すみくにぼちぼち日記

メキシコ生活や欧米旅行記、語学、大学、美術館について

ギリシャ神話のあらすじを知るためにおすすめな本5選-ギリシャ神話が面白くなる分かりやすい解説ならこれ!

ギリシャ神話は今日まで語り継がれる壮大な神々の物語。映画や漫画、ゲーム、美術などのモチーフとなり、「ゼウス」、「ガイア」、「アポロン」、「ギガンテス」などの名前を誰もが一度は耳にしたことがある一方、内容まではよく分からないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、そんなギリシャ神話のあらすじを知りたくなった時におすすめな本を5冊ご紹介します。

f:id:k-heki:20201010022123p:plain

 

ギリシャ神話のあらすじを知るためにおすすめな本5選-ギリシャ神話が面白くなる分かりやすい解説ならこれ!

f:id:k-heki:20200805102054j:plain

ギリシャ神話を知りたいと思ったときにお勧めなのは、分かりやすく説明してくれている本を読むこと。また、個々のエピソードを視覚的に学び、その後、大まかな流れをざっくりと解説している本を読むという順番で学ぶのがお勧めです。

個々のエピソードを視覚的に面白く学べる本でお勧めなのが、中野京子さんの『名画の謎 ギリシャ神話篇』。そして、ギリシャ神話の流れを大まかに学ぶのにお勧めなのが、阿刀田高さんの『ギリシア神話を知っていますか』と『ホメロスを楽しむために』です。

この3冊を読めばギリシャ神話の大まかな内容を知ることができます。どの本も初心者にも分かりやすく書いてあるので、初めてギリシャ神話に触れる際にはとてもおすすめな本です。

そしてさらに深堀りしたくなった場合に読みたいのが阿刀田高さんの『私のギリシャ神話』と『新トロイア物語』。この2冊を読むことでギリシャ神話の世界にたっぷりと浸ることができます。

 

ギリシャ神話のあらすじと流れはこちら 

sumikuni.hatenablog.com

 

『名画の謎 ギリシャ神話篇』-中野京子

f:id:k-heki:20201010022303p:plain

ギリシャ神話はどういう物語かを分かりやすく解説しているのが中野京子さんの『名画の謎 ギリシャ神話篇』です。

この本はギリシャ神話を主題とした絵画を見ながら、その絵画で描かれているエピソードを紹介している本。フルカラーで見やすく、中野京子さんのユーモア溢れる解説がとても面白い本です。

有名なエピソードが盛り沢山で、この本を読めばギリシャ神話のあれこれが良く分かります。

ゼウスやヴィーナス、アポロンといった有名な神様のお話から、ダナエ、ピグマリオンなどの知る人ぞ知るエピソードまで。

ギリシャ神話への第一歩を名画と共に踏み出すことができる本です。

 

名画の謎 ギリシャ神話篇 (文春文庫)

名画の謎 ギリシャ神話篇 (文春文庫)

 

 

ギリシア神話を知っていますか』-阿刀田高

f:id:k-heki:20201013042616p:plain

中野京子さんの作品で視覚的に物語を体感した後は、阿刀田高さんの作品を重点的に読むのがおすすめ。ギリシャ神話の物語の全体像をつかむことができます。

阿刀田高作品でまずご紹介するのは『ギリシア神話を知っていますか』という作品。

ギリシャ神話では特にオリュンポス12神といわれる、ゼウスをはじめとした男女6柱ずつの神々が有名ですが、この本ではどの神様がどのようなことを行ったのかを現代風のタッチで楽しく解説してくれています。

 

 

ギリシャ神話の神様一覧はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

ホメロスを楽しむために』-阿刀田高

f:id:k-heki:20201013043446p:plain

ギリシャ神話は主に①世界創生、②神々の戦争、③神々と人間の戦争、という順番で物語が進みます。

この3つの流れの最後の部分③神々と人間の戦争 について詳しく説明しているのが、ホメロスを題材とした『ホメロスを楽しむために』です。

こちらは『イリアス』、『オデュッセイア』という歴史家ホメロスの作品を分かりやすく説明してくれている本。

神々と人間の戦争であるトロイア戦争。「パリスの審判」を発端として巻き起こったギリシャvsトロイアの戦争物語です。

このトロイア戦争を、阿刀田高さんのギリシャ旅行をもとに紐解いていく形式の作品が『ホメロスを楽しむために』。

どの神様が誰に味方したか、なども描かれており、ホメロスを軽やかに楽しむことができます。

 

ホメロスを楽しむために(新潮文庫)

ホメロスを楽しむために(新潮文庫)

 

 

『私のギリシャ神話』-阿刀田高

f:id:k-heki:20201010022840p:plain

中野京子さんの作品と阿刀田高さんの作品の計3作品でギリシャ神話に慣れてきて、「もう少し深く知りたいな」と思ったときには、これからご紹介する2冊を読むのがお勧め。

1冊目は、阿刀田高さんの同じくギリシャ神話をテーマにした『私のギリシャ神話』という本。

ギリシア神話を知っていますか』との違いとして、紹介されているお話が違い、また、こちらの作品は挿絵などでヴィジュアル的にもギリシャ神話を楽しむことができます。

これまで紹介した3冊でなんとなく分かったギリシャ神話の世界をもう一度復習するのに最適な本だといえます。

 

私のギリシャ神話 (集英社文庫)

私のギリシャ神話 (集英社文庫)

 

 

『新トロイア物語』-阿刀田高

f:id:k-heki:20201013045639p:plain

ご紹介した4冊を読んで「ギリシャ神話って楽しい」と思い始めたら、最後は阿刀田高さんの『新トロイア物語』を是非読んでみて下さい。

トロイア戦争の10年目、その最後の50日間を記した叙述史がホメロス作の『イリアス』。

トロイア戦争は長らく空想の話だといわれていたのですが、1871-1873年に行われた本格的な発掘によって、トロイアの遺跡がシュリーマンにより発見され、史実だったのではと、言われるようになった伝説的な戦争です。

このトロイア戦争について、小説の形式で描かれた作品が『新トロイア物語』。

この小説の特徴は、神話的なお話を解説しながらも、より現実的に通説を分析しており、現実味のある小説に仕上げているところ。そして、トロイア戦争後にアイネイアスがローマにたどり着き、ローマを建国するところまでを描いている、正に阿刀田高さんによる『新トロイア物語』です。

 

新トロイア物語 (講談社文庫)

新トロイア物語 (講談社文庫)

 

 

阿刀田高さんの本でさらに古典を学びたい時はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

終わりに

f:id:k-heki:20200906115903p:plainこの記事では、ギリシャ神話のあらすじを知るためにおすすめな本を5冊ご紹介しました。

ざっくりとギリシャ神話がどのような物語なのかを知るのであれば、中野京子さんの『名画の謎 ギリシャ神話篇』と阿刀田高さんの『ギリシア神話を知っていますか』、『ホメロスを楽しむために』の3冊、もしくは、この中の1冊を読むのがおすすめ。

さらに詳しくギリシャ神話を極めたくなった時には、阿刀田高さんの『私のギリシャ神話』と『新トロイア物語』を読んで深めるのがおすすめです。

ギリシャ神話を知りたいと感じたときには本当におすすめな5冊ですので、是非、一度これらの本を手にとってみてください。

 

