すみくにぼちぼち日記

メキシコ生活や欧米旅行記、語学、大学、美術館について

原田マハの魅力を紹介!初心者でも楽しめるおすすめ小説10選-美術・仕事・暮らしを通して人々が織り成す物語に驚き感動し涙する

2021年公開予定の映画『キネマの神様』の原作者として知られる原田マハ。美術小説やお仕事小説で有名な作家さんです。

2020年4月にはコロナ禍のフランスを舞台にSNSを通して18日間にわたり小説『喝采』が発信され話題になりました。『喝采』では変わり行くパリの町並み、コロナ禍でロックダウンされる町の緊迫感が表現され、そしてコロナ禍でも秩序を重んじる日本人の強さを感じることができました。

今回は小説家原田マハさんの小説の中から、「初心者でも楽しめる」をテーマにおすすめ作品10選をご紹介します。

※本記事では文脈によって敬称を略しています。

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原田マハは行動派のかっこいい作家

原田マハさん、小説を拝読するととても知的でミステリアスな雰囲気の方なのだなと思っていました。きっとこのイメージは私の中で生涯持ち続ける原田マハ像です。

一方で、実は原田マハさんはものすごく行動派でかっこいい作家なのです。詳しくは下記の公式ウェブサイトをご参照いただきたいのですが、こちらでは原田マハさんの激動の人生を少しだけご紹介します。

PROFILE | 原田マハ公式ウェブサイト

生まれてから大学まで

原田マハさんは1962年東京生まれで、3歳から絵を描いていたそう。小さな頃からピカソをライバル視していたそうです。10歳のときに岡山に移り住み、その後関西学院大学のドイツ文学科に入学するも、ドイツ語に苦労され日本文学科へ転科。

大学在学中にピカソの絵と再開し、ピカソが天才だと気づきます。一方でアンリ・ルソーのヘタっぷり(絵のおもしろさ)と人間性に魅せられ「いつかルソーの物語を描いてみたい」との思いを募らせたそうです(その後『楽園のカンヴァス』を執筆されました)。

大学卒業後は度胸で人生を切り拓く

卒業後、就職先が見つからずバイトをしながら専門学校を卒業。東京のお兄様から呼ばれ東京の広告プロダクションに勤務。その後退職し、オープン準備中の「マリムラ美術館」へ飛び込み就活、入社します。

結婚退職後、アートマネジメント学校でディレクターをしていたとき、学校の視察に来た伊藤忠商事新規事業室の方を頼りに、ほぼ飛び込みで「企業とアートの新しい関係」についてプレゼン。中途入社が決まります。本当にパワフルで積極的でかっこいいです。

伊藤忠商事では「アート、文化に関するコンサルティング」が主なお仕事でした。その時顧客だった森ビルの森美術館の構想策定にチーフコンサルタントして乗り出します。

早稲田大学第二文学部とキュレーター

コンサルタントとして仕事をする傍ら、「キュレーターになりたい」という目標を掲げ早稲田大学の第二文学部(夜間・土曜日授業)を受験。40倍の倍率を潜り抜け大学に入学、学芸員の資格を取得します。

伊藤忠商事を退職し、森ビル株式会社に入社、森美術館の設立準備室に所属。世界中の美術館を視察。六本木ヒルズブランディング、美術館設立に尽力。

通訳学校にも通い、英語を猛勉強。ビジネス通訳初級を取得。

MoMAに派遣され6ヶ月間のニューヨーク駐在。美術館の仕組みを学び、企画展、国際展についてリサーチ。

独立とライター

40歳になる年、「人生で本当にやりたいことは何か?」と考え独立。都市再生プロジェクト「Rプロジェクト」に参加し、キラ星のごときクリエーターたちと出会います。

『R the Transformer』を建築家馬場正尊氏と共著・出版。

雑誌「インビテーション」の編集長だった菅付氏からニューヨーク特集の取材のオファーが入り、30ページ近くの特集記事を執筆。カルチャーライターとしての一歩を踏みだしたのです。

2004年、「CET04 VISION QUEST」という展覧会を仕掛け、動員は2万人に。

角川書店の編集社から「働く女性のインタビュー集」の共同執筆の誘いがあり、沖縄の女性社長をインタビューで沖縄へ。那覇での取材後、伊是名島に渡り、浜辺で遊ぶ男性とラブラドール犬との運命の出会いを果たします。

