材料を加工する際には切削条件を設定する必要があります。材料ごとに適した切削条件があり、切削条件が不適の場合には1cutもできずに工具が壊れてしまうという事態も起こり得るほど加工における切削条件は重要な要素です。
この記事では加工の要とも言える切削条件について、その意味と計算方法をご紹介します。
- 切削速度とは-切削加工における周速, 送り速度, 回転数, 一刃あたりの切削量の違いを解説
- 切削速度(周速)とは
- 回転数(RPM)-回転数と周速の違い
- 送り速度(F)は工具の移動スピード
- 一刃あたりの切削量(Fz)を回転数から求める
- 材料ごとの推奨条件(パラメーター)はメーカーに確認
- 仕事で使う英語を学ぶおすすめツールを紹介
- 終わりに
切削速度とは-切削加工における周速, 送り速度, 回転数, 一刃あたりの切削量の違いを解説
切削加工を行うとき、切削条件(パラメーター)を設定する必要があります。切削条件には周速、送り速度、回転数、一刃あたりの切削量(Fz)など、様々な種類のパラメーターがあり、それぞれのパラメーターが重要な役割を果たしています。
中でも材料ごとの条件設定などを考えるときに目安となるのが切削速度です。切削速度と聞くと、上記の周速、送り速度、回転数、一刃あたりの切削量(Fz)のどれもが当てはまりそうな感じがするのですが、一般的に切削速度という単語は上記のパラメーターの中の「周速」のことを指します。
切削速度(周速)、送り速度、回転数、一刃あたりの切削量とは何を指しているのかを一つずつ確認していきたいと思います。
切削速度(周速)とは
切削速度というのは、切削条件の中の「周速」を指します。材料ごとの推奨切削条件などはこの切削速度=周速を目安にすることが多いです。
周速とは、物が回転するときの回転する速度のこと、言い換えると、物が回転したときにどれくらい進むのかを指します。単位はm/minで、V=○○m/minと表されることが多いです。ちなみにVはVelocity(速度)の頭文字のVです。
切削速度(周速)の公式
切削速度を求める公式は下記の通り。
周速=π×直径(mm)×回転数/1000
V=πDN/1000
V:周速(m/分)、D:直径(mm)、N:回転数(RPM-回転数/分)
例えば、直径が200mmで回転数が100RPMであれば、周速は、
V=3.14x200x100/1000=62.8m/minとなります。
※÷1000は直径がmm、周速がmなので、単位を合わせるための計算です。
※周速の求め方詳細はこちら
回転数(RPM)-回転数と周速の違い
回転数は1分間に物が回転する回数の事を指します。単位はRPM(Revolution per Minute)で、N=○○RPMと表します。
例えば1分間に500回転する場合、N=500RPMとなります。
回転数というのは物の速さとは全く関係が無く、単純に1分間に何回物が回転したのかを指します。
一方で周速度というのは回転したときの速さです。上の図のように、同じ回転数でも回転するものの直径が大きいほど周速は速くなり、小さいほど周速は遅くなります。
小さい鉛筆と大きなタイヤでは同じ回転数でも1回転した場合に進む距離や1回転する場合の回転速度(周速)は大きく異なります。
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送り速度(F)は工具の移動スピード
周速は回転したときの速さ。つまり「物が回転したときにどれくらい進むのか」でした。しかし、工具は回転してもころころと転がっていきません。その場で留まって回転し続けます。
工具が動くスピードは「送り速度」という概念で表されます。
単位は(mm/min)で、F=○○mm/minと表します。Feeding Speedの頭文字Fをとっています。
送り速度は機械が工具を持って動かすスピードのことです。
下の図のように感じで、送り速度Fを設定すれば物を回転させずに工具を移動させることもできます。
周速と送り速度の違いを簡単に考えるときに想像したいのは「はさみ」です。
はさみを使うとき、親指とその他の指を使って開いたり閉じたりします。この速度が周速=切削速度です。この動きだけでは紙は切れないので、はさみを切りたい形に動かします。これが送り速度(F)だといえます。
※送り速度についての詳細はこちら
一刃あたりの切削量(Fz)を回転数から求める
一刃あたりの切削量(Fz)も設定する必要があります。
Fzは工具が1回転するときに、1刃が削る削り代のこと。求め方は下記の通りです。
Fz=F/NxZ
Fz:一刃あたりの切削量(mm/刃)、F:送り速度(mm/min)、N:回転数(RPM-回転数/分)、Z:刃数
例えば、工具の刃は1刃で、1分間に1回転しながら、10mmの速さで進む(送り速度10mm/min)ときの一刃あたりの切削量は、
Fz=10÷1÷1÷1=10mm/zとなります。
イメージは下の図のような感じです。左の円が工具で、1刃頭についています。これが1分間に10mm進む間に1回転するので、1刃が削る量は10mmです。
続いて刃物が2刃で1分間に1回転しながら10mm進むと、
Fz=10÷1÷2=5mm/zとなるのが分かると思います。
これが1刃あたりの切削量です。通常回転数は1分間に何千回転し、刃数も何十刃も取り付いているので、一刃あたりの切削量は0.02mm/zとか0.03mm/zなどの数値となります。
※表面粗さを改善したいときの切削条件の調整方法はこちら
材料ごとの推奨条件(パラメーター)はメーカーに確認
加工する材料によって硬かったり柔らかかったり、切りにくかったり切り易かったり、溶着したり焼けたり、工具が欠けたり壊れたり、など色々な特徴があります。
一番いいのは工具を作ったメーカーに材料ごとの推奨条件を確認すること。その際には現状起こっている問題や現状の切削条件などを伝えるとスムーズに教えてもらえます。
また、工具の材質も切削する材料によって変更しなければならないこともあります。
材料ごとの条件や工具については下記の本がとても詳しいので是非購入してみてください。ものすごく、本当におすすめです。
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終わりに
この記事では、切削加工における切削条件の違いと切削速度についてご紹介しました。
・切削速度V:単位-m/min。周速。
V=πDN/1000。
・回転数N:単位-RPM(Revolucion per Minute)。一分間に回転する回数。
・送り速度F:単位-mm/min。Feeding Speed。工具が動くスピード。
・一刃あたりの切削量Fz:単位-mm/z。工具が1回転する間に1刃が削る量。
Sz=F/NZ
切削条件は切削加工をする上で要となるものです。切削条件の違いや材料ごとの切削条件を工夫しながら加工を進められると、より精度の高い加工が実現すると思いますので、是非色々なパラメーターを検討してみてください。
※モーターの回転数の計算方法はこちら
※角速度と回転数の変換方法はこちら