すみくにぼちぼち日記

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スペイン語とポルトガル語は似てる!?難易度は?-文法, 発音, 語彙の共通点や違いを解説

スペイン語とポルトガル語は似ていると聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

実はスペイン語とポルトガル語は兄弟言語であり、共通点が多い言語です。

一方で、似ているのに違っているところがあったり、難しい部分や簡単な部分も異なっていたりと、似ていない部分もあります。

この記事ではスペイン語とポルトガル語の文法、発音、語彙、難易度を中心に両言語の似ているところと違っているところをご紹介します。

 

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スペイン語とポルトガル語は似てる!?難易度は?-文法, 発音, 語彙の共通点や違いを解説

スペイン語とポルトガル語は同じロマンス諸語というグループに属する兄弟言語です。そのため、文法や文の構造が似通っています。

また、スペイン語もポルトガル語もアラビア語の影響を受けた言語で、どちらの言語にもアラビア語の語彙などが流入しています。

一方で、同じ意味を表すのに異なる単語が使われていたり、同じ単語でも性が異なっていたり、つづり、文法、発音が違っていたりと、異なる部分も多い言語です。

この記事ではスペイン語とポルトガル語の似ている部分、違う部分を例を用いてご紹介します。

 

スペイン語とポルトガル語はラテン系

何故スペイン語とポルトガル語に似ている部分があるのかと言うと、実はこの2つの言語は同じラテン系のグループに属する兄弟言語で、ロマンス諸語と呼ばれる言語の仲間だからです。

ロマンス諸語とは、元々ローマで使用されていたラテン語から派生した言語のこと。大昔、ラテン語の方言として話されていた各言語ですが、長い年月をかけて周囲の他言語の影響を受け、独自の発展を遂げました。その結果、現在ではそれぞれが独自の特徴を持つ言語としてその存在を確立しています。

代表的なロマンス諸語にはイタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ルーマニア語があり、これらの言語は兄弟です。

他にももっと小さな言語もあり、カタルーニャ語、ガリシア語、ロマンシュ語などがその例です。

 

※ロマンス諸語の説明はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

西語・葡語へのアラビア語の影響

スペイン語とポルトガル語はロマンス諸語の中の一言語なのですが、イベリア半島にイスラム国家があった影響で、アラビア語からの影響を強く受け、独自の特徴を持つようになりました。

一方で、ポルトガル語はローマから一番遠かったということもあり、他のロマンス諸語よりも古い文法が残っています。言葉の流行は文化の中心地から始まるので、昔の文法が残るのは中心地から遠い土地であることが多いためです。

この代表例として接続法未来系という活用の使用があげられます。接続法未来系はラテン語でも使用された文法で、他のロマンス諸語では既に使われなくなっていることが多く、接続法を多用するスペイン語もその例外ではありません。

そんな中、ポルトガル語はラテン語の文法である接続法未来系を今尚頻繁に使用する珍しい言語であるといえます。

 

※スペイン語へのアラビア語の影響についてはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

ポルトガル語の日本語への影響

アラビア語から影響を受けたスペイン語とポルトガル語ですが、実は他の言語に影響を与えている例も多くあります。

その代表例がポルトガル語の日本語への影響です。

大航海時代の16世紀(1500年代)前半にポルトガル人が日本にたどり着き、貿易を行いました。所謂「南蛮貿易」です。このポルトガル人の日本到着の影響で日本にキリスト教が伝わり、また、種子島には鉄砲が伝来しました。

ポルトガル人との交易を行った日本には、多くのポルトガル人が渡来しました。安土桃山時代には織田信長と豊臣秀吉が、南蛮貿易を推奨し、ポルトガルとの交易がますます発展。

そんな人の交流、文化の交流によって、ポルトガル語の語彙が日本語へと影響を与えました。

例えば、「パン」はポルトガル語の「Pao」からできた単語。他にも「カステラ」、「合羽」、「カルタ」、「キリスト」、「ピン」、「金平糖」、「襦袢(じゅばん)」など、すでに外来語ではなく日本語として認識されている言葉もポルトガル語が起源だったりするのです。

 

※ポルトガル語の日本語への影響はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

文法-西語と葡語はよく似ている

歴史的にアラビア語の影響があったスペイン語とポルトガル語ですが、言葉の骨格の部分である文法も、語彙の部分もお互いによく似ています。

冠詞、名詞、形容詞に性がある、動詞の活用が主語ごとに変化する、文の作り方など、どちらかの言語が分かっていればもう一つの言語を理解するのは容易であるといえます。

 

名詞に性がある

どちらの言語も名詞に性があり、名詞の性に合わせて冠詞(英語で言うaやthe)や形容詞の性も変更します。

スペイン語: 男性- el pajaro blanco(白い鳥)、女性-la casa blanca(白い家)

ポルトガル語:男性-o pássaro branco(白い鳥)、女性-a casa branca(白い家)

同じ単語でもスペイン語とポルトガル語で性が異なることもあります。

木:スペイン語-el arbol(男性)、ポルトガル語-a arvore(女性)

 

語順-西語も葡語は自由

語順が自由な点もこの2つの言語の共通点。日本語とも似ています。

例えば、「私は日本語で話します」という文を見てみると、スペイン語は主語のYo(私)を、ポルトガル語はEu(私)を何処に配置するのかを自由に決めることができます。また、主語を省略することも可能です。

スペイン語:Yo hablo en japones. Hablo yo en japones.

