阿刀田高さんといえば、ミステリーやブラックユーモア分野での短編小説が人気の作家です。ですが、実はヨーロッパやヨーロッパ芸術を学ぶなら、阿刀田高さんの本は欠かすことができない、必読書なのです。
この記事では、ヨーロッパを楽しく学ぶためにお勧めの阿刀田高さんの作品を9作品ご紹介します。
- 阿刀田高を知っていますか?ヨーロッパ古典を面白く学ぶには阿刀田高作品がおすすめ
- 『ギリシア神話を知っていますか』-ギリシャ神話をやさしく解説
- 『新トロイア物語』-ホメロスの叙述史イリアスを知る
- 『獅子王アレクサンドロス』-古代マケドニアを知る
- 『旧約聖書を知っていますか』-ユダヤ教の聖書を知る
- 『新約聖書を知っていますか』-キリスト教を楽しく学ぶ
- 『やさしいダンテ「神曲」』-ダンテの「神曲」に触れる
- 『シェイクスピアを楽しむために』-シェイクスピアはこう楽しむ
- 終わりに
阿刀田高を知っていますか?ヨーロッパ古典を面白く学ぶには阿刀田高作品がおすすめ
ヨーロッパ古典、特にギリシャ神話や聖書を学ぶことは、ヨーロッパの歴史や芸術を深く知る時には欠かかすことができません。一方で、難しい専門書などは読んでいても良く分からなかったり、単調で眠くなったりと、中々一筋縄には行かないというのが本音。
ですが、実はヨーロッパを楽しく学べる方法がこの世には存在するのです。それが、阿刀田高さんの作品を読むこと。
阿刀田高さんはミステリーやブラックユーモアの分野で高名な作家さんですが、実は世界各国の古典を軽妙に読み解いた随筆でも知られる作家さんで、阿刀田高さんの作品を読めば、楽しくヨーロッパ古典を学ぶことができます。
この記事では阿刀田高さんの数ある古典随筆の中からヨーロッパの古典に関するものを厳選してご紹介します。
ご紹介するのは、ギリシャ神話、イリアス、マケドニア、旧約聖書、新約聖書、神曲、シェイクスピアの7テーマ。
そして、7テーマに沿った作品、『獅子王アレクサンドロス』、『ギリシア神話を知っていますか』、『私のギリシア神話』、『ホメロスを楽しむために』、『新トロイア物語』、『旧約聖書をしっていますか』、『新約聖書を知っていますか』、『やさしいダンテ「神曲」』、『シェイクスピアを楽しむために』、の9作品をお届けします。
『ギリシア神話を知っていますか』-ギリシャ神話をやさしく解説
まずご紹介するのは『ギリシア神話を知っていますか』という作品。
ヨーロッパの古典と言えばギリシャ神話。絵画や骨董品にも良く描かれる作品で、映画などの主題にもなる、ヨーロッパの価値観の礎ともいえる神話です。
ギリシャ神話では特にオリュンポス12神といわれる、ゼウスをはじめとした男女6柱ずつの神々が有名。
この本ではどの神様がどのようなことを行ったのかを現在風のタッチで楽しく解説してくれています。
ギリシャ神話というのは、ヨーロッパを知るためには欠かすことのできない古典の一つです。例えば、ヨーロッパ旅行で訪れる美術館などにはギリシャ神話をモチーフにした作品が沢山あります。
そんな作品を鑑賞する時に、「あ、このシーンはアポロンがダフネを追いかけているシーンだ」など、その物語が分かると、面白さが二倍、三倍に膨らんでいきます。
西洋美術や芸術、文化、建築などに興味がある方は是非、『ギリシア神話を知っていますか』を読んでみてください。
阿刀田高さんは同じくギリシャ神話をテーマに『私のギリシャ神話』という本も書かれています。『ギリシア神話を知っていますか』との違いとして、紹介されているお話の違いもありますが、こちらは挿絵などでヴィジュアル的にもギリシャ神話を楽しむことができる作品です。
※ギリシャ神話とヨーロッパ美術の例はこちら
『新トロイア物語』-ホメロスの叙述史イリアスを知る
トロイア戦争の10年目、その最後の50日間を記した叙述史がホメロス作の『イリアス』。トロイア戦争は長らく空想の話だといわれていたのですが、1871-1873年に行われた本格的な発掘によって、トロイアの遺跡がシュリーマンにより発見され、史実だったのではと、言われるようになった伝説的な戦争です。
このトロイア戦争について、小説の形式で描かれた作品が『新トロイア物語』。この小説の特徴は、神話的なお話も解説しながらも、より現実的に通説を分析しており、現実味のある小説に仕上げているところ。そして、トロイア戦争後にアイネイアスがローマにたどり着き、ローマを建国するところまでを描いている、正に阿刀田高さんによる『新トロイア物語』です。
同じくホメロスを題材とした作品が『ホメロスを楽しむために』。こちらは『イリアス』だけでなく、『オデュッセイア』についても描かれています。