ユダヤ・キリスト・イスラム教について知る本はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
にほんブログ村

旧約聖書・新約聖書・コーランのあらすじを知るためにおすすめな本5選-中野京子と阿刀田高で聖書入門

西洋世界で強い存在感を持つ宗教ユダヤ教キリスト教イスラム教。切っても切れない関係にあるこれら3つの宗教は長い歴史の中で、時に交わり、時に争いながら互いの存在を意識しあってきました。

この3つの宗教は私たちから見ると全く異なる宗教の様に見えるのですが、実はキリスト教イスラム教も、もともとは旧約聖書に基づく教えであるユダヤ教から派生した宗教です。

この記事ではそんな西洋の兄弟宗教であるユダヤ教キリスト教イスラム教、そしてそれぞれの経典である旧約聖書新約聖書コーランを知りたいと思ったときにおすすめの書籍を5つご紹介します。

f:id:k-heki:20190225081752j:plain

 

旧約聖書新約聖書コーランのあらすじを知るためにおすすめな本5選

f:id:k-heki:20200321020059j:plain

旧約聖書新約聖書コーランを知ることは西洋世界の歴史や政治、価値観、戦争などを考える時のとても重要な第一歩です。また、西洋美術を鑑賞するときも新旧聖書についての知識があると絵画の見方も大きく変わり、これまでに無い視点で絵画を楽しむことができるようになります。

旧約聖書新約聖書コーランを知りたいと思ったときにおすすめの本は、中野京子さんと阿刀田高さんの作品。

中野京子さんは絵画を用いて分かりやすく解説するスタイルで視覚的に聖書を理解することができ、阿刀田高さんの作品は聖書やコーランを独自の見解も踏まえながら軽快な文体で易しく解説してくれているのが特徴。

ここからはそんな中野京子さんと阿刀田高さんの作品をご紹介します。

※絵画と聖書についてはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

『名画の謎 旧約新約聖書篇』中野京子

聖書を全く知らない状態でも楽しむことができるおすすめの本が中野京子さんの『名画の謎 旧約・新約聖書篇』という作品。

中野京子さんの本の特徴は絵画と物語をセットで解説してくれるところ。聖書で描かれる世界を視覚的に理解でき、且つ、中野京子さんの語り方がとてもユーモアに溢れていて面白いです。

こちらの本は旧約聖書天地創造からイエス以降の新約聖書までのお話を流れと共に解説してくれています。泥からアダムが作られアダムの肋骨からイヴが作られたことなど、なんとなく耳にしたことがある聖書の物語を詳しく分かりやすく解説しています。

聖書を解説する本でもあり、絵画を解説する本でもあるのも特徴。宗教画を鑑賞する際に持ち物を見て登場人物を特定することができることや、宗教画の役割が「字が読めない人々への布教のため」だったことなど、その絵画が描かれた時代的な背景や画家についても分かりやすく解説している本です。

名画の謎 旧約・新約聖書篇 (文春文庫)

名画の謎 旧約・新約聖書篇 (文春文庫)

  • 作者:中野京子
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 文庫
 

 

『名画と読むイエス・キリストの物語』中野京子

先にご紹介した『名画の謎 旧約・新約聖書篇』に続けて読んでいただきたい作品が『名画と読むイエス・キリストの物語』です。『名画の謎 旧約・新約聖書篇』が新旧聖書全般的に解説する本ならばこちらはイエス・キリストにスポットを当てた本となっています。

この本も「絵画を見ながら物語を紹介する」という方法で中野京子さんがイエスの生涯について分かりやく紹介しています。マリアがイエスを懐妊する受胎告知から始まり、イエスが仲間を集めていくシーン、ユダがイエスを裏切った後の「最後の晩餐」、イエス磔刑前にペテロが「イエスなんて知らない」と言ってしまう場面、イエス磔刑、そして蘇り… 

『名画と読むイエス・キリストの物語』は聖書を基に描かれたイエスの物語を堪能することができる本です。

ちなみに表紙はスペインの画家ベラスケスの『イエス磔刑』。

名画と読むイエス・キリストの物語 (文春文庫)

名画と読むイエス・キリストの物語 (文春文庫)

 

 

※ベラスケスとスペイン絵画はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

旧約聖書を知っていますか』阿刀田高

中野京子さんの作品で視覚的に聖書を理解したら、つづいて阿刀田高さんの本でより深いところまで確認するのがおすすめ。

旧約聖書を知っていますか』は旧約聖書を解説する本で、アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフ、モーセヨシュアダビデ、ソロモンと続く古代イスラエル王国の歴史を分かりやすく解説している本です。

旧約聖書に馴染みの薄い読者でも分かりやすい形で解説されていて、聖書に触れるならこの本を読むのが一番。

天地創造などの神話的要素に関しても説明されており、この一冊を読めば旧約聖書ユダヤ教キリスト教イスラム教について、「なるほど、そういう宗教か」と理解できるようになれる作品です。

旧約聖書を主題とした作品が西洋芸術の世界には多くあるため、西洋芸術をより深く理解するためにもお勧めの一冊。

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

  • 作者:阿刀田 高
  • 発売日: 1994/12/20
  • メディア: 文庫
 

 

新約聖書を知っていますか』阿刀田高

新約聖書の解説は、『新約聖書を知っていますか』が詳しいです。

こちらの本は、特にキリスト教徒が重視している新約聖書キリスト教徒でない読書にも分かりやすく解説しています。

福音書使徒言行録 、使徒達の手紙、ヨハネの黙示録の説明という構成となっており、キリストが起こした奇跡などについて、筆者の見解を交えながら記されています。

新約聖書旧約聖書と同様に、ヨーロッパ芸術をより深く楽しむためにとても役立つ知識ですので、是非、『新約聖書を知っていますか』で聖書の世界に足を踏み入れてみてください。

新約聖書を知っていますか (新潮文庫)

新約聖書を知っていますか (新潮文庫)

  • 作者:阿刀田 高
  • 発売日: 1996/11/29
  • メディア: 文庫
 

 

コーランを知っていますか』阿刀田高

最後は『コーランを知っていますか』をご紹介。イスラム教は偶像崇拝を禁止しているため、絵画などでイスラム教関係の作品を見ることはありませんが、西洋の歴史を知る上では必ず知っておきたいのがイスラム教の知識です。

日本人からすると、ユダヤ教キリスト教イスラム教も全く別の宗教の様に思ってしまいますが、実は同じ神(唯一神)を信仰す宗教で、イスラム教の立場では、それぞれの信仰対象であるモーセ、イエスマホメットムハンマド)は時代は違えど預言者(神の声を聞き民に説くもの)として並び称される存在。

この本を読むと、コーランの成り立ちと他宗教との関係、スンニ派シーア派、そして砂漠で生きる人々の生活の指針となるイスラム教の教えについて、学ぶことができます。

普段中々触れることが無いイスラムの世界を知る入門書としておすすめな本『コーランを知っていますか』。この本を読めば、現代まで続くユダヤイスラム、キリストの対立の根元の部分について分かってくるはずです。

コーランを知っていますか (新潮文庫)

コーランを知っていますか (新潮文庫)

