ポルトガル語といえばポルトガルやブラジルで話されるラテン系の言語。
そんなポルトガル語ですが、実は日本語といている部分があるとの噂があるのです。
ポルトガル語と日本語が似ているなんて信じられない!と感じてしまうのですが、この噂の真相を確かめるべく、今回は、「ポルトガル語は日本と似ているのか」についてご紹介します。
- ポルトガル語は日本語に似ている?-日本語に大きな影響を与えたポルトガル語
- ポルトガル語はラテン系のロマンス諸語
- 日本語は仲間がいない言語
- 違うが似ている文法-ポルトガル語と日本語の不思議
- 似ている単語-ポルトガル語由来の日本語は多くある
- 発音は意外と似ているポルトガル語と日本語
- 終わりに
ポルトガル語は日本語に似ている?-日本語に大きな影響を与えたポルトガル語
ポルトガル語と日本語は似ているのか、ですが、一言で言うと「似ていないが、似ている」です。
ポルトガルは古くから日本との関係がある国で、実は特に語彙の面でポルトガル語は日本語に様々な影響を与えました。また、驚くことに、発音に関しても少し似ているところもあるのです。
この記事ではそんなポルトガル語と日本語について、文法、語彙、発音の3つの視点から、「何が似ていなくて何が似ているのか」をご紹介します。
※筆者はブラジルポルトガル語を話すので、この記事の内容はポルトガルのポルトガル語とは異なる部分があります。
ポルトガル語はラテン系のロマンス諸語
ポルトガル語はヨーロッパのポルトガルや南米のブラジル、アフリカのサオトメプリンシペなど12の国と地域で話される言葉です。
言語としてのグループ分けでは「ロマンス諸語」に分類されます。ロマンス諸語とは、元々ローマ帝国で使用されていたラテン語が派生してできた言語のこと。いわゆるラテン系の言語です。
ロマンス諸語の代表的な言語はポルトガル語、スペイン語、イタリア語、フランス語、ルーマニア語があり、小さな言語ではカタルーニャ語、ガリシア語、ロマンシュ語などがあります。
※ロマンス諸語についてはこちら
日本語は仲間がいない言語
日本語のグループ分けですが、実はバスク語と並んで世界で唯二つ日本語は他に仲間がいない言語だといわれています。
つまりどのグループにも属していないのです。そしてその見地に立つと日本語に似ている言語と言うのは無い、ということになります。
一方で、琉球語が日本語の一派だとする説もあり、その場合には日本語グループの中に日本語と琉球語が存在することになります。
どちらにせよ、ポルトガル語と日本語は全く異なった言語だということになります。
違うが似ている文法-ポルトガル語と日本語の不思議
文法は基本的には大きく異なります。例えばポルトガル語はSVO(主語、動詞、目的語)の順番で文を作るのですが、日本語はSOV(主語、目的語、動詞)の順番で文章を構築するのが普通です。
例えば、「私はパンを食べる」はポルトガル語では「Eu como pao(私 食べる パン」となり、日本語とは全く異なる語順となるのです。
一方で少ないですが、似ているところもあります。
例えば、「どこにあなたは住んでいますか?」と聞く場合、ポルトガル語では「Onde voce mora?(どこに あなたは すんでいるの?)」となり、同じ語順となります。
英語の場合、「Where do you live?」のように、「do」という単語をくっつける必要がったりと、ややこしいのですが、ポルトガル語は日本語の感覚で文を作ることができます。
とは言え、ポルトガル語には主語による動詞の活用があるのに対して日本語は「未然、連用、終止、連体、仮定、命令」のように、動詞にくっつく語によって動詞が変わったりと、大きく異なっているといえます。
同意を求める「ね?」
日本語と文法的に大きく異なるポルトガル語ですが、日本語とすごく似ているところが1つあります。それは、同意を求めるときに「ね?」ということ。
例えば、日本語では、「これ、美味しいよね?」と同意を求めるときに最後に「ね」といいます。英語では「It is delicious, isn't it?」となります。そしてポルトガル語では、「Esta bom, ne?」となるのです。
世界に数多ある言語の中で、「ね?」と同じ単語で同意を求めるって、面白くありませんか? 実はこの「ne?」ですが、本来は「Nao e?」という言い方だったのです。それが「なお え?」と言うものを省略して「ね?」となったのです。
似ている単語-ポルトガル語由来の日本語は多くある
外来語というと、英語が起源だという印象があります。例えば、「コンセンサスを得る」、「アポを取る」など、元々英語だった言葉を日本として使用していたりします。
