、卒業論文で事例研究を行う際に知っておきたい事例研究の方法や具体例をご紹介しました。

論文作成は「巨人の肩の上に乗る」こと。先人たちが行ってきた巨人のように膨大な研究と理論をレビューし、その上に少しだけ自分の研究成果を追加する、という作業が論文を書くことだといえます。

理論をしっかりとレビューし、事例研究を深めて、自分オリジナルの結論が出せるように、事例研究を進めてみてください。

 

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