  • 作者:阿刀田 高
  • 発売日: 2005/12/22
  • メディア: 文庫
 

 

終わりに

f:id:k-heki:20200906115903p:plain

今回は旧約聖書新約聖書コーランのあらすじを知るためにおすすめの本を5作品ご紹介しました。

西洋世界を知るためには欠かすことができないユダヤ教キリスト教イスラム教についての知識ですが、分厚い本を読むのはとても大変。そんな時に、今回ご紹介した中野京子さんと阿刀田高さんの本を読むことで、楽しく各宗教について学ぶことができますので、是非一度読んでみてください。

 

阿刀田高さんのおすすめ作品はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

 にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
にほんブログ村

モチベーションを上げたい時におすすめなお仕事小説5選-原田マハ, 三浦しをん, 池井戸潤, 坂木司, 宮下奈緒を紹介

なぜかやる気が出なかったり、モチベーションが上がらなかったりする時にお勧めなのが小説を読むこと。特にお仕事小説は小説の世界に広がる仕事の面白さや夢を追いかける姿に励まされ、モチベーションUPには最適なジャンルです。

この記事ではそんな「モチベーションを上げたいときにおすすめなお仕事小説」を5作ご紹介します。

f:id:k-heki:20200810023907j:plain

 

モチベーションを上げたい時におすすめ お仕事小説5選

f:id:k-heki:20200822060947p:plain

今回ご紹介するモチベーションを上げたい時におすすめなお仕事小説は、原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』、三浦しをんさんの『舟を編む』、池井戸潤さんの『下町ロケット』、坂木司さんの『和菓子のアン』、宮下奈緒さんの『羊と鋼の森』の5作。

どの作品も、読んでいると作品の世界に引き込まれて、登場人物の前向きな姿勢や夢を追う姿に勇気をもらえる小説です。

 

『本日は、お日柄もよく』-原田マハ

原田マハさんの代表作とも言える作品が『本日は、お日柄もよく』。

スピーチライターの紡ぐ言葉に魅了された女性が自身もスピーチライターとしての人生を歩みだし、言葉が持つ力、魅力、そして言葉の可能性を追い求めていく物語です。

この本は本当にかっこよくて、言葉が人の人生を変える力をもっているんだなと言うことを心の奥深くに直接語りかけてくる小説。私自身、『本日は、お日柄もよく』のスピーチに力を貰い、そして、自分が何かを話すとき、この小説のように、誰かの心に響く言葉を伝えられるように成長したいなと思いました。

ありがちなスピーチの入り「えー、本日は、お日柄もよく…」。この言葉を聞いた瞬間に一気に眠気が訪れてしまうパブロフの犬。ですが、この物語で生み出されるスピーチの数々は人の心を動かす力を持っていて、本を読み終わった時、「本日は、お日柄もよく」という言葉が力強い、かっこいい、印象的な新しい言葉として私たちの心に刻まれるのです。 

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

  • 作者:原田マハ
  • 発売日: 2013/06/07
  • メディア: 文庫
 

  

舟を編む』-三浦しをん

 『舟を編む』は、主人公である出版社の営業部員・馬締光也が仲間と共に辞書を編纂するという物語。

営業部員として仕事をしていた光也ですが、ある日、言葉への鋭いセンスを買われて辞書編集部に引き抜かれます。その辞書編集部での大仕事が新しい辞書『大渡海』の編纂でした。

この『舟を編む』は、辞書編纂に人生をかける人々の情熱や仕事に対する熱意、言葉に対する愛を読むことができる作品。一つの言葉の意味を巡って様々な解釈が話し合われ、「言葉」というものに対する見る目を変えてくれる作品です。登場人物の辞書編纂に対する熱量を感じると自然と自分の中の心の芯の部分が熱くなります。

言葉という大海を渡るための舟『大渡海』を編む登場人物の熱意を感じてみてください。

舟を編む (光文社文庫)

舟を編む (光文社文庫)

 

 

 

下町ロケット』-池井戸潤

 ドラマ『半沢直樹』で有名な池井戸潤さんの『下町ロケット』は阿部寛さん主演でドラマ化されたことがある作品。

宇宙科学開発機構の研究員・佃航平は、画期的なロケットエンジンを開発するのですが、ロケット「セイレーン」の打ち上げに失敗し、責任を問われて退職。父親の後を継いで佃製作所で小型エンジンの製造・販売に従事する中で、佃製作所の新技術である「水素エンジン」と共にロケットエンジンの開発に挑む物語です。

途中、特許の問題でライバルと法的な争いが勃発したり、資金繰り問題で大企業に特許を売却しなければならない状況に陥ったりと、技術ある中小メーカーの苦悩や、技術部と営業部と経理(財務)部の企業内対立などをリアルに描いており、共感するところが多くあります。そして、その逆境の中でもプライドを持ち続ける社員のものづくりに一生懸命に打ち込む姿に胸を打たれる作品です。

下町ロケット』は、メーカーの現実をしっかりと描いており、そういう面でも共感し楽しむことができました。また、難しい課題の連続の中でも一貫してものづくりに対する愛が感じられる作品ですので、是非一度読んでみて下さい。 

下町ロケット (小学館文庫)

下町ロケット (小学館文庫)

 

 

『和菓子のアン』-坂木司

『和菓子のアン』は、デパ地下の和菓子店「みつ屋」でアルバイトをすることになった食べることが大好きな18歳の梅本杏子(アンちゃん)が、和菓子を通して謎を解いていくお仕事ミステリーです。

和菓子は歴史があり、一つ一つが意味を持っていて、耳を澄ませば和菓子がいろいろなことを語ってくれます。それを小説では「俳句」に似ていると表現されており、そんな和菓子の声を聞きながら、和菓子を買いに来たお客さんの悩みや問題を紐解いていきます。

『和菓子のアン』は、ほのぼのしているのですが、一つ一つの和菓子が持つ意味や、どういう時にどの和菓子を選ぶといいのかなど、和菓子というものに対する見る目を変えてくれる作品。アンちゃんの和菓子に対する気持ちや登場人物の仕事に対するプロフェッショナルな姿勢などを読むことができ、とても前向きになれる小説です。 

和菓子のアン (光文社文庫)

和菓子のアン (光文社文庫)

  • 作者:坂木 司
  • 発売日: 2012/10/11
  • メディア: 文庫
 

 

羊と鋼の森』-宮下奈緒

主人公の外村は、高校生の時に偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来調律に魅せられ、念願の調律師として働き始めます。調律師として毎日音と向き合う日々を送るのですが、ある日、和音と由仁(ゆに)という双子の姉妹と出会い、調律師として成長していく物語です。

この『羊と鋼の森』は劇的な躍動感がある作品というよりは静かに淡々と調律師の仕事を描いている作品。しかし、小説に描かれる瑞々しい表現、音が文字として表され、目の前に情景が浮かんでくるような言葉の使い方が見事な小説です。

羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

 

 

終わりに

f:id:k-heki:20200810023821j:plain

この記事では、モチベーションを上げたい時におすすめなお仕事小説を5作品ご紹介しました。

どの作品も一つのことに打ち込むことの素晴らしさ、人々の情熱、仕事の面白さを感じることができる作品です。

モチベーションが中々上がらないという時には是非一度読んでみてください。

 