「何て名前のワンちゃんですか」と聞いたところ、「カフーっていうんです」と。「どう言う意味ですか?」「沖縄の言葉で、『幸せ』という意味です」

この瞬間から原田マハさんは「作家原田マハ」の人生を歩き出すのです。

 

※こちらの内容は原田マハさんの公式ウェブサイトを参考に執筆しました。

PROFILE | 原田マハ公式ウェブサイト

 

『本日は、お日柄もよく』-スピーチで震う人の心

さて、兎に角かっこいい原田マハさんですが、私が一番お勧めしたい作品は『本日は、お日柄もよく』です。スピーチライターの紡ぐ言葉に魅了された女性が自身もスピーチライターとしての人生を歩みだし、言葉が持つ力、魅力、そして言葉の可能性を追い求めていく物語です。

この本は本当にかっこよくて、言葉が人の人生を変える力をもっているんだなと言うことを心の奥深くに直接語りかけてくる小説。私自身、『本日は、お日柄もよく』のスピーチに力を貰い、そして、自分が何かを話すとき、この小説のように、誰かの心に響く言葉を伝えられるように成長したいなと思いました。

ありがちなスピーチの入り「えー、本日は、お日柄もよく…」。この言葉を聞いた瞬間に一気に眠気が訪れてしまうパブロフの犬。ですが、この物語で生み出されるスピーチの数々は人の心を動かす力を持っていて、本を読み終わった時、「本日は、お日柄もよく」という言葉が力強い、かっこいい、印象的な新しい言葉として私たちの心に刻まれるのです。

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

  • 作者:原田マハ
  • 発売日: 2013/06/07
  • メディア: 文庫
 

『旅屋おかえり』-代行の旅と出会いの物語

タレント「おかえり」こと丘えりか。彼女がテレビでスポンサーの名前を「間違えた」ことから「旅代行」のお仕事を始めます。

初めての旅代行の依頼主は難病を抱える女性のお母様。娘と夫と見たかった桜を見に行って欲しいと依頼され、おかえりの旅屋業が始まります。様々な依頼がある中、ある日、彼女が名前を「間違えて」しまったスポンサーの会長から呼び出しが。その依頼内容は彼女にとっても、彼女の周りにとってもとても難しいものでした。おかえりは、周りの気持ちに反した行動をとるのですが…

旅先で様々なハプニングや出会いがあり、「旅は行ってみなければ分からない」という旅の醍醐味を味わうことができる作品です。旅先の情景、人々との出会いが丁寧に描かれていて、読んでいると自分で旅をしているような不思議な感覚を味わうことができました。まるで本当に自分の旅をおかえりちゃんに代行してもらっているような…

おかえりが代行する旅にはそれぞれ依頼者の思いがあります。そして、旅先で出会う人々の思いがある。おかえりの旅は、その依頼者、そして旅先で出会う人々の心を動かす、そんな旅なのです。人と人とのつながり、そして人々の温かさ、優しさ、気持ちに触れたとき、涙がとめどなく溢れて止まりませんでした。

旅屋おかえり (集英社文庫)

旅屋おかえり (集英社文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2014/09/19
  • メディア: 文庫
 

カフーを待ちわびて』-与那喜島の愛の物語

ある日突然「幸(さち)」という女性から便箋が届きます。そこには友寄明青(ともよせあきお)が北陸を旅行した際に神社で「嫁に来ないか。幸せにします」と書いて奉納した絵馬を見て、幸が明青との結婚を決めたことが書いてありました。3日後、明青はカジマルの木の下で白い帽子にワンピース姿の女性幸と出会い、明青と幸の与那喜島での共同生活が始まります。

ある日、明青の幼馴染でリゾート開発会社に勤務している照屋俊一が明青を訪ねてきます。人口800人の与那喜島に観光施設を誘致する計画があり、その話をするためでした。この俊一の訪問を機に明青と幸の運命は大きく変わっていくのです。

原田マハさんのデビュー作といえるのが『カフーを待ちわびて』。原田マハさんの人生紹介で紹介されている沖縄は伊是名島で出会ったラブラドール犬「カフー」との出会いが生んだ作品です。美しい沖縄の海と空が目の前に浮かんでくるようで、そして幸と明青の爽やかな日常に清清しい気持ちになりました。

