西洋世界で強い存在感を持つ宗教ユダヤ教、キリスト教、イスラム教。切っても切れない関係にあるこれら3つの宗教は長い歴史の中で、時に交わり、時に争いながら互いの存在を意識しあってきました。
この3つの宗教は私たちから見ると全く異なる宗教の様に見えるのですが、実はキリスト教もイスラム教も、もともとは旧約聖書に基づく教えであるユダヤ教から派生した宗教です。
この記事ではそんな西洋の兄弟宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教、そしてそれぞれの経典である旧約聖書、新約聖書、コーランを知りたいと思ったときにおすすめの書籍を5つご紹介します。
旧約聖書・新約聖書・コーランのあらすじを知るためにおすすめな本5選
旧約聖書、新約聖書、コーランを知ることは西洋世界の歴史や政治、価値観、戦争などを考える時のとても重要な第一歩です。また、西洋美術を鑑賞するときも新旧聖書についての知識があると絵画の見方も大きく変わり、これまでに無い視点で絵画を楽しむことができるようになります。
旧約聖書、新約聖書、コーランを知りたいと思ったときにおすすめの本は、中野京子さんと阿刀田高さんの作品。
中野京子さんは絵画を用いて分かりやすく解説するスタイルで視覚的に聖書を理解することができ、阿刀田高さんの作品は聖書やコーランを独自の見解も踏まえながら軽快な文体で易しく解説してくれているのが特徴。
ここからはそんな中野京子さんと阿刀田高さんの作品をご紹介します。
※絵画と聖書についてはこちら
『名画の謎 旧約新約聖書篇』中野京子
聖書を全く知らない状態でも楽しむことができるおすすめの本が中野京子さんの『名画の謎 旧約・新約聖書篇』という作品。
中野京子さんの本の特徴は絵画と物語をセットで解説してくれるところ。聖書で描かれる世界を視覚的に理解でき、且つ、中野京子さんの語り方がとてもユーモアに溢れていて面白いです。
こちらの本は旧約聖書の天地創造からイエス以降の新約聖書までのお話を流れと共に解説してくれています。泥からアダムが作られアダムの肋骨からイヴが作られたことなど、なんとなく耳にしたことがある聖書の物語を詳しく分かりやすく解説しています。
聖書を解説する本でもあり、絵画を解説する本でもあるのも特徴。宗教画を鑑賞する際に持ち物を見て登場人物を特定することができることや、宗教画の役割が「字が読めない人々への布教のため」だったことなど、その絵画が描かれた時代的な背景や画家についても分かりやすく解説している本です。
『名画と読むイエス・キリストの物語』中野京子
先にご紹介した『名画の謎 旧約・新約聖書篇』に続けて読んでいただきたい作品が『名画と読むイエス・キリストの物語』です。『名画の謎 旧約・新約聖書篇』が新旧聖書全般的に解説する本ならばこちらはイエス・キリストにスポットを当てた本となっています。
この本も「絵画を見ながら物語を紹介する」という方法で中野京子さんがイエスの生涯について分かりやく紹介しています。マリアがイエスを懐妊する受胎告知から始まり、イエスが仲間を集めていくシーン、ユダがイエスを裏切った後の「最後の晩餐」、イエスの磔刑前にペテロが「イエスなんて知らない」と言ってしまう場面、イエスの磔刑、そして蘇り…
『名画と読むイエス・キリストの物語』は聖書を基に描かれたイエスの物語を堪能することができる本です。
※ベラスケスとスペイン絵画はこちら
『旧約聖書を知っていますか』阿刀田高
中野京子さんの作品で視覚的に聖書を理解したら、つづいて阿刀田高さんの本でより深いところまで確認するのがおすすめ。
『旧約聖書を知っていますか』は旧約聖書を解説する本で、アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフ、モーセ、ヨシュア、ダビデ、ソロモンと続く古代イスラエル王国の歴史を分かりやすく解説している本です。
旧約聖書に馴染みの薄い読者でも分かりやすい形で解説されていて、聖書に触れるならこの本を読むのが一番。
天地創造などの神話的要素に関しても説明されており、この一冊を読めば旧約聖書、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教について、「なるほど、そういう宗教か」と理解できるようになれる作品です。
旧約聖書を主題とした作品が西洋芸術の世界には多くあるため、西洋芸術をより深く理解するためにもお勧めの一冊。
『新約聖書を知っていますか』阿刀田高
新約聖書の解説は、『新約聖書を知っていますか』が詳しいです。
こちらの本は、特にキリスト教徒が重視している新約聖書をキリスト教徒でない読書にも分かりやすく解説しています。
福音書、使徒言行録 、使徒達の手紙、ヨハネの黙示録の説明という構成となっており、キリストが起こした奇跡などについて、筆者の見解を交えながら記されています。
新約聖書も旧約聖書と同様に、ヨーロッパ芸術をより深く楽しむためにとても役立つ知識ですので、是非、『新約聖書を知っていますか』で聖書の世界に足を踏み入れてみてください。
『コーランを知っていますか』阿刀田高
最後は『コーランを知っていますか』をご紹介。イスラム教は偶像崇拝を禁止しているため、絵画などでイスラム教関係の作品を見ることはありませんが、西洋の歴史を知る上では必ず知っておきたいのがイスラム教の知識です。
日本人からすると、ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も全く別の宗教の様に思ってしまいますが、実は同じ神(唯一神)を信仰す宗教で、イスラム教の立場では、それぞれの信仰対象であるモーセ、イエス、マホメット(ムハンマド)は時代は違えど預言者(神の声を聞き民に説くもの)として並び称される存在。
この本を読むと、コーランの成り立ちと他宗教との関係、スンニ派とシーア派、そして砂漠で生きる人々の生活の指針となるイスラム教の教えについて、学ぶことができます。
普段中々触れることが無いイスラムの世界を知る入門書としておすすめな本『コーランを知っていますか』。この本を読めば、現代まで続くユダヤ、イスラム、キリストの対立の根元の部分について分かってくるはずです。
終わりに
今回は旧約聖書・新約聖書・コーランのあらすじを知るためにおすすめの本を5作品ご紹介しました。
西洋世界を知るためには欠かすことができないユダヤ教、キリスト教、イスラム教についての知識ですが、分厚い本を読むのはとても大変。そんな時に、今回ご紹介した中野京子さんと阿刀田高さんの本を読むことで、楽しく各宗教について学ぶことができますので、是非一度読んでみてください。
※阿刀田高さんのおすすめ作品はこちら