原田マハさんのおすすめ作品はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

貴志祐介さんのおすすめ作品はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 

貴志祐介のおすすめSF系・青春系小説5選-青の炎,新世界より,ダークゾーン,クリムゾンの迷宮,罪人の選択を紹介

大野智さん、戸田恵梨香さん、佐藤浩市さん出演で話題だったフジテレビのドラマ『鍵のかかった部屋』。

原作者の貴志祐介さんは、人間の内面にある恐ろしさに注目したホラー、ミステリー、そしてSF小説を執筆する作家です。2020年3月には『罪人の選択』を2年半ぶりに発表し話題となりました。

貴志祐介ワールドとも言える独特な世界観を世に届け続ける彼の作品は、美しい中に背筋が凍る恐怖があり、時に人間の内面について深く考えさせてくれる物語です。

今回はそんな貴志祐介さんの本の中から特にSF要素が強い作品を4選と青春小説を1作、ご紹介します。

 

f:id:k-heki:20200716052258j:plain

  

貴志祐介のおすすめのSF系小説5選

貴志祐介はSF系、サイコホラー系(幽霊が出てこない、人間が怖いホラー)、ミステリー系、エッセイなど、様々なジャンルの本を書いている作家です。

この記事では、貴志祐介の作品の中からSF系の小説である『新世界より』、『ダークゾーン』、『クリムゾンの迷宮』、『罪人の選択』の4作と、SFではないですがとてもおすすめな『青の炎』をご紹介します。

  

『青の炎』-ハムレットのような青春小説

貴志祐介作品で一番爽やかな作品で、青春小説と表すことができる小説が『青の炎』です。

主人公の秀一は母と妹の3人で慎ましくも幸せに暮らす高校生。そんな幸せな日々をぶち壊したのが母の離婚相手でした。家族の幸せを守るため、秀一は「強制終了」に向けた完全犯罪を計画します。

明るく爽やかに描かれる高校生活の中に、淡々と事を進める秀一がいて、「家族を守りたい」、「アイツを殺さなきゃ」、「家族の為に僕がやらなきゃ」、「本当に殺してしまった…」と、彼の心の中では様々な思いと葛藤が交錯します。 

「誰かを守りたい」という純粋な気持ちが、何故こんなにも悲しい結末に人を導いていくのか。本当は幸せになるべきなのに、少しのボタンの掛け違いで人生が狂ってしまう…誰かのために勇気を振り絞ってとった行動なのにそれが報われない… 

兎に角切ない、やるせない、それでいて颯爽とした青春物語です。

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2002/10/23
  • メディア: 文庫
 

 

 

新世界より』-人間の業を見るダークファンタジー

1000年後の日本には呪力という特別な力が備わった人間が住んでいます。そんな日本で育った主人公早希が、幼少期は冒険を繰り広げ、大人になってからは「バケネズミ」と呼ばれる異形のものとの争いに巻き込まれていきます。

新世界より』は、歴史、生態系、教育、社会などの新しい世界観が緻密に構築されている、別世界を体感できる小説。美しい世界と面白い生き物が目の前に実在するかのように鮮やかに描かれています。一方で、幼少期の冒険、大人になってからの戦争、どちらも暗くて恐ろしい。

ファンタジックな世界観の裏側には「呪力を持つ人間」と「バケネズミ」という2つの種族の対立、呪術がもたらした文明の崩壊、封印された過去の歴史、人間が人間で無くなっていく様など、「ああ、人間ってそういうものだな」と、人間の業のようなものを感じる作品でもあります。

とても長い作品で、上巻は世界観や生き物の説明描写が多いので、読むのが大変ですが、ここの部分は後半に分からないことが出てきた際に使用する辞書のような役割と割り切ってさくさく読み進めるのがおすすめ。

中巻、下巻と進んでいくと、フィクションなのにリアルに、現実とは別の世界に入り込めるようになります。私の場合、先が気になって気になって仕方が無くて、電車から降りて家に帰る帰り道も歩きながら読んでいたほど熱中することができた小説です。

新世界より 文庫 全3巻完結セット (講談社文庫)

新世界より 文庫 全3巻完結セット (講談社文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫
 

 

『ダークゾーン』 -ゲームのような世界の本

奨励会員の主人公が目覚めると、軍艦島そっくりの島で異形の駒になっており、リアル人間将棋バトルロワイアルに巻き込まれる話。

ゲーム好き、将棋好きにおすすめの本です。この不思議な世界と現実世界を行ったりきたりしながら物語は進んでいきます。

主人公キングとして、友人や恋人を駒に、頭脳戦を繰り広げていきます。駒となった友人たちとの人間関係や主人公の人柄などが段々と明らかにされていく様も意外性が合ってとても面白い作品。

貴志祐介作品の中では一番直感的に読めて迫力が有る作品で、是非映像コンテンツでも見てみたいなと思いました。

ダークゾーン【上下 合本版】 (角川文庫)

ダークゾーン【上下 合本版】 (角川文庫)

 

  

『クリムゾンの迷宮』-不思議な世界でのサバイバルゲーム

目が覚めた主人公の目の前には見知らぬ異様な光景が広がっており、突如男女9人によるサバイバルゲームに参加させられる、と言う物語です。

食料、武器、情報など、最初に選択できるお助けアイテムの選び方によって、9人の運命は大きく変わっていきます。途中、主人公が屍鬼に追われるシーンでは、心臓のバクバクが止まりませんでした。

臨場感とスピード感があり、自分もこのサバイバルゲームに参加しているような感覚に。一気に読むことができる作品です。

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 1999/04/09
  • メディア: 文庫
 

  

『罪人の選択』 -貴志祐介最新作のSF短編集

SF短編集と言えるのが『罪人の選択』。「夜の記憶」「呪文」「罪人の選択」「赤い雨」の4篇が収録されています。

「夜の記憶」-記憶として地球を脱出

難しくて2回読みました。主人公夫婦が「記憶」として地球を脱出する前日に1日にを過ごすのですが…

「呪文」-殖民惑星に存在する危険信仰と念動力

新世界より』に少し似ています。主人公の金城が「まほろば」という殖民惑星の調査に訪れるのですが、その世界では危険な信仰と不思議な現象が存在。金城はこの星の調査を進めようとするのですが…

「罪人の選択」-生か死かの心理戦

ある男が戦後友人の妻を寝取ったことで、友人に一升瓶の酒と缶詰のどちらかを食べるように強要されるのですが、その一方には猛毒が入っているというお話。心理描写が見事で、ミステリーの雰囲気です。そして更に子供達も同じ状況に陥ってしまうのです。

「赤い雨」-ウィルスに侵された世界

コロナ禍の世界を予言したような作品。チミドロという現象により赤く染まった世界が舞台。主人公は成績優秀がゆえに外の世界(貧困と汚染の地域)からドームの中で生きることが許され、ワクチン開発に生涯を捧げます。しかしある事件をきっかけに彼女の運命は大きく変わっていくのです。

罪人の選択

罪人の選択

 

 