カフーを待ちわびて (宝島社文庫)

カフーを待ちわびて (宝島社文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2008/05/12
  • メディア: 文庫
 

『まぐだら屋のマリア』-待ってる人がいる

東京の料亭の見習い紫紋(しもん)は、働いていた料亭「吟遊」で起こった食品偽装事件で全てを失い、最期の場所を求めて彷徨い、一人「尽果(つきはて)」というバス停にたどり着きます。そこで出会ったのがマリアという女性。紫紋は謎の多いマリアとマリアが切り盛りする食堂「まぐだら屋」でマリアを手助けをすることになったのです。

死を求めてたどり着いた地で生を求める心。何もかもを捨て、帰る場所が無いと思っていた紫紋の凍った心は、マリア、女将、克夫、丸狐(まるこ)、与羽(よはね)との出会いによって溶かされていくのです。

『まぐだら屋のマリア』には様々な季節の料理が出てきて、料理を食べることで感じる幸せ、そして料理が与えてくれる生きる喜びを感じることができます。料理を通して紡がれる物語には、様々な過去を持った人が登場するのですが、尽果に流れ着いた人々にも家族がいて、待っている人がいて…人々の愛、家族の大きな愛に触れたとき、自然と涙してしまっている、そんな作品です。

まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)

まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫
 

『永遠をさがしに』-音楽と家族愛と感動の物語

 和音(わおん)は有名な指揮者の父とチェリストの母を持つ高校生。母からチェロを習っていましたが、母が突然家から出て行ってしまいます。父も家に帰らない日々を送っており、家政婦に全てを任せる生活へ。

高校生になったある日、父がアメリカの楽団に移籍することが決まるのですが、和音は日本に残ることを決めます。そしてそこにやってきたのが父の後妻である真弓でした。

真弓はとても面白い女性で、和音とは対等の付き合いをするような義母なのですが、実は真弓も元チェリスト。和音の母時依のことを知っており、和音は彼女から母のことを聞き再びチェロを演奏することを決めます。そして明かされる真弓と和音の母時依の秘密。その秘密を知ったときの衝撃と、和音の心の変化、家族愛、和音の友人文斗と朱里の友情に涙なくして読むことができない作品でした。

永遠をさがしに (河出文庫)

永遠をさがしに (河出文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2016/02/05
  • メディア: 文庫
 

『キネマの神様』-運命をも変える映画の力

主人公円山歩は40歳を目前に再開発企業を辞職。辞表を出したその日に父が入院したという知らせを受け取ります。79歳になる父は円山郷直(ゴウ)は、大のギャンブル好き。方々から借金をしており、その額なんと300万。歩の力ではどうしようもない金額に金銭面では父を助けることができないと、心を鬼にして母とともに父の気持ちをもう1つの趣味映画に向けさせようと尽力します。

ある日、歩が書いた文章を父ゴウが勝手に雑誌社のブログに投稿。それがきっかけで歩は映画雑誌「映友」で映画評論を書くことになります。ただし、その「映友」の売れ行きは落ちる一方。会社自体が傾き始めてしまいます。

そんな状況を打破しようと、若い読者を取り込む目的でブログ「キネマの神様」が立ち上がります。そのブログを立ち上げたのは編集者の新村と引きこもり歴15年になる編集長の一人息子の興太でした。興太は歩の父ゴウの文章に興味を持ち、ゴウは「キネマの神様」に映画の感想を書くことに。その文章が話題となり次第にブログ数が伸び始め…

『キネマの神様』は本当にどうしようもない父と娘、そして母が織り成す家族の物語。映画を通して紡がれる家族愛に心が温かくなる小説です。 

キネマの神様 (文春文庫)

キネマの神様 (文春文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2011/05/10
  • メディア: 文庫
 

『でーれーガールズ』-心が締め付けられる青春の思い出

佐々岡鮎子は「小日向アユコ」というペンネームで活動している人気漫画家。ある日、彼女の元に一通の手紙が届きます。差出人は母校岡山白鷺女子高等学校で国語教師を務めている荻原一子という女性。

創立記念事業の一環として佐々岡鮎子に記念講演をしてほしいという内容の手紙でした。迷っていた鮎子ですが、鮎子のデビュー作『でーれーガールズ』が人生の最良作品という一子の手紙にぐっときた鮎子はこの依頼を引き受けることにしたのです。