ただ、日本語のカタカナ語の中には、多くのポルトガル語起源の言葉があるのです。
例えば、「パン」はポルトガル語の「Pao」からできた単語。他にも「カステラ」、「合羽」、「カルタ」、「キリスト」、「ピン」、「金平糖」、「襦袢(じゅばん)」など、すでに外来語ではなく日本語として認識されている言葉もポルトガル語が起源だったりするのです。
ポルトガルと日本の関係
なぜ、ポルトガル語由来の日本語が多くあるのかと言うと、大航海時代の16世紀(1500年代)前半にポルトガル人が日本にたどり着き、貿易を行ったから。所謂「南蛮貿易」です。このポルトガル人の日本到着の影響で日本にキリスト教が伝わり、また、種子島には鉄砲が伝来しました。
ポルトガル人との交易を行った日本には、多くのポルトガル人が渡来しました。安土桃山時代には織田信長と豊臣秀吉が、南蛮貿易を推奨し、ポルトガルとの交易がますます発展したのです。
そんな人の交流、文化の交流によって、ポルトガル語の語彙が日本でも使用されるようになったのです。
発音は意外と似ているポルトガル語と日本語
ポルトガル語の発音は意外と日本語に似ています。
母音は日本語と同じく「a, e, i, o, u」の5つに二重母音、鼻母音の音が加わります。ただし、二重母音と鼻母音は使い分けれなくてもそこまで問題にはなりません。(ポルトガルのポルトガル語には狭母音や曖昧母音なども有ります)
アルファベットの読み方はほぼローマ字読み。発音によってアクセント記号がついたりして、口の形が変化したりします。代表的な例はおじいちゃん、おばあちゃんを表す「avô」、「avó」という単語。
Oが帽子を被っている「avô」がおじいちゃんを表し、アヴォー(口をすぼめる)と発音します。
Oが髪を結んでいる「avó」はおばあちゃんを表し、アヴァー(口を広げる)と発音します。
このように、少し難しい発音もあるのですが、基本的には日本語のような発音で問題ありません。
Rが「は行」になりHは発音しない
ポルトガル語の特徴として、Rが「は行」になるというものがあります。
例えば、Rosa(バラ)は「ほーざ」と発音します。サッカー選手のロナウジーニョはポルトガル語の発音なら「ほなうじーにょ」です。
また、Hは発音しません。広島なら「いろしま」となります。
このように、ローマ字読みではないところも有るにはあるのですが、基本的にはローマ字読みで対応することができます。
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ありがとうのポルトガル語起源説
発音といえば、ポルトガル語でありがとうは「オブリガード」といいます。オブリガード、おぶりがーど… ありがーと、ありがとう!
オブリガードとありがとうって似てますよね! 実はありがとうはポルトガル語由来の言葉なんです!
といわれることも有りますが、ポルトガル語が伝来したのは16世紀。それ以前の文献からも日本語の「ありがとう」の語源「有り難し」が使用されているので、ありがとうがポルトガル語から来ているということはありません。
とは言え、ありがとう、オブリガード、発音がすごく似ていますよね。全然関係ない二つの言葉が、似た発音を持っていて、しかも同じ意味で使用されている、なんて少しロマンティックな感じです。そして、ポルトガル語と日本語は発音が似ているなーと親近感が湧いてきます。
ありがとうという言葉のポルトガル語起源説が生まれて、それがなんとなく信憑性がありそうに聞こえてくるというのは、日本語の音とポルトガル語の音が本当に似ているからなのでしょうね。
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終わりに
今回はポルトガル語と日本語は似ているのかということをテーマに文法、語彙、発音の面で二つの言語を比べてみました。
この二つは言葉のグループ分けも全く異なっており、全く別の言語なのですが、似ている部分も確かに存在しました。
語彙面では二つの国が歴史の中で深く交わった時があり、その名残が今日にも「外来語」という形で残っていました。悠久の歴史にロマンを感じてしまいます。
また、発音も似ているところもあり、特にありがとうという単語のポルトガル語起源説が出回るほど、発音が似ているのはとても面白いです。
また、○○ね?と聞く聞き方も、日本語、ポルトガル語がとても似ていて、ポルトガル語を聞いたときには何故か懐かしい気持ちになります。
全く異なる言語であるポルトガル語と日本語の比較を通して、二つの国が繋がっている「縁」のようなものを感じました。
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