 終わりに

この記事では貴志祐介の作品の中でもSF系、青春系のジャンルである小説を5作後紹介しました。

貴志祐介さんの小説は作品も独自の世界観をもっており、別世界の不思議に浸ることができる本ばかりです。

今回ご紹介した『青の炎』、『新世界より』、『ダークゾーン』、『クリムゾンの迷宮』、『罪人の選択』の5冊はどれも本当に面白いので、是非一度貴志祐介さんの作品を手にとってみてください。

 

 原田マハさんのおすすめ小説はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 

阿刀田高を知っていますか?ヨーロッパ古典を面白く学ぶには阿刀田高作品がおすすめ-ギリシャ神話、トロイア戦争、アレクサンドロス、聖書、ダンテ、シェイクスピアを本で学ぶ

阿刀田高さんといえば、ミステリーやブラックユーモア分野での短編小説が人気の作家です。ですが、実はヨーロッパやヨーロッパ芸術を学ぶなら、阿刀田高さんの本は欠かすことができない、必読書なのです。

この記事では、ヨーロッパを楽しく学ぶためにお勧めの阿刀田高さんの作品を9作品ご紹介します。

f:id:k-heki:20200705225046j:plain

 

阿刀田高を知っていますか?ヨーロッパ古典を面白く学ぶには阿刀田高作品がおすすめ

ヨーロッパ古典、特にギリシャ神話や聖書を学ぶことは、ヨーロッパの歴史や芸術を深く知る時には欠かかすことができません。一方で、難しい専門書などは読んでいても良く分からなかったり、単調で眠くなったりと、中々一筋縄には行かないというのが本音。

ですが、実はヨーロッパを楽しく学べる方法がこの世には存在するのです。それが、阿刀田高さんの作品を読むこと。

阿刀田高さんはミステリーやブラックユーモアの分野で高名な作家さんですが、実は世界各国の古典を軽妙に読み解いた随筆でも知られる作家さんで、阿刀田高さんの作品を読めば、楽しくヨーロッパ古典を学ぶことができます。

この記事では阿刀田高さんの数ある古典随筆の中からヨーロッパの古典に関するものを厳選してご紹介します。

ご紹介するのは、ギリシャ神話、イリアスマケドニア旧約聖書新約聖書神曲シェイクスピアの7テーマ。

そして、7テーマに沿った作品、『獅子王アレクサンドロス』、『ギリシア神話を知っていますか』、『私のギリシア神話』、『ホメロスを楽しむために』、『新トロイア物語』、『旧約聖書をしっていますか』、『新約聖書を知っていますか』、『やさしいダンテ「神曲」』、『シェイクスピアを楽しむために』、の9作品をお届けします。

 

ギリシア神話を知っていますか』-ギリシャ神話をやさしく解説

まずご紹介するのは『ギリシア神話を知っていますか』という作品。

ヨーロッパの古典と言えばギリシャ神話。絵画や骨董品にも良く描かれる作品で、映画などの主題にもなる、ヨーロッパの価値観の礎ともいえる神話です。

ギリシャ神話では特にオリュンポス12神といわれる、ゼウスをはじめとした男女6柱ずつの神々が有名。

この本ではどの神様がどのようなことを行ったのかを現在風のタッチで楽しく解説してくれています。

 

 

ギリシャ神話というのは、ヨーロッパを知るためには欠かすことのできない古典の一つです。例えば、ヨーロッパ旅行で訪れる美術館などにはギリシャ神話をモチーフにした作品が沢山あります。

そんな作品を鑑賞する時に、「あ、このシーンはアポロンがダフネを追いかけているシーンだ」など、その物語が分かると、面白さが二倍、三倍に膨らんでいきます。

西洋美術や芸術、文化、建築などに興味がある方は是非、『ギリシア神話を知っていますか』を読んでみてください。

 

私のギリシャ神話 (集英社文庫)

私のギリシャ神話 (集英社文庫)

 

 

阿刀田高さんは同じくギリシャ神話をテーマに『私のギリシャ神話』という本も書かれています。『ギリシア神話を知っていますか』との違いとして、紹介されているお話の違いもありますが、こちらは挿絵などでヴィジュアル的にもギリシャ神話を楽しむことができる作品です。

 

ギリシャ神話とヨーロッパ美術の例はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

 『新トロイア物語』-ホメロスの叙述史イリアスを知る

トロイア戦争の10年目、その最後の50日間を記した叙述史がホメロス作の『イリアス』。トロイア戦争は長らく空想の話だといわれていたのですが、1871-1873年に行われた本格的な発掘によって、トロイアの遺跡がシュリーマンにより発見され、史実だったのではと、言われるようになった伝説的な戦争です。

このトロイア戦争について、小説の形式で描かれた作品が『新トロイア物語』。この小説の特徴は、神話的なお話も解説しながらも、より現実的に通説を分析しており、現実味のある小説に仕上げているところ。そして、トロイア戦争後にアイネイアスがローマにたどり着き、ローマを建国するところまでを描いている、正に阿刀田高さんによる『新トロイア物語』です。

 

新トロイア物語 (講談社文庫)

新トロイア物語 (講談社文庫)

 

 

同じくホメロスを題材とした作品が『ホメロスを楽しむために』。こちらは『イリアス』だけでなく、『オデュッセイア』についても描かれています。

阿刀田高さんのギリシャ旅行をもとにホメロスを紐解いていく形式の作品です。どの神様が誰に味方したか、なども描かれており、より軽い気持ちでホメロスを楽しむことができます。

 

ホメロスを楽しむために(新潮文庫)

ホメロスを楽しむために(新潮文庫)

 

 

トロイア戦争のきっかけとなったパリスの審判はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

獅子王アレクサンドロス』-古代マケドニアを知る

 マケドニアを大帝国に作り上げたアレクサンドロス大王の快進撃を小説化した作品。アレクサンドロス大王は紀元前356年に生まれたとされており、ギリシャ神話のゼウスの血を引いていたとか。

獅子王アレクサンドロス』では、アレクサンドロス大王の幼少期から没するところまでをスピード感溢れるタッチで描いています。

かなり長い長編小説ですが、先が気になって読むのが止まらなくなるほど面白い作品です。特に阿刀田高さんの時代背景などの説明も分かりやすく、没頭できること間違い無しです。

 

獅子王アレクサンドロス (講談社文庫)

獅子王アレクサンドロス (講談社文庫)

 

 

旧約聖書を知っていますか』-ユダヤ教の聖書を知る

アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフ、モーセヨシュアダビデ、ソロモンと続く古代イスラエル王国の歴史を分かりやすく解説している本。

旧約聖書に馴染みの薄い読者でも分かりやすい形で解説してくれる本で、聖書に触れるならまずはこの本を読むのが一番。

天地創造などの神話的要素に関しても説明されており、この一冊を読めば旧約聖書ユダヤ教キリスト教イスラム教について、「なるほど、そういう宗教か」と理解できるようになれる作品です。

旧約聖書を主題とした作品が西洋芸術の世界には多くあるため、西洋芸術をより深く理解するためにもお勧めの一冊。

 

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

  • 作者:阿刀田 高
  • 発売日: 1994/12/20
  • メディア: 文庫
 

 