ポルトガル語:Eu falo em japones. Falo eu em japones

一方で例えば英語は必ず I(私)は最初に来ますし省略もできません。

英語:I speak in Japanese.

 

主語ごとに動詞活用

動詞を主語にあわせて変化させる(活用する)という点もスペイン語とポルトガル語に共通するルールです。

 

現在形の活用

例えば、英語は現在で動詞を活用させるのは三単現のsだけですが、スペイン語とポルトガル語は主語ごとに動詞が変わります。

英語:I run. You run. He/She runs. We run. You run. They run

西語:Yo corro. Tu corres. El corre. Nosotros corremos. Vosotros correis. Ellos corren

葡語(ポ):Eu corro. Tu corres. Ele corre. Nos corremos. Vos correis. Eles correm

葡語(ブ):Eucorro. Voce corre. Ele corre. Nos corremos. Voces correm. Eles correm

※ブラジルポルトガル語ではTuがVoceに、VosがVocesに変わり、活用はEl、Elesと同じ

 

活用の時制

活用の時制は英語で言う現在形、過去形、現在完了形などのこと。

スペイン語はポルトガル語に比べて実際に使用されている時制が少ないという特徴があります。

ポルトガル語にはスペイン語には無い「接続法未来系」という形があるので、スペイン語よりも活用の時制が多くなっています。

 

西語:直説法が10パターン、接続法が4パターンの合計14パターン

葡語:直説法が10パターン、接続法が5パターンの合計15パターン

 

スペイン語では、1単語につき主語による活用6つx14パターン=84種類の動詞の形を、ポルトガルのポルトガル語では1単語につき主語による活用6つx15パターン=90種類、ブラジルのポルトガル語では、1単語につき主語による活用4つx16パターン=64種類の動詞の形を覚えることが必要です。

 

発音-ポルトガル語のほうが母音が多い

スペイン語の母音はa,e,i,o,uの5つで日本語と同じですが、ポルトガル語の母音はa, e, i, o, uの5つと鼻母音という鼻に抜ける音があります。

また、スペイン語ではRの音を巻き舌にすることが多いのですが、ポルトガル語はRの音を(音は違えど)「は行」で発音したりと、音として聞くと全く異なる言語に聞こえてきます。

Vの音は、スペイン語は「ば,び,ぶ,べ,ぼ」の発音になるのですが、ポルトガル語は英語と同じく下唇に上の歯を当てた「ヴぁ,ヴぃ,ヴ,ヴぇ,ヴぉ」となります。

発音面では他にも様々な違いがあります。

リズムはスペイン語はみじん切りのように「た・た・た・た・た」と一定のリズムを刻む(国によって異なることもある)ことが多いのに対し、ポルトガル語のリズムは流れるような、なめらかに歌っているようなリズムです。

 

スペイン語独特の文字 

スペイン語の発音を表すための独自の文字として、「ñ(えにぇ)」という文字があります。

見た目の通り、「にゃにゅにょ」を表すことができる文字で、スペインという言葉のスペイン語「España(えすぱーにゃ)」などの単語に使われます。

ポルトガル語に「にゃにゅにょ」の発音はあるのですが、文字として表す場合は「nh」に母音をつけて「nha」という形で表します。

スペインをポルトガル語で表すと「Espanha」となります。

 

ポルトガル語独特の文字

ポルトガル語の独特な文字として、「ç・ã・õ・â・ê・ô・ó」といった文字があります。

「ç(せじりゃ)」はフランス語などでも使われるのですが、「さ行」をあらわすアルファベットです。

他の「ã・õ・â・ê・ô・ó」などは、母音にアクセント記号がついた形で、それぞれの記号のよって音が変化します。

例えばavôとavóは同じ単語のように見えますが、実は音が異なり、avôは「あヴぉ」、avóは「あヴぁ」となり、それぞれ祖父、祖母を表します。

このように、アクセント記号がつくことで音が変わり、単語によっては意味まで変わってくるのがポルトガル語の特徴です。

ちなみに、スペイン語にもアクセント記号がありますが、スペイン語の場合アクセント記号による発音の変化はなく、音の強弱の変化となります。また、アクセント記号の有無で意味が変わるというのはスペイン語も同じです。

