回転運動(円運動)をするとき、1秒当たりに進む角度を角速度ω(rad/s)、1分当たりに回転する数を回転数N(RPM)と呼ぶのですが、実は角速度と回転数は互いに変換できる関係性がありました。
この記事では角速度と回転数を変換数公式の紹介と、その計算式の意味をご紹介します。
- 角速度ω(rad/s)と回転数N(RPM)の変換方法と公式の意味-計算式を理解する鍵は時間単位の一致
- 角速度ω(rad/s)と回転数N(RPM)の変換公式【ω=2πN/60】
- 弧度法ラジアン[rad]の意味
- 角速度は1秒間に進む角度
- 回転数(RPM)は1分間に何回転するか
- 角速度を回転数を使って求める計算式【ω=2πN/60】の意味は?
- 角速度から回転数を求める式は【N=30ω/π】
- 角速度と回転数と周速度の関係
- 終わりに
角速度ω(rad/s)と回転数N(RPM)の変換方法と公式の意味-計算式を理解する鍵は時間単位の一致
角速度と回転数を互いに簡単に変換しあえる公式があります。
簡単に言うと、どちらか一つだけ分かっていれば、もう一方の値を公式から計算できるということ。つまり、角速度が分かれば回転数を、回転数が分かれば角速度を求めることができるのです。
公式はとても役に立つので、暗記すると便利なのですが、同時に、何故その公式が成り立つのか、いわば公式の意味を知っていると、角速度と回転数の関係性がよりよくわかるようになります。
この記事では公式の意味を理解することを目的に、図を用いながら、「公式が何を意味しているのか」をご紹介していきたいと思います。
角速度ω(rad/s)と回転数N(RPM)の変換公式【ω=2πN/60】
回転数N(RPM)のときの角速度ω(rad/s)を求める公式は次の通りです。
ω=2πN/60(約分してω=πN/30としてもOK)
ω:角速度[rad/s]、N:回転数(RPM)
つまり角速度=2πx回転数(/分)÷60という式です。
この式を使うと回転数から角速度を求めることができます。
例えば、1分間に1回転する場合、
ω=2πx1÷60=π/30[rad/s]となります。
1分間に120回転ならN=120RPMなので、
ω=2π x120÷60=4π[rad/s]が角速度となります。
※角周波数と角速度の関係はこちら
回転数から角速度が分かると地球の自転速度が分かる
公式の意味を考える前に、この公式の使い方を紹介します。
例えば、回転数から角速度が分かることで、なんと、地球の自転速度を計算することができてしまいます。
計算に必要な材料は地球の回転数と半径。
地球の回転数:24時間で1周
地球の半径:6,371kmです。
①まず回転数から角速度を計算します。
地球は24時間で1周する(正確には23時間56分4秒)ので1分間の回転数に直します。
1分間の回転数 N=1/1436.06RPMです。
②角速度の公式に当てはめる
角速度の公式はω=2πN/60なので、Nに先ほど求めた回転数を当てはめると、
ω=2πx1/1436.06÷60=π/43081.8[rad/s]
となります。つまり、地球の角速度は大体 π/43081.8[rad/s]です。
③角速度に半径をかけて周速度を求めます。
地球の半径6,371km=6,371,000mを角速度にかけると、
π/43081.8x6,371,000=147.8π m/s
円周率πを147.8にかけて求められる自転の秒速は約464m/s。
つまり、私たちは地球と共に1秒間に464mも回転しているという計算になります。
④秒速を時速に直す
秒速464mを秒速から時速に直すので、464x60x60=1,670,731m。
mをkmに直して=1670.7km/h
と計算で地球の自転の時速を算出することができました。
※角速度と周速度の詳しい解説はこちら
弧度法ラジアン[rad]の意味
さて、ここからは先ほどの公式ω=2πN/60の意味を確認してみたいと思います。
まず角度の定義であるラジアンですが単位はradと書きます。日本語訳は「弧度」。
radは下記の公式で求められます。
rad=弧の長さ÷円の半径
言い換えれば、radは弧の長さを円の半径で割ることで算出できる角度のこと。
例えば、円の半径が6で弧の長さが6πの場合、
rad=6π/6=πとなり、この扇形の角度はπ[rad]となります。つまり3.14[rad]。
このπ[rad]がどのような角度なのか。
半径6の円の円周の長さは直径12xπ=12πなので、円周は12π(直径x3.14)。弧の長さが6πなので、円を半分に割った形だと分かります。
この扇形の角度は180度なので、
1π[rad]=180度(π[rad]=180度)
となります。
つまり、弧度法の1π[rad]は度数法の180度に相当する角度ということになります。
※ラジアンについての詳しい解説はこちら
角速度は1秒間に進む角度
続いて「角速度とは何か」ですが、
角速度は物が回転するときの速度を角度で表した数値のこと。
つまり、1秒間に何度移動したのか。角速度は角度÷時間(秒)で計算できます。
角速度=角度/時間(秒)
ω = θ / t [rad/s]
ω:角速度(rad/秒)、θ:角度(rad)、t:時間(秒=s)
角速度の求め方は分かったのですが、求めるときに使用する角度は弧度法のラジアン[rad]です。実は、角速度の角度と言うのは私たちが良く知っている「度」では表せないのです。
私たちは円が1周360度だと知っているのですが、角速度を表す場合には私たちが日常でつかう「度数法=○○度」ではなく、先にご紹介した「弧度法=rad」という単位を使います。
「角度を表すなら、普通の180度や360度でいいじゃないか」と思うのですが、普通の角度の単位○○度だと不都合な点があったりするのです。
例えば先ほどの1秒間で90度進む角速度の距離って、一体どのくらい?って言われたときに、○○度という単位からは直ぐに弧の長さが計算できないですよね。ここで役立つのが「rad」なんです。
ここでは詳細は省きますが、是非下記のページから「rad」の活かし方を確認してみてください。
※弧度法と角速度の詳しい解説はこちら
回転数(RPM)は1分間に何回転するか
続いて回転数の意味について。
回転数はRPMという単位で表されることが多いです。RPMはRevolutions per minuteの略で、1分間の回転数を指します。
つまり、1800RPMの場合、1分間に1800回転する、ということです。
※回転数を周波数と極数から求める方法はこちら
角速度を回転数を使って求める計算式【ω=2πN/60】の意味は?