旧約聖書と美術館の話はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

新約聖書を知っていますか』-キリスト教を楽しく学ぶ

特にキリスト教徒が重視している新約聖書キリスト教徒でない読書にも分かりやすく解説している本です。福音書使徒言行録 、使徒達の手紙、ヨハネの黙示録の説明という構成となっており、キリストが起こした奇跡などについて、筆者の見解を交えながら記されています。

新約聖書旧約聖書と同様に、ヨーロッパ芸術をより深く楽しむためにとても役立つ知識ですので、是非、『新約聖書を知っていますか』で聖書の世界に足を踏み入れてみてください。
 
新約聖書を知っていますか (新潮文庫)

新約聖書を知っていますか (新潮文庫)

  • 作者:阿刀田 高
  • 発売日: 1996/11/29
  • メディア: 文庫
 

 

※芸術と聖書はこちら 

sumikuni.hatenablog.com

 

『やさしいダンテ「神曲」』-ダンテの「神曲」に触れる

ダンテ作の「神曲」、一度は聞いたことがある名前だと思いますが、「神曲」とはいったいなんでしょうか。恥ずかしながら私はこの本世読むまで、「神曲」はものすごく素晴らしい音楽のことだと思っていました。この本を読んで知ったことは、「神曲」とは、実はダンテが書いただっ喜劇たということです。

あらすじは、ダンテが古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、地獄、煉獄、天国を案内してもらう中で、歴史上の人物たちとを巡って出会い、語らうというお話。

芸術にも用いられることがある題材で、ロダン作の『地獄の門』は地獄篇第3歌に登場する地獄への入口の門がモチーフになっています。

 

やさしいダンテ「神曲」

やさしいダンテ「神曲」

 

 

ロダンについてはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

シェイクスピアを楽しむために』-シェイクスピアはこう楽しむ

最後にご紹介するのは『シェイクスピアを楽しむために』です。こちらは文字通り、シェイクスピアを解説している本。シェイクスピアといえば『ロミオとジュリエット』などの数多くの舞台作品を生み出した劇作家。

阿刀田高さん作の本作品では「人殺し色々」から始められる物語に引き込まれること間違い無しです。この『シェイクスピアを楽しむために』では、シェイクスピアの戯曲を現代の感覚で楽しくことができます。シェイクスピアには興味があるけど、難しそうだから挑戦できなかった、という方にとてもお勧めな作品です。

ちなみに私はシェイクスピアはとても好きで、特に『マクベス』、『ハムレット』、『リア王』、『オセロ』の4大悲劇が好きなのですが、阿刀田高さんの『シェイクスピアを楽しむために』はシェイクスピアを読んだ事があるという場合でも、楽しめる内容となっているので、是非一度手にとってみてください。

 

シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)

シェイクスピアを楽しむために (新潮文庫)

  • 作者:阿刀田 高
  • 発売日: 2002/12/25
  • メディア: 文庫
 

 

尚、シェイクスピアを題材にした美術作品ではミレイ作の『オフィーリア』が有名ですが、私は日本でしか本物を見たことが無く、写真が無いので記事で紹介できないのです。ロンドンのテート・ブリテン美術館に所蔵されていますので、ロンドンへご旅行の際は是非一度足を運んでみてください。

 

終わりに

今回はヨーロッパの古典を学んでみたいと思ったときにお勧めな、阿刀田高さんの作品を7テーマ9作品ご紹介しました。

どの作品もとても分かりやすく、面白く、ユーモアを交えて解説してくれていますので、本当にお勧めな作品です。

是非、阿刀田高さんの本で西洋古典の世界に足を踏み入れてみてください。

 

※美術関係の小説なら原田マハさんがおすすめ

sumikuni.hatenablog.com

 

 

にほんブログ村 美術ブログへ
にほんブログ村 

原田マハの魅力を紹介!初心者でも楽しめるおすすめ小説10選-美術・仕事・暮らしを通して人々が織り成す物語に驚き感動し涙する

2021年公開予定の映画『キネマの神様』の原作者として知られる原田マハ。美術小説やお仕事小説で有名な作家さんです。

今回は小説家原田マハさんの小説の中から、「初心者でも楽しめる」をテーマにおすすめ作品10選をご紹介します。

※本記事では文脈によって敬称を略しています。

f:id:k-heki:20200504051018j:plain

 

原田マハの魅力を紹介!初心者でも楽しめるおすすめ小説10選

原田マハさんは、お仕事小説や美術小説で有名な作家。泣ける小説、感動する小説、心温まる小説など、人間の美しさを感じることができる小説を多く執筆されてします。

2020年4月にはコロナ禍のフランスを舞台にSNSを通して18日間にわたり小説『喝采』が発信され話題にもなりました。『喝采』では変わり行くパリの町並み、コロナ禍でロックダウンされる町の緊迫感が表現され、そしてコロナ禍でも秩序を重んじる日本人の強さを感じることができました。

この記事では、そんな魅力溢れる作品を生み出す原田マハさんの略歴をご紹介し、その後、原田マハさんのお勧め小説を10選、ご紹介します。

 

原田マハは行動派のかっこいい作家

原田マハさん、小説を拝読するととても知的でミステリアスな雰囲気の方なのだなと思っていました。きっとこのイメージは私の中で生涯持ち続ける原田マハ像です。

一方で、実は原田マハさんはものすごく行動派でかっこいい作家なのです。詳しくは下記の公式ウェブサイトをご参照いただきたいのですが、こちらでは原田マハさんの激動の人生を少しだけご紹介します。

PROFILE | 原田マハ公式ウェブサイト

 

生まれてから大学まで

原田マハさんは1962年東京生まれで、3歳から絵を描いていたそう。小さな頃からピカソをライバル視していたそうです。10歳のときに岡山に移り住み、その後関西学院大学のドイツ文学科に入学するも、ドイツ語に苦労され日本文学科へ転科。

大学在学中にピカソの絵と再開し、ピカソが天才だと気づきます。一方でアンリ・ルソーのヘタっぷり(絵のおもしろさ)と人間性に魅せられ「いつかルソーの物語を描いてみたい」との思いを募らせたそうです(その後『楽園のカンヴァス』を執筆されました)。

 

大学卒業後は度胸で人生を切り拓く

卒業後、就職先が見つからずバイトをしながら専門学校を卒業。東京のお兄様から呼ばれ東京の広告プロダクションに勤務。その後退職し、オープン準備中の「マリムラ美術館」へ飛び込み就活、入社します。

結婚退職後、アートマネジメント学校でディレクターをしていたとき、学校の視察に来た伊藤忠商事新規事業室の方を頼りに、ほぼ飛び込みで「企業とアートの新しい関係」についてプレゼン。中途入社が決まります。本当にパワフルで積極的でかっこいいです。

伊藤忠商事では「アート、文化に関するコンサルティング」が主なお仕事でした。その時顧客だった森ビルの森美術館の構想策定にチーフコンサルタントして乗り出します。

 

早稲田大学第二文学部とキュレーター

コンサルタントとして仕事をする傍ら、「キュレーターになりたい」という目標を掲げ早稲田大学の第二文学部(夜間・土曜日授業)を受験。40倍の倍率を潜り抜け大学に入学、学芸員の資格を取得します。

