ポルトガル語とフランス語は似ていると聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実はポルトガル語とフランス語は兄弟言語であり、似ているところが多い言語です。一方で似ているのに違っているところがあったり、難しい部分や簡単な部分も異なっていたりと、似ていない部分もあります。
この記事ではポルトガル語とフランス語の文法、発音、語彙、難易度を中心に両言語の似ているところと違っているところをご紹介します。
- ポルトガル語とフランス語は似てる!?難易度は?-文法, 発音, 語彙の似ている部分や違いを解説
- 葡語と仏語はラテン系
- ポルトガル語にはアラビア語の影響
- フランス語はゲルマン諸語の影響
- 葡語と仏語 文法面は似ている
- 似てる部分もある葡語と仏語の発音
- 日常で使用する語彙ほど異なる
- 葡語と仏語の難易度-学び易いのは?
- 役立つのはポルトガル語?フランス語?
- 終わりに
ポルトガル語とフランス語は似てる!?難易度は?-文法, 発音, 語彙の似ている部分や違いを解説
ポルトガル語とフランス語は同じグループに属する兄弟言語です。
そのため、文法や文の構造が似通っているのですが、一方で、ポルトガル語へのアラビア語の影響やフランス語へのゲルマン諸語の影響により大きく異なっている部分もあります。
この記事ではポルトガル語とフランス語の似ている部分、違う部分を例を用いてご紹介します。
葡語と仏語はラテン系
何故ポルトガル語とフランス語に似ている部分があるのかと言うと、実はこの2つの言語は同じラテン系のグループに属する兄弟言語で、ロマンス諸語と呼ばれる言語の仲間だからです。
ロマンス諸語とは、元々ローマで使用されていたラテン語から派生した言語のこと。大昔、ラテン語の方言として話されていた各言語ですが、長い年月をかけて周囲の他言語の影響を受け、独自の発展を遂げました。その結果、現在ではそれぞれが独自の特徴を持つ言語としてその存在を確立しています。
代表的なロマンス諸語にはイタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ルーマニア語があり、これらの言語は兄弟です。
他にももっと小さな言語もあり、カタルーニャ語、ガリシア語、ロマンシュ語などがその例です。
※ロマンス諸語の説明はこちら
ポルトガル語にはアラビア語の影響
ポルトガル語もフランス語もロマンス諸語の中の一言語なのですが、長い歴史の中で、周りの国々との関わり、他言語からの影響のため、独自の特徴を持つようになりました。
ポルトガル語の形成に大きな影響を与えたのはアラビア語で、ポルトガル語の語彙にアラビア語の単語が浸透し、現在でも多くのアラビア語起源の単語が使用されています。
またローマから一番遠かったということもあり、ポルトガル語では他のロマンス諸語よりも古い文法が残っています。言葉の流行は文化の中心地から始まるので、昔の文法が残るのは中心地から遠い土地であることが多いためです。
この代表例として接続法未来系という活用の多用があげられます。接続法未来系はラテン語でも使用された文法で、他のロマンス諸語では既に使われなくなっていることが多く、接続法を多用するスペイン語もその例外ではありません。
そんな中、ポルトガル語はラテン語の文法である接続法未来系を今尚頻繁に使用する珍しい言語であるといえます。
※ポルトガル語の日本語への影響はこちら
フランス語はゲルマン諸語の影響
フランス語はケルト系の言語やドイツなどで使用されているゲルマン諸語の影響を強く受けた言語です。
特にゲルマン大移動(300年から700年)でフランスに成立したフランク王国時代の言語であるフランク語は今でもフランス語に強い影響を残しています。一方で、イタリアに近い南フランスでは、口語ラテン語に近い言語が長く話されていました。
その後中世になると、北部はドイツ語が強く影響した言語であるオイル語、南部はオック語と別れ、他の方言も多く使用されるようになりました。
現在では標準フランス語が確立されており、標準フランス語がフランス、アフリカの一部の国、カナダのケベックなどで使用されており、それぞれの地域でまた他の言語の影響を受けながら変化し続けています。
そんなフランス語ですが、フランス語の語彙の中のゲルマン系言語由来の語彙は約400単語と言われています。特に公共生活や、国家組織、行政、軍事関係、武器の名称などでゲルマン系の単語が使われています。
葡語と仏語 文法面は似ている
歴史的に色々な言語の影響があったポルトガル語とフランス語ですが、どちらもラテン語から派生した言語と言うことで、言葉の骨格の部分である文法はよく似ています。
冠詞、名詞、形容詞に性がある、動詞の活用が主語ごとに変化する、文の作り方など、どちらかの言語が分かっていればもう一つの言語を理解するのは容易であるといえます
名詞に性がある
どちらの言語も名詞に性があり、名詞の性に合わせて冠詞(英語で言うaやthe)や形容詞の性も変更します。
ポルトガル語:男性-o pássaro branco(白い鳥)、女性-a casa branca(白い家)
フランス語:男性-le ciel bleu(青い空)、女性-la mer bleue(青い海)
語順-葡語は自由、仏語は制限される
フランス語は語順を重視する点において、ポルトガル語よりも英語と似た部分(ゲルマン諸語の影響)があります。
例えば、「私は日本語で話します」という文を見てみると、ポルトガル語はEu(私)の場所はかなり自由に決めることができます。主語を省略することも可能です。
ポルトガル語:Eu falo em japones, Falo eu em japones
一方でフランス語は必ずJe(私)は最初に来ますし省略もできません。
フランス語:Je parle en japonais.
英語もフランス語と同じく語順は決まっており主語を省略することもできません。
英語:I speak in Japanese.
主語ごとに動詞活用-フランス語は退化
動詞を主語にあわせて変化させる(活用する)という点ではポルトガル語とフランス語は似ています。
一方でフランス語は語順が大切で主語を省略できないという特性がある為、英語のように時制の面で動詞の活用が一部退化しています。
現在形の活用
例えば、英語は現在で動詞を活用させるのは三単現のsだけですが、フランス語とポルトガル語は主語ごとに動詞が変わります。
英語:I run. You run. He/She runs. We run. You run. They run
仏語:Je cours. Tu cours. Il court. Nous courons Vous courez. Ils courent
葡語:Eu corro. Tu corres.Ele corre. Nos corremos. Vos correis. Eles correm
※ブラジルポルトガル語でTuとVosはほぼ使用されない
活用の時制
活用の時制は英語で言う現在形、過去形、現在完了形などのこと。フランス語はポルトガル語に比べて実際に使用されている時制が少ないという特徴があります。
仏語:直説法が10パターン、接続法が4パターンの合計14パターンだが直説法の中の単純過去や前過去はほぼ使用されず、接続法の使用頻度も極端に少ない
葡語:直説法が10パターン、接続法が5パターンの合計15パターン
つまり、フランス語では直説法8パターンのみ覚えれば問題ありませんが、ポルトガル語は直説法と接続法合わせて16パターンを全て覚える必要があります。
1単語につき活用6つx15パターンですから、ものすごい量の活用を覚える必要があるといえます。
似てる部分もある葡語と仏語の発音
ポルトガル語の母音