大学を卒業する際に最後の難関として突破しなければならない卒業論文。
いざ卒業論文を書こうと思っても、どのように書けば良いか分からないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では卒業論文の「はじめに (序論)」の書き方について、筆者が執筆した修士論文(大学院の卒論)を例に解説します。
- 卒業論文 はじめに(序論)の書き方-文系の例で卒論の"はじめに"の内容や書き方のコツを紹介
- 卒論のテーマ決め
- 先行研究のレビュー
- 卒論の構成
- はじめに-問題提起・研究方法を書く
- 例文を用いて詳しく解説
- リフレッシュにはオンラインの習い事がおすすめ
- 終わりに
卒業論文 はじめに(序論)の書き方-文系の例で卒論の"はじめに"の内容や書き方のコツを紹介
卒業論文を書く場合に始めに行うことはテーマ決め、続いて、先行研究のレビュー(文献を読む)を行います。書くことが纏まってきたら構成(章立て)を考え、卒論の執筆開始となります。
そして、卒業執筆の見出しとなるのが、「はじめに(序論)」です。
「はじめに」は、卒論でどのようなことを解き明かしたいのかテーマに対する問題提起を行い、その問題を分析する方法を記述します。
この記事では、卒論執筆の流れを大まかに解説しながら、「はじめに」の書き方について詳しくご紹介します。
※卒論の「終わりに」の書き方はこちら
卒論のテーマ決め
卒業論文を書くときのはじめの一歩が「テーマ決め」。
先ずは自分が興味のあることやこれまで学んで楽しいと思ったことからテーマを選定します。
テーマを選んだら、そのテーマに沿って先行研究や文献を集めることとなります。
このテーマは始めはあまりしっかりとしたものでなくてもよく、まずはどんな文献を集めるかという視点でテーマを選定するといいです。
先行研究の収集を進めるうちに、自分の中でテーマが具体的なものになっていくので、その時にしっかりとした題名を決めると良いと思います。
※卒論のテーマ決めについての詳しい解説はこちら
先行研究のレビュー
テーマが決まったらテーマに沿った文献や論文を集めて先行研究を行います。
論文と言うのは「巨人の肩の上に立つ」作業だと言われています。意味合いとしては、先人たちが行ってきた巨人のように膨大な研究と理論をレビューし、その上に少しだけ自分の研究成果を追加する、というものです。
新しい新理論を打ち立てるというのは、一流研究者でも難しく、それこそノーベル賞級の研究を行って初めて実現できるものです。
ですから、卒論では「既に膨大に研究されているものに自分の理論を少し上乗せする」という気持ちで先行研究のレビューを行いましょう。
※先行研究の集め方はこちら
卒論の構成
テーマを考え、先行研究がある程度進み卒論の全体図が見えてきたら、卒論の構成(章立て)を考えます。
卒論の構成は4部構成で考えると良いと思います。
題名、
①はじめに(序論・問題提起など)
②第一章( 先行研究と分析視座)
③第二章(本論・自分の研究のメイン)
④第三章(結論)
という4部の構成を土台として、分量が多ければ第二章の本論を2つに割って四章(5部)編成とするなど、工夫することも可能です。
※卒論の書き方や構成についてはこちら
はじめに-問題提起・研究方法を書く
「はじめに」は、問題提起と分析手法を明らかにする章です。
問題提起とは、自分が設定したテーマついて、どういう問題意識を持ってそのテーマとしたのかを説明すること。
そして、それを踏まえたうえでどのような手法を用いて分析するのか、誰の理論を元に分析するのかと言った研究方法を書きます。
例えば、私の修士論文の「はじめに」を要約すると、
企業を長く存在させるというのは、多くの人々が関心を示す事柄で、これまで様々な研究がされている。
代表例としてルメルトの多角化戦略(ラインナップと市場を広げる)と三品の転地(売れなくなる前に別の産業へ移動する)があるが、両者の戦略を採用することができるのは資金力のある大企業だけであり、日本に多く存在する中小規模の長寿企業の説明ができない。
この論文では規模が大きくない長寿企業がどのような生存戦略を採ってきたのかを、実際に市場を多角化させて生き延びている○○社の事例を元に分析する。
というものです。
最初の段落で「一般的に企業を長く存在させる方法が研究されている」ことが書かれており、次の段落で「先行研究の例とその問題点」、そして最後の段落で「別戦略を採っている事例を元に先行研究への批判的考察をする」ことが書かれているのが分かるかと思います。
このように、既存理論の問題点を指摘し(問題提起)、その問題にたいしてどのような方法を用いてアプローチするか(研究方法)を明示するのが「はじめに」の役割なのです。
例文を用いて詳しく解説