伊藤忠商事を退職し、森ビル株式会社に入社、森美術館の設立準備室に所属。世界中の美術館を視察。六本木ヒルズブランディング、美術館設立に尽力。

通訳学校にも通い、英語を猛勉強。ビジネス通訳初級を取得。

MoMAに派遣され6ヶ月間のニューヨーク駐在。美術館の仕組みを学び、企画展、国際展についてリサーチ。

 

独立とライター

40歳になる年、「人生で本当にやりたいことは何か?」と考え独立。都市再生プロジェクト「Rプロジェクト」に参加し、キラ星のごときクリエーターたちと出会います。

『R the Transformer』を建築家馬場正尊氏と共著・出版。

雑誌「インビテーション」の編集長だった菅付氏からニューヨーク特集の取材のオファーが入り、30ページ近くの特集記事を執筆。カルチャーライターとしての一歩を踏みだしたのです。

2004年、「CET04 VISION QUEST」という展覧会を仕掛け、動員は2万人に。

角川書店の編集社から「働く女性のインタビュー集」の共同執筆の誘いがあり、沖縄の女性社長をインタビューで沖縄へ。那覇での取材後、伊是名島に渡り、浜辺で遊ぶ男性とラブラドール犬との運命の出会いを果たします。

「何て名前のワンちゃんですか」と聞いたところ、「カフーっていうんです」と。「どう言う意味ですか?」「沖縄の言葉で、『幸せ』という意味です」

この瞬間から原田マハさんは「作家原田マハ」の人生を歩き出すのです。

 

※こちらの内容は原田マハさんの公式ウェブサイトを参考に執筆しました。

PROFILE | 原田マハ公式ウェブサイト

 

『本日は、お日柄もよく』-スピーチで震う人の心

さて、兎に角かっこいい原田マハさんですが、私が一番お勧めしたい作品は『本日は、お日柄もよく』です。スピーチライターの紡ぐ言葉に魅了された女性が自身もスピーチライターとしての人生を歩みだし、言葉が持つ力、魅力、そして言葉の可能性を追い求めていく物語です。

 

 

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

本日は、お日柄もよく (徳間文庫)

  • 作者:原田マハ
  • 発売日: 2013/06/07
  • メディア: 文庫
 

 

この本は本当にかっこよくて、言葉が人の人生を変える力をもっているんだなと言うことを心の奥深くに直接語りかけてくる小説。

私自身、『本日は、お日柄もよく』のスピーチに力を貰い、そして、自分が何かを話すとき、この小説のように、誰かの心に響く言葉を伝えられるように成長したいなと思いました。

ありがちなスピーチの入り「えー、本日は、お日柄もよく…」。この言葉を聞いた瞬間に一気に眠気が訪れてしまうパブロフの犬。ですが、この物語で生み出されるスピーチの数々は人の心を動かす力を持っていて、本を読み終わった時、「本日は、お日柄もよく」という言葉が力強い、かっこいい、印象的な新しい言葉として私たちの心に刻まれるのです。

 

『旅屋おかえり』-代行の旅と出会いの物語

タレント「おかえり」こと丘えりか。彼女がテレビでスポンサーの名前を「間違えた」ことから「旅代行」のお仕事を始める物語です。

旅代行業と通して出会う人々との関わりの中で丘えりかが繋ぐ人々の思いに感動することができる作品です。

初めての旅代行の依頼主は難病を抱える女性のお母様。娘と夫と見たかった桜を見に行って欲しいと依頼され、おかえりの旅屋業が始まります。

様々な依頼がある中、ある日、彼女が名前を「間違えて」しまったスポンサーの会長から呼び出しが。その依頼内容は彼女にとっても、彼女の周りにとってもとても難しいものでした。おかえりは、周りの気持ちに反した行動をとるのですが…

 

 

旅屋おかえり (集英社文庫)

旅屋おかえり (集英社文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2014/09/19
  • メディア: 文庫
 

 

 

旅先で様々なハプニングや出会いがあり、「旅は行ってみなければ分からない」という旅の醍醐味を味わうことができる作品です。

旅先の情景、人々との出会いが丁寧に描かれていて、読んでいると自分で旅をしているような不思議な感覚を味わうことができました。まるで本当に自分の旅をおかえりちゃんに代行してもらっているような…

おかえりが代行する旅にはそれぞれ依頼者の思いがあります。そして、旅先で出会う人々の思いがある。おかえりの旅は、その依頼者、そして旅先で出会う人々の心を動かす、そんな旅なのです。

人と人とのつながり、そして人々の温かさ、優しさ、気持ちに触れたとき、涙がとめどなく溢れて止まりませんでした。

 

カフーを待ちわびて』-与那喜島の愛の物語

ある日突然「幸(さち)」という女性から便箋が届きます。そこには友寄明青(ともよせあきお)が北陸を旅行した際に神社で「嫁に来ないか。幸せにします」と書いて奉納した絵馬を見て、幸が明青との結婚を決めたことが書いてありました。3日後、明青はカジマルの木の下で白い帽子にワンピース姿の女性幸と出会い、明青と幸の与那喜島での共同生活が始まります。

 

 

カフーを待ちわびて (宝島社文庫)

カフーを待ちわびて (宝島社文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2008/05/12
  • メディア: 文庫
 

 

ある日、明青の幼馴染でリゾート開発会社に勤務している照屋俊一が明青を訪ねてきます。人口800人の与那喜島に観光施設を誘致する計画があり、その話をするためでした。この俊一の訪問を機に明青と幸の運命は大きく変わっていくのです。

原田マハさんのデビュー作といえるのが『カフーを待ちわびて』。

原田マハさんの人生紹介で紹介されている沖縄は伊是名島で出会ったラブラドール犬「カフー」との出会いが生んだ作品です。美しい沖縄の海と空が目の前に浮かんでくるようで、そして幸と明青の爽やかな日常に清清しい気持ちになりました。

 

『まぐだら屋のマリア』-待ってる人がいる

東京の料亭の見習い紫紋(しもん)は、働いていた料亭「吟遊」で起こった食品偽装事件で全てを失い、最期の場所を求めて彷徨い、一人「尽果(つきはて)」というバス停にたどり着きます。そこで出会ったのがマリアという女性。

紫紋は謎の多いマリアとマリアが切り盛りする食堂「まぐだら屋」でマリアを手助けをすることになったのです。

 

 

まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)

まぐだら屋のマリア (幻冬舎文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫
 

 

死を求めてたどり着いた地で生を求める心。何もかもを捨て、帰る場所が無いと思っていた紫紋の凍った心は、マリア、女将、克夫、丸狐(まるこ)、与羽(よはね)との出会いによって溶かされていくのです。

『まぐだら屋のマリア』には様々な季節の料理が出てきて、料理を食べることで感じる幸せ、そして料理が与えてくれる生きる喜びを感じることができます。

料理を通して紡がれる物語には、様々な過去を持った人が登場するのですが、尽果に流れ着いた人々にも家族がいて、待っている人がいて…人々の愛、家族の大きな愛に触れたとき、自然と涙してしまっている、そんな作品です。

 

