すみくにぼちぼち日記

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似ている外国語-ロマンス諸語の比較(スペイン語、ポルトガル語等)を例にして

スペイン語ポルトガル語は似ている」と、どこかで聞いたことがありませんか?

実はこの2つ、兄弟なんです。

違う言葉同士が似ているという感覚は、兄弟言語がない日本語を母語とする私たちにはイメージしづらい、未知の世界です。今回は、「言葉が似ている」ということについて、ロマンス諸語の事例を用いて考えてみたいと思います。

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似ている外国語-ロマンス諸語(スペイン語ポルトガル語等)を例にして

ロマンス諸語というのは、「ラテン語」という、ローマ帝国時代に使用されていた言語を親に持つ言葉たちのことです。所謂ラテン系の言語。例えば、スペイン語ポルトガル語スペイン語ポルトガル語は、どちらも親がラテン語ですので、一言で言うと兄弟姉妹の関係です。

ちなみに、他にも兄弟がいます。代表的な兄弟はフランス語、イタリア語、そしてルーマニア語です(他にも、カタルーニャ語ガリシア語等の小さな兄弟もいます)。

それぞれ、地理的には別の地域で話される言語で、その国・地域の歴史的背景や周りの地域で使用されている言葉との関係によって、単語、文法、発音などが大きく変化しています。そして、これらのラテン語から生まれた兄弟たちをひっくるめて「ロマンス諸語」と呼びます。

 

言葉の兄弟姉妹について

ラテン語を親に持つ兄弟姉妹言語を「ロマンス諸語」と呼ぶことが分かりましたが、まだイメージがわきません。そこで、彼らの関係性を人間に当てはめて考えてみましょう。

同じ両親から生まれた5人の兄弟姉妹、ルマ、フラ、スペ、ポル、イタのお話。

ルーマニア語(ルマ)

ルーマニア語はロマンス諸語の中でも最も異なった言語です。言語形成初期の段階でほかのロマンス諸語とは隔離された状態で言語が形成されていきました。

例えるなら、小学校入学と同時に親元を離れた少年。

ルマはスポーツを志し、小学校入学と同時に家を出て、他県の強豪少年スポーツ団に入団しました。スポーツ団には寮があり、入寮。周りのチームメイトたちと毎日切磋琢磨しながら、育っていきました。ルマ自身もスポーツ万能、考えることもスポーツのことが多くなり、他の兄弟たちとは異なった雰囲気の青年に育ったのです。

・フランス語(フラ)

フランス語はルーマニア語に次いで周りの言語、特にゲルマン諸語からの影響を強く受けた言語です。

言うなれば中学校から家族で一人だけ私立の学校に入学した子どもでしょうか。

フラは家族と住んでいましたが、中学から私立中学に入学。華やかな校風の学校で、沢山の友達を作り、だんだんと性格や服装も華やかに。大学では東京の有名私大で自分磨きに勤しみ、商社に入社。キャリア組みとして期待されるほど立派に育ちました。

スペイン語ポルトガル語(スぺ・ポル)

スペイン語ポルトガル語は同じイベリア半島の言語ということでお互いによく似ており、元のラテン語の文法もかなり残した言語です。

スペとポルは仲良しで、同じ小学校、中学校、高校を卒業。大学では、学科は異なりますが、県外の同じ大学に入学しました。当然、二人の趣向は良く似ており、兄弟の仲で二人が一番似ているといわれています。しかし性格の違いからエンジニアと科学者して別々の道を歩みました。

・イタリア語(イタ)

イタリア語はローマ帝国の中心、イタリアの地で育った言語。いわばロマンス諸語の本流ともいえる言語です。

イタは長男として実家に残り、家業の手伝いをしています。代々続く家系で、大黒柱としての教育を受け、実家から大学に通いました。両親の一番近くで育ったこともあり性格は両親とそっくりに。伝統を守る硬派な人間に育ちました。

 

彼らは兄弟姉妹ながらも様々な環境で育ち、現在の姿は大きく異なっています。

特にルマは幼少の頃から他の兄弟とは異なる環境で育ったため、その性格の違いはとても大きくなりました。一方、スペとポルはずっと同じ環境で育ち、お互い趣味趣向がそっくりですが性格は違います。イタは一番両親のそばに居たため周りの影響をあまり受けずに育ちました。そしてフラは華やかな環境に影響され、各々独自のアイデンティティを形成したのです。

一方で、芯となる部分である、体や顔などは兄弟姉妹ですので皆どことなく似ています。これは生まれもった性質で、外部環境からの影響が出づらい部分だったのです。

 

兄弟言語の特徴

兄弟言語として似ているというのは、芯の部分のこと。人間で言う顔や体です。言語では、語彙や文法となります。周りからの影響を受けようとも、この核の部分はラテン語の特徴を維持している言語が多いのです。

似ていないのは発音です。人間では性格でしょうか。発音に関しては一番似ているスペイン語ポルトガル語でさえ大きく異なります。母音の数が違ったり、子音の読み方が違ったり、巻き舌があったりなかったり。。。発音はどの言語も大きく異なっています。

一方で、似ているとはいえ、文法や語彙も他の言語の影響も受けています。核の部分は保持しているのが文法や語彙ですが、別の言語の語彙が流入したり、文法の枝葉部分が少しずつ変わっていたり。もともとあった規則がなくなっていたり、はたまた、もともと無かった規則が追加されていたり…周りに影響されて違いが出てくる部分が人間で言う趣味趣向に当たるのです。