創立記念事業の前に開催された同窓会で高校の時に転校してしまった秋本武美と再会。昔の話に花を咲かせます。二人は高校時代「ヒデホくん」という同じ男性を好きになったという経緯があるのですが、実はこのヒデホくん、実際の人物ではなく鮎子が考えた漫画の主人公だったのです。

空想の人物を巡る二人の友情と恋心に、心が締め付けられるようなそんなほろ苦い青春小説です。

でーれーガールズ (祥伝社文庫)

でーれーガールズ (祥伝社文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2014/10/10
  • メディア: 文庫
 

『楽園のカンヴァス』-絵を巡る壮大な美術ミステリー 

『楽園のカンヴァス』は、アンリ・ルソーの代表作『夢』と酷似する作品『夢を見た』の真贋を巡り、若い研究者2人が鑑定を試みるという美術ミステリー。

主人公早川織絵は伝説の美術コレクターであるバイラーの計らいで、MoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーター、ティム・ブラウンと『夢を見た』の鑑定で対決することに。しかし、その鑑定にはひとつの条件がありました。それは、7日間、7章からなる物語を、一日一章ずつ読み、その上で『夢を見た』の真贋を判断して欲しいというものだったのです。

原田マハといえば美術小説。私もこの『楽園のカンヴァス』で初めて原田マハさんの作品に触れました。『楽園のカンヴァス』では、2人の若きキュレーターが1枚の絵を巡って繰り広げる観察と考察、そして推理を、まるでその場に同席しているかのようにリアルに堪能できます。

小説の中に登場する物語を私たちも一緒に読み、その物語と絵画に対する2人の推理を聞く。2人の意見が知りたくて、物語の先が知りたくて、ページをめくる手が止まらなくなる、そんなドキドキのミステリーを味わうことができる作品です。

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2014/06/27
  • メディア: 文庫
 

『暗幕のゲルニカ』-ゲルニカを追うそしてゲルニカが作られる

『暗幕のゲルニカ』はゲルニカに魅せられたMoMAのキュレーター八神瑤子がMoMAゲルニカをもう一度展示するためにスペインへ渡ったのをきっかけにゲルニカを巡る陰謀に巻き込まれていく物語。この小説は瑤子が奔走する現代と、ゲルニカが書かれた当時を行ったりきたりしながら進んでいくサスペンスです。

同時多発テロがきっかけとなって始まったイラクへの武力行使。その発表時にアメリ国務長官の背景にあるはずだったゲルニカタペストリーに暗幕がかけられました。スペイン内戦を経験したピカソが戦争の悲惨さを訴えたゲルニカにかけられた暗幕…

過去と現在が複雑に絡み合う『暗幕のゲルニカ』では、ピカソの恋人ドラ・マールが見たピカソの苦悩とゲルニカの誕生、そして瑤子が信じるゲルニカの力が丁寧に描かれます。長い年月を経て二人の女性の強い意思と行動が一つの線で結ばれるのです。

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

 

 ※現在ゲルニカが展示されているソフィア王妃芸術センターはこちら

sumikuni.hatenablog.com

『たゆたえども沈まず』-ゴッホと浮世絵 

日本人画商林忠正はフランスで二人の兄弟と出会います。それがフィンセント・ファン・ゴッホと弟のテオ。フランスで起こった一大ムーブメント「ジャポニズム」。そのジャポニズムの立役者ともいえる忠正が信じたゴッホの才能。

一方でゴッホの絵はゴッホ生きている間に評価されることは無く、その事実がゴッホ自信を傷つけ、そしてゴッホの成功を信じ献身的に支える弟のテオまでもを飲み込んでしまう。壮絶なゴッホの人生を描く苦しく辛い物語。それでも「たゆたえども沈まず」という言葉に表される強さまでもを描くこの小説に、美しさを感じました。

たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2017/10/25
  • メディア: 単行本
 

終わりに

今回は作家原田マハさんの小説を10選ご紹介しました。今回紹介した10選の他にも、紹介しきれなかった沢山の素敵な小説がありますので、是非一度原田マハさんの作品に触れ、美術や仕事、暮らしの中の驚きや感動を味わってみてください。

 

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