阿刀田高さんのギリシャ旅行をもとにホメロスを紐解いていく形式の作品です。どの神様が誰に味方したか、なども描かれており、より軽い気持ちでホメロスを楽しむことができます。
※トロイア戦争のきっかけとなったパリスの審判はこちら
『獅子王アレクサンドロス』-古代マケドニアを知る
マケドニアを大帝国に作り上げたアレクサンドロス大王の快進撃を小説化した作品。アレクサンドロス大王は紀元前356年に生まれたとされており、ギリシャ神話のゼウスの血を引いていたとか。
『獅子王アレクサンドロス』では、アレクサンドロス大王の幼少期から没するところまでをスピード感溢れるタッチで描いています。
かなり長い長編小説ですが、先が気になって読むのが止まらなくなるほど面白い作品です。特に阿刀田高さんの時代背景などの説明も分かりやすく、没頭できること間違い無しです。
『旧約聖書を知っていますか』-ユダヤ教の聖書を知る
アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフ、モーセ、ヨシュア、ダビデ、ソロモンと続く古代イスラエル王国の歴史を分かりやすく解説している本。
旧約聖書に馴染みの薄い読者でも分かりやすい形で解説してくれる本で、聖書に触れるならまずはこの本を読むのが一番。
天地創造などの神話的要素に関しても説明されており、この一冊を読めば旧約聖書、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教について、「なるほど、そういう宗教か」と理解できるようになれる作品です。
旧約聖書を主題とした作品が西洋芸術の世界には多くあるため、西洋芸術をより深く理解するためにもお勧めの一冊。
※旧約聖書と美術館の話はこちら
『新約聖書を知っていますか』-キリスト教を楽しく学ぶ
特にキリスト教徒が重視している新約聖書をキリスト教徒でない読書にも分かりやすく解説している本です。福音書、使徒言行録 、使徒達の手紙、ヨハネの黙示録の説明という構成となっており、キリストが起こした奇跡などについて、筆者の見解を交えながら記されています。
※芸術と聖書はこちら
『やさしいダンテ「神曲」』-ダンテの「神曲」に触れる
ダンテ作の「神曲」、一度は聞いたことがある名前だと思いますが、「神曲」とはいったいなんでしょうか。恥ずかしながら私はこの本世読むまで、「神曲」はものすごく素晴らしい音楽のことだと思っていました。この本を読んで知ったことは、「神曲」とは、実はダンテが書いただっ喜劇たということです。
あらすじは、ダンテが古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、地獄、煉獄、天国を案内してもらう中で、歴史上の人物たちとを巡って出会い、語らうというお話。
芸術にも用いられることがある題材で、ロダン作の『地獄の門』は地獄篇第3歌に登場する地獄への入口の門がモチーフになっています。
※ロダンについてはこちら
『シェイクスピアを楽しむために』-シェイクスピアはこう楽しむ
最後にご紹介するのは『シェイクスピアを楽しむために』です。こちらは文字通り、シェイクスピアを解説している本。シェイクスピアといえば『ロミオとジュリエット』などの数多くの舞台作品を生み出した劇作家。
阿刀田高さん作の本作品では「人殺し色々」から始められる物語に引き込まれること間違い無しです。この『シェイクスピアを楽しむために』では、シェイクスピアの戯曲を現代の感覚で楽しくことができます。シェイクスピアには興味があるけど、難しそうだから挑戦できなかった、という方にとてもお勧めな作品です。
ちなみに私はシェイクスピアはとても好きで、特に『マクベス』、『ハムレット』、『リア王』、『オセロ』の4大悲劇が好きなのですが、阿刀田高さんの『シェイクスピアを楽しむために』はシェイクスピアを読んだ事があるという場合でも、楽しめる内容となっているので、是非一度手にとってみてください。
尚、シェイクスピアを題材にした美術作品ではミレイ作の『オフィーリア』が有名ですが、私は日本でしか本物を見たことが無く、写真が無いので記事で紹介できないのです。ロンドンのテート・ブリテン美術館に所蔵されていますので、ロンドンへご旅行の際は是非一度足を運んでみてください。
終わりに
今回はヨーロッパの古典を学んでみたいと思ったときにお勧めな、阿刀田高さんの作品を7テーマ9作品ご紹介しました。
どの作品もとても分かりやすく、面白く、ユーモアを交えて解説してくれていますので、本当にお勧めな作品です。
是非、阿刀田高さんの本で西洋古典の世界に足を踏み入れてみてください。
※美術関係の小説なら原田マハさんがおすすめ