角度rad 角速度の意味と回転数の意味が分かったところで最初に見た角速度ω(rad/s)と回転数N(RPM)の変換公式を見てみましょう。
ω=2πN/60
まずはそれぞれの記号の意味を確認します。
①ωの意味
求めたいωが角速度[rad/s]です。角速度は1秒間に進む角度[rad]のこと。
②2πの意味
2πの意味ですが、1π[rad]は180度でした。つまり2π[rad]は360度のこと。物が1回転するとその角度は2π[rad]となります。
③Nの意味
Nは1分間の回転数RPM。
④/60の意味
分を秒に直す。
それぞれの記号の意味が分かったところで、公式の仕組みを考えます。
例えば、N=1RPMの場合、1分間に1回転=360度回転します。N=2RPMなら1分間に2回転=720度、3RPMなら3回転=1080度回転します。
度数法の360度を弧度法のradに直すと、2π[rad]となり、N=1RPMの場合、1分間で2π[rad]=360度回転します。つまり、1分間の角速度は2π[rad]となります。
N=1RPMのときは1RPMx2π[rad]=2π[rad]回転する(360度回転する)
N=2RPMのときは2RPMx2π[rad]=4π[rad]回転する(720度回転する)
つまり、1分間あたりの角速度の公式は回転数(RPM)に2π[rad]をかけた
N(RPM)x2π[rad]=2πN となるのです。
ただし、角速度は角度を秒で割った速度のことでした。回転数が分だと整合性が取れません。つまり、1分を60秒に直してあげる必要があり、ここで分を秒に直すために登場するのが「/60」です。
したがって、物が回転するときの1秒当たりの速度角速度ωは、1分あたりの角速度の2πNを60で割って、
ω=2πN/60 と公式が出来上がりました。
日本語で言うと、「2π[rad](360度)に1分あたりの回転数をかけて、分を秒に直すために60で割る」と、角速度ωを求めることができます。
ちなみにω=2πN/60を約分して、ω=πN/30とする場合も有るのですが、中身は同じですので、個人的にはω=2πN/60で覚えたほうが理解し易いかなと思います。
(練習)この式を使うと、1分間に1回転する場合の角速度ωは、
ω=2πx1/60=π/30[rad/s]となります。
1分間に60回転するなら、
ω=2πx60/60=2π[rad/s]です。
角速度から回転数を求める式は【N=30ω/π】
回転数から角速度を求める計算式はω=2πN/60でしたが、これ応用して、角速度から回転数を求めることもできます。
先ずはω=2πN/60を約分し、ω=πN/30とします。
続いて式を変換
ω=π/30xNなので、
N=30ω/πとなります。
ω=2πの場合、N=30x2π/π=60RPMとなり、上記の「練習」で求めた1分間に60回転する場合の角速度ωの式と整合性がとれました。
※加速度についてはこちら
角速度と回転数と周速度の関係
角速度、回転数、周速度はそれぞれがとても良い関係を持っています。これまでの記事で、次の3つの求め方をご紹介しました。
①回転数から周速度を求める:V(m/min)=πDN=2πrN
②回転数から角速度を求める:ω(rad/s)=2πN/60
③角速度から周速度を求める:v(m/s)=rω
※V:周速度、ω:角速度、D:直径、r:半径、N:回転数(PRM)
それぞれ公式があるのですが、互いに深い関係性があります。
③の公式のωの部分に②ω=2πN/60を代入してみると、
v(m/s)=r2πN/60=2πrN/60となり、
これを分速に変換すると2πrN/60x60=2πrN=V(m/min)になり、
①V(m/min)=πDN=2πrNと同じ式になりました。
つまり、「回転数から角速度を求る→角速度から周速を求める」のと、「回転数から周速を求める」のは同じことを指しているといえます。
地球の自転時速を回転数から終息を求めるの公式で計算
最初に地球の自転の速度を求めたのですが、その時はまず②回転数から角速度を求め、③角速度に半径をかけて周速度を求めました。
今回は①の回転数から周速度を求めてみると、
地球の1分間の回転数: N=1/1436.06RPM
地球の半径:6,371km
公式:回転数から周速度を求める:V(m/min)=πDN=2πrN
V=3.14x12742000(直径m)x1/1436.06RPM
V=27860m/min=1671.6km/hとなり、最初に計算した1670.7km/hとほぼ同じになりました(誤差は最初の計算では小数点以下を省いたため)。
※回転数から周速度を求める方法はこちら
終わりに
この記事では、角速度ω(rad/s)と回転数N(RPM)の変換方法と公式についてご紹介し、公式ω=2πN/60が何を表しているのかをご紹介しました。
角速度は「2π[rad](360度)に1分あたりの回転数をかけて、分を秒に直すために60で割る」ことで求めることができるので、是非この公式を使って角速度を求めてみてください。
※高校生向けオンラインプログラミング教室の紹介記事はこちら
※角加速度αについての説明はこちら
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