例:Hablo(私は話す)、Habló(彼は話す)

 

語彙-日常で使用する単語ほど異なる

スペイン語もポルトガル語もラテン系の単語やアラビア語系の語彙が混在している点で語彙は似通っているのですが、日常で使用する単語には同じ意味でも異なる単語を用いる場合が多くあります。

例えば、「思う」はスペイン語で「Pensar」ですが、ポルトガル語では「Achar」という単語を使います。

難しい単語はラテン語起源の単語が多く、よく似ています。

例えば、「国際的な」という単語はスペイン語でInternacional(いんてるなしおなる)、ポルトガル語でInternacional(いんてるなしおなう)といいます。

全ての語彙で考えると、スペイン語の語彙とポルトガル語の語彙は7-8割程度共通している、類似性が認められるそうですので、語彙の面ではすごく似ている言語です。

 

西語と葡語の難易度比較-学び易いのは?

ここまでスペイン語とポルトガル語の似ているところを見てきましたが、スペイン語とポルトガル語は、どちらの難易度が高いのでしょうか。

 

勉強し易いスペイン語

発音-C、文法-A、語彙-B、やりこみ度-A

スペイン語の特徴として、発音が簡単で日本人にとってはとっつき易い言語だということが挙げられます。

フランス語などに比べると文法は難しいのですが、ポルトガル語と比べるとほぼ同等の難しさ。

一方で、教材がたくさん出ているので、物理的に勉強し易い言語です。

ポルトガル語よりも難しい点として、主語を頻繁に省く点があり、会話中に誰のことを話しているのかがわからなくなることもあります。ポルトガル語は主語を省くこともできますが、基本的には皆主語をつけて話している印象です。

 

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sumikuni.hatenablog.com

 

※スペイン語おすすめ入門書はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

ポルトガル語は奥が深い

発音-B、文法-A、語彙-B、やりこみ度-A

ポルトガル語の特徴として、「奥が深い」ことが挙げられます

ポルトガル語は発音は鼻母音や独特なリズムから、スペイン語よりは難しいのですが、他の言語と比べると比較的簡単。とっつきやすい言語といえます。

接続法未来系という活用があるなど、文法面では中々難しい言語で、整理された参考書が少なく、検定試験用のテキストを探すのが大変という面でも勉強するのはスペイン語に比べて難しいです。

 

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役立つのはスペイン語?ポルトガル語?

ここまで紹介してきたスペイン語とポルトガル語ですが、役に立つのはどちらなのか、と言うと、結論としては同じくらい役に立ちます。

スペイン語は話されている国が多く、一部地域を除くメキシコ以南のアメリカ大陸及びカリブ海地域、アフリカにも数カ国スペイン語を使用する国があります。また、世界全体で4億2千万人の母語話者がいます。特に経済発展が著しいメキシコでの公用語でもあるため、仕事をする上で武器となる、というところが利点です。

ポルトガル語はポルトガル以外に南米のブラジル、アフリカのサオトメ・プリンシペ、アジアの東ティモールなど世界全体で2億1500万人の母語話者がいます。

南米最大の経済大国ブラジルで使用される言語と言うことで、特にブラジルで働きたいという場合には学んで置きたい言語だといえます。

スペイン語もポルトガル語もどちらも良い所がありますので、興味がある言語、好きな言語を学ぶのが一番かなと思います。

 

※大学の第二外国語の選び方はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

一方ができればもう片方も理解可能か

ここまでスペイン語とポルトガル語の似ているところや違いをご紹介してきました。

スペイン語とポルトガル語はよく似ており、どちらかを話すことが出来れば、もう片方の勉強も比較的やり易くなります。

しかし、どちらかの言語を話せても、勉強すること無しにはもう一方の言葉を理解するのは難しいです。実際、私はスペイン語が出来る状態でポルトガル語の文法を4年勉強してブラジルに言ったことがあるのですが、何を言われているかさっぱり分かりませんでした。

慣れてきたら会話できるようになりましたが、ポルトガル語が0の状態だったとしたら話せるようにはならなかったかなと思います。

ちなみに、ネイティブ話者の場合は、お互いの母語をゆっくり話せば理解できるそうです。

 

終わりに

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この記事では、スペイン語とポルトガル語は似ているのか、どのような違いが有るのか、難しいのはどちらか、など、二つの言語についての類似点や違いをご紹介しました。

スペイン語もポルトガル語も、学ぶのが楽しい言語ですので、興味を持ったときは是非スペイン語やポルトガル語の世界に触れてみてください。

 

※スペイン語とポルトガル語の同時学習についてはこちら

hispalate.hatenablog.com

 

※スペイン語とフランス語の違いはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

※ポルトガル語とフランス語についてはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

 

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