『永遠をさがしに』-音楽と家族愛と感動の物語

和音(わおん)は有名な指揮者の父とチェリストの母を持つ高校生。

母からチェロを習っていましたが、母が突然家から出て行ってしまいます。父も家に帰らない日々を送っており、家政婦に全てを任せる生活へ。

高校生になったある日、父がアメリカの楽団に移籍することが決まるのですが、和音は日本に残ることを決めます。そしてそこにやってきたのが父の後妻である真弓でした。

真弓との生活を通して和音の音楽に対する思いに変化が。

最後には真弓の秘密、本当の母親についての秘密が明かされることとなります。

 

 

永遠をさがしに (河出文庫)

永遠をさがしに (河出文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2016/02/05
  • メディア: 文庫
 

 

真弓はとても面白い女性で、和音とは対等の付き合いをするような義母なのですが、実は真弓も元チェリスト

和音の母時依のことを知っており、和音は彼女から母のことを聞き再びチェロを演奏することを決めます。

そして明かされる真弓と和音の母時依の秘密。その秘密を知ったときの衝撃と、和音の心の変化、家族愛、和音の友人文斗と朱里の友情に涙なくして読むことができない作品でした。

 

『キネマの神様』-運命をも変える映画の力

主人公円山歩は40歳を目前に再開発企業を辞職。辞表を出したその日に父が入院したという知らせを受け取ります。79歳になる父は円山郷直(ゴウ)は、大のギャンブル好き。方々から借金をしており、その額なんと300万。

歩の力ではどうしようもない金額に金銭面では父を助けることができないと、心を鬼にして母とともに父の気持ちをもう1つの趣味映画に向けさせようと尽力するという物語です。

 

 

キネマの神様 (文春文庫)

キネマの神様 (文春文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2011/05/10
  • メディア: 文庫
 

 

ある日、歩が書いた文章を父ゴウが勝手に雑誌社のブログに投稿。それがきっかけで歩は映画雑誌「映友」で映画評論を書くことになります。ただし、その「映友」の売れ行きは落ちる一方。会社自体が傾き始めてしまいます。

そんな状況を打破しようと、若い読者を取り込む目的でブログ「キネマの神様」が立ち上がります。そのブログを立ち上げたのは編集者の新村と引きこもり歴15年になる編集長の一人息子の興太でした。興太は歩の父ゴウの文章に興味を持ち、ゴウは「キネマの神様」に映画の感想を書くことに。その文章が話題となり次第にブログ数が伸び始め…

『キネマの神様』は本当にどうしようもない父と娘、そして母が織り成す家族の物語。映画を通して紡がれる家族愛に心が温かくなる小説です。 

 

『でーれーガールズ』-心が締め付けられる青春の思い出

佐々岡鮎子は「小日向アユコ」というペンネームで活動している人気漫画家。ある日、彼女の元に一通の手紙が届きます。差出人は母校岡山白鷺女子高等学校で国語教師を務めている荻原一子という女性。

創立記念事業の一環として佐々岡鮎子に記念講演をしてほしいという内容の手紙でした。迷っていた鮎子ですが、鮎子のデビュー作『でーれーガールズ』が人生の最良作品という一子の手紙にぐっときた鮎子はこの依頼を引き受けることにしたのです。

 

 

でーれーガールズ (祥伝社文庫)

でーれーガールズ (祥伝社文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2014/10/10
  • メディア: 文庫
 

 

創立記念事業の前に開催された同窓会で高校の時に転校してしまった秋本武美と再会。昔の話に花を咲かせます。二人は高校時代「ヒデホくん」という同じ男性を好きになったという経緯があるのですが、実はこのヒデホくん、実際の人物ではなく鮎子が考えた漫画の主人公だったのです。

空想の人物を巡る二人の友情と恋心に、心が締め付けられるようなそんなほろ苦い青春小説です。

 

『楽園のカンヴァス』-絵を巡る壮大な美術ミステリー 

『楽園のカンヴァス』は、アンリ・ルソーの代表作『夢』と酷似する作品『夢を見た』の真贋を巡り、若い研究者2人が鑑定を試みるという美術ミステリー。

主人公早川織絵は伝説の美術コレクターであるバイラーの計らいで、MoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーター、ティム・ブラウンと『夢を見た』の鑑定で対決することに。しかし、その鑑定にはひとつの条件がありました。それは、7日間、7章からなる物語を、一日一章ずつ読み、その上で『夢を見た』の真贋を判断して欲しいというものだったのです。

 

 

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2014/06/27
  • メディア: 文庫
 

 

原田マハといえば美術小説。私もこの『楽園のカンヴァス』で初めて原田マハさんの作品に触れました。『楽園のカンヴァス』では、2人の若きキュレーターが1枚の絵を巡って繰り広げる観察と考察、そして推理を、まるでその場に同席しているかのようにリアルに堪能できます。

小説の中に登場する物語を私たちも一緒に読み、その物語と絵画に対する2人の推理を聞く。2人の意見が知りたくて、物語の先が知りたくて、ページをめくる手が止まらなくなる、そんなドキドキのミステリーを味わうことができる作品です。

 

『暗幕のゲルニカ』-ゲルニカを追うそしてゲルニカが作られる

『暗幕のゲルニカ』はゲルニカに魅せられたMoMAのキュレーター八神瑤子がMoMAゲルニカをもう一度展示するためにスペインへ渡ったのをきっかけにゲルニカを巡る陰謀に巻き込まれていく物語。

この小説は瑤子が奔走する現代と、ゲルニカが書かれた当時を行ったりきたりしながら進んでいくサスペンスです。

 

 

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

 

 

同時多発テロがきっかけとなって始まったイラクへの武力行使。その発表時にアメリ国務長官の背景にあるはずだったゲルニカタペストリーに暗幕がかけられました。スペイン内戦を経験したピカソが戦争の悲惨さを訴えたゲルニカにかけられた暗幕…

過去と現在が複雑に絡み合う『暗幕のゲルニカ』では、ピカソの恋人ドラ・マールが見たピカソの苦悩とゲルニカの誕生、そして瑤子が信じるゲルニカの力が丁寧に描かれます。長い年月を経て二人の女性の強い意思と行動が一つの線で結ばれるのです。

 

※現在ゲルニカが展示されているソフィア王妃芸術センターはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

『たゆたえども沈まず』-ゴッホと浮世絵 

日本人画商林忠正はフランスで二人の兄弟と出会います。

それがフィンセント・ファン・ゴッホと弟のテオ。フランスで起こった一大ムーブメント「ジャポニズム」。そのジャポニズムの立役者ともいえる忠正が信じたゴッホの才能。

一方でゴッホの絵はゴッホ生きている間に評価されることは無く、その事実がゴッホ自信を傷つけ、そしてゴッホの成功を信じ献身的に支える弟のテオまでもを飲み込んでしまう。壮絶なゴッホの人生を描く苦しく辛い物語。それでも「たゆたえども沈まず」という言葉に表される強さまでもを描くこの小説に、美しさを感じました。

 

たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2017/10/25
  • メディア: 単行本
 

 

終わりに

今回は作家原田マハさんの小説を10選ご紹介しました。

今回紹介した10選の他にも、紹介しきれなかった沢山の素敵な小説がありますので、是非一度原田マハさんの作品に触れ、美術や仕事、暮らしの中の驚きや感動を味わってみてください。

 

貴志祐介の小説のおすすめはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

 ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村