 

各言語が周りの環境から受けた影響

スペイン語ポルトガル語にはアラビア語の語彙が多数流入しています。

これはスペインが700年間イスラム系の国に支配されていたからです。一方、文法の部分ではもとのラテン語の形をかなり保っています。例えば、主語の省略を頻繁に行うスペイン語ラテン語の形質を受け継いでいますし、「接続法の未来」という時制を残しているポルトガル語もその面でラテン語の形を維持しています。

フランス語を話す地域の近くにはゲルマン系の言語を使う人々が沢山住んでおり、フランス語にはゲルマン系の影響が強く残っています。発音、語彙の部分でもですが、文法への影響が色濃く、他のラテン系の言葉に比べて語順が大切な言語=英語に近い言語です。主語の省略も英語同様できませんが、その分動詞の変化(動詞の活用、英語で言う三単現のs)が簡略化されていたりします。

兄弟言語であっても、まったく異なった環境にいる場合は類似点自体が減少していきます。例えばルーマニア語ルーマニアの近くにはロマンス諸語を話す地域が無く、長い間周りの国々の言葉、特にスラブ系の言語の影響を受けてきました。その為、核となる文法や語彙の部分でも他の言語の特徴を強く見ることができます。

イタリア語に関しては、宗教や商業の中心的な国ということで、他言語からの借用語は多く流入していますが、文法構造の面では、もともとのラテン語の構造を比較的しっかり保っています。

 

似ているというのは日本の方言くらい?

では、似ている似ているといっても、どのくらい似ているのでしょうか。例えば、津軽弁と宮崎弁くらいの違いなのか、若しくは日本語と韓国語くらいの違いなのか。はたまた大阪弁と神奈川弁くらいの違いなのか…

ロマンス諸語の中でもとても良く似ているといわれる、スペイン語ポルトガル語を比べてみると、その似ている度合いは、ずばり、

現代日本語と、古文の日本語くらい似ています

古文を読んだとき、なんとなく分かるけど、なんかわかんない。そんな感じを味わったことはありませんか?ただ、勉強すればすぐに分かるようになるというのも、ロマンス諸語の相互関係に似ています。

一方で、津軽弁と宮崎弁の違いと同じくらいの違いなのが、キューバスペイン語ウルグアイスペイン語の違いです。他にも、ジュネーブのフランス語と、ケベックのフランス語も同じくらいの違い、また、ポルトガルポルトガル語とブラジルのポルトガル語もこの関係といえます。

大阪弁と神奈川弁の違いは、スペインのマドリッドスペイン語と同じくスペインのグラナダスペイン語くらいの差です。

そして、日本語と韓国語の差と等しいのは、韓国語に日本語の借用語が多いことも考慮すると、英語とフランス語の違いくらいかなと思います。

英語は上のお話で例えると、中学から私学へいったフラの親友です。兄弟姉妹ではないですが、長い間一緒にいたため、フラの趣味趣向と良く似た趣味趣向を持つようになりました。言語で言うと、「フランス語の語彙を沢山借用したゲルマン系の言葉」が英語という位置づけになります。

 

※英語へのフランス語の影響についてはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

言葉が似ている例

では、実際にどのくらい外国語同士で似ているのかをスペイン語ポルトガル語を例にして考えてみましょう。

①私は日本出身です。

スペ:じょ そい で はぽん.(Yo soy de Japon)

ポル:えう そう じ じゃぱお.(Eu sou de Japao)

発音はまったく似てないですね。ただ、文章の構造は似ています。

Yo=私=Eu、soy=です=sou、de=de、Japon=日本=Japao

②私の名前は太郎です。

スペ:み のんぶれ えす たろう(Mi nombre es Taro)

ポル:お めう のーみ え たろう(O meu nome e Taro)

こちらも音が違いますが、文章の構造はほぼ同じです。

Mi=私の=O meu、nombre=名前=nome、es=です=e、Taro=太郎=Taro

 

このように、単語や音の観点から見ると、発音や単語の形が異なっていますが、文章の核である文の構造はほぼ同じなのです。

 

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各国言語の比較についてのおすすめ記事

ここまで似ている言語についてご紹介しました。

それぞれの言語について、文法や語彙、発音などの違いや特徴を詳しくまとめた記事がありますので、言語同士の比較をより詳しく知りたいという場合は下記の記事をご参照ください。

 

フランス語とスペイン語についての比較はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

スペイン語ポルトガル語についての比較はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

ポルトガル語とフランス語の比較はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

スペイン語と英語の比較はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

フランス語と英語の比較はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

ポルトガル語と英語の比較はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

ポルトガル語と日本語の比較はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

まとめ

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この記事では、言葉が似ているというのはどういうことかという観点から、言葉について考えてみました。

①似ているのは兄弟だから

②兄弟であっても周りの環境で違い(独自の味?)が出てくる

③一番違うのは発音。似ているのは語彙・文章の構造。

④似ている度合いは、「ロマンス諸語の似ている度=現代日本語と古文の似ている度」

人間であっても、言語であっても、兄弟姉妹間で似ていることもあれば、似ていないところもあります。そんな違いを楽しみながら、言語を学んでみると、また新たな発見と出会うことができるかもしれません。

 

スペイン語アラビア語の関係はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

※多言語話者の言葉の使い分けについてはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

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