ここからは例文を用いて「はじめに」の書き方を詳しく見ていきたいと思います。例文に用いるのは、私が大学院で書いた経営学の修士論文です。
問題提起
「はじめに」は2ページ程度の分量で、問題提起は1ページ程度。問題提起の構成としては下記のように書きます。
①自分の研究が解き明かそうとするものとその社会的ニーズ
②先行研究の理論
③先行研究の理論の矛盾点や説明しきれていない点
①自分の研究が解き明かそうとするものとその社会的ニーズ
まず、「はじめに」の入りの部分は、自分が解き明かしたいことと、それが社会的に意義のあるものだということを暗示するために、社会的なニーズを説明します。
企業を長く存続させることは、企業にとって少なからず関心があるトピックである。
経済がグローバル化している現在において 、生き延びるために企業は売上拡大やリスク分散を考えるだろう。つまり、一つの企業が複数の業界へ参入し販路を拡大する多角化戦略や、自社が属している業界とは別の業界へ主業を変更し製品を製造・販売する、他事業への主業の移転を考えることは自然である。
この例の場合、解き明かしたいことは「企業を長く存続させる方法」で、その企業を長生きさせるための戦略研究はニーズがあり、その為に実際に企業が多角化戦略や転地を検討することは自然なことです、ということを書いています。
②先行研究の理論
続いて、自分が解き明かしたいことについて、先行研究がどういう結論を出しているかを書きます。
下記の例では多角化戦略と転地とは何かをルメルト氏と三品氏の先行研究を紹介しています。
Rumelt(1974) の研究は、どの様な多角化戦略が企業の生存可能性を高めるのかについて検討したものと解釈することが可能である。
Rumelt(1974) は、数ある多角化戦略の中で一番効果的な形態として「抑制的 主力」と「抑制的 関連」という 2 種類の多角化を指摘した。
実際、この Rumelt (1974) で「抑制的 主力」や「抑制的 関連」に分類され、現在も存在し続ける企業もある。彼が否定的な態度をとった戦略は「垂直的 主力」、「受動的 非関連」の 2 つである。
(中略)
また三品 (2007)は、長寿企業として生き延びるか否かは良い立地に事業を起こし、事業立地が沈下する前に他の事業へ移転する、「転地」を行うことができるかにかかっているとしており、その為には、経営能力の高い経営者に恵まれるか否かが重要であると特に個人の経営能力の有無の重要性を説いている。そして、経営職適格人材の採用、早期見極め、経営者指名方式への制度改革が必要だと述べている。
要約すると、企業が長生きするために、ルメルト氏は多角化戦略、とりわけ「抑制的 主力」と「抑制的 関連」という方法がいいといっています。
また、三品氏は良い立地に事業を起こし、事業立地が沈下する前に他の事業へ移転する、「転地」を行うことが有効です。
ということを書いて、先行研究の主張を纏めています。
③先行研究の理論の矛盾点や説明しきれていない点
最後に先行研究では説明しきれていないことを指摘し、自分の視点を過去の研究に付け加えたいということを書きます。
しかし、 Rumelt(1974) で推奨される多角化や三品 (2007) で述べられている転地はどの様な企業にも当てはまる戦略なのであろうか。本業を残したまま他の事業へ多角化することも、本業の事業立地を変更することも、相当な資金力を必要とするはずである。
本稿では、資本が限られる企業がどの様に生き延びれば良いのかを考察するために、Rumelt(1974) と三品 (2007) で分析されている大企業ではない、規模の小さな企業を事例に両者の理論を分析する。
そして、本業の事業立地は変更せず、市場を拡大していくという、受注先の多角化(ここでは仮に準多角化とする)という視点を 、長生きする為の一つの新しい視点として、三品 (2004,2007) 、 Rumelt(1974) の理論に付け加えたい。
要約すると、ルメルト氏の多角化も三品氏の転地も、お金がある企業しかできないため、規模が小さな企業が採ることができる長寿戦略を事例を用いて解明し、その戦略を「準多角化」としてこれまでの理論に付け加えます、と書いています。
研究方法
問題提起が終ったら、次は研究方法を書いていきます。分量は1ページ程度でOKです。
私の研究では事例研究なので、事例を用いて研究しますよ、と書きます。そして、
①選んだ事例についての解説
②何故その事例を選んだか
を書きます。
①選んだ事例についての解説
私の論文の事例についての解説は次の通りです。
簡単に言うと、120年もの間存続する長寿企業なのにルメルトの多角化戦略も、三品の転地も行っていない企業がありますよ、ということです。
事例として本稿では○○株式会社を取り上げる。同社は△△を製造しているメーカーで、20××年に創業 120 年を迎えた老舗である。
(中略)
○○社は分野で業界トップの業績であり、世界で見ても売り上げで 2 番手につけている。また、 19×× 年に株式会社に移行してから赤字決算となったのが 2 回だけと、非常に安定した企業である。
(中略)
Rumelt(1974) の分類で見ると、○○社は 120 年の間、自社製品としては△△の製造に注力してきた単一事業の企業といえる。また、△△を一貫して行っていることから、三品 (2007)で述べられている転地も行っていない。
②何故その事例を選んだか
事例の説明が終ったら、その事例を選んだ意義を説明します。
この論文の場合、120年の長寿企業で多角化も転地も行っていないのに生き延びた明確な理由をこの企業が示しているから、ということを書いています。
本業に従事している○○社が創業から 120 年間事業を続けられている理由は、技術力やサービスなども考えられるが、事例を詳細に 見ると、実は○○社が取引している取引先の市場が多角化していることであるとわかる。
○○社の受注構成は、全体に占める最大取引先の売り上げの割合が 2%と低い数字である。
(中略)
つまり、受注先の市場が多角化しているのである。
要約すると、多角化も転地も行っていないこの企業が長寿なのは、同じ製品を様々な市場に販売する戦略を採っており、受注先の市場が多角化している(=市場の多角化=準多角化)からだ、ということが書かれています。
改めて研究の意義を述べる
自分の研究の問題提起と研究方法を述べたら、最後の段落でもう一度研究の意義を強調します。
この論文では、実際に多角化や転地を行っていない企業が倒産している例があり、資金力が無い企業が採ることができる長寿戦略は大切なので、彼の理論では捉えきれないところを本稿で明らかにします、ということを書いています。
Rumelt(1974) や三品 (2007)では、資金力がない企業に関しては、それほど重要性が高くないとし、その内容まで取り上げられなかった可能性は否定できない。
しかし、実務の世界を見ると、 資金力のない企業の倒産リスクは高い。実際、○○社と同業メーカーが 100 年以上続いた後に経営破綻している。そして、その破綻の理由は、市場が多角化できていなかったため、市場の変化についていけなったからだと考えられる。
つまり、独自の技術やノウハウを持った企業においても市場が速く、大きく変化する現在では市場を拡大するという視点が必要なのである。
確かに、 Rumelt(1974) で推奨される多角化戦略や三品 (2007)で述べられている事業立地の転地を行うことができれば 、市場の視点は必要ないのかもしれない。
しかし、両者の理論では、自社の能力と市場を一度に増やさなければならず、この視点では技術の多角化とは別に起こり得る市場の多角化という事象を捉えきることができないのである。
要約すると、ルメルトや三品は資金力が無い企業のことは重要度が低いとして取り扱わなかった可能性もあるが、実務の世界では必要な視点。
両者の理論を用いることができれば一番良いが、この理論だけでは、実際に市場で発生している、「市場の多角化」を説明できないと書いています。
逆説的には、「市場の多角化」は、自分の論文なら説明できるので、自分の研究は、これまでの理論に新たな視点を付け加えるという意義がある、ということを暗示して「はじめに」を結んでいます。
※事例研究のやり方の解説はこちら
リフレッシュにはオンラインの習い事がおすすめ
卒論を執筆していると、思うように進まなかったり、考えがまとまらないという場合があります。
そんなときのリフレッシュ方法として、オンラインの習い事がおすすめ。
コロナ禍で外に出にくかったり、ジムや教室に通うのが難しい状況ではありますが、現在はオンラインでもヨガやフィットネス、英会話、プログラミング、ボイトレ、楽器など、様々なことをなることができ、家に居ながら趣味の幅を増やしていくことが可能です。
卒論を書いているとストレスが溜まってしまうこともありますが、今あるツールを使いながら上手に発散して、執筆に取り組んでいけると良いなと思います。
※オンライン教室の情報サイトはこちら
「くらする」-やってみたいが見つかるオンライン教室の情報サイト
終わりに
この記事では、卒業論文の「はじめに」の書き方をご紹介しました。
「はじめに」は、その論文で自分がどのような問題意識を持って、何を解き明かしたいのかを明確に表現することが重要な章。また、解き明かすための手法を提示することが求められる章でもあります。
「はじめに」を書くときには、問題提起と分析方法を書くということを意識して、卒論を執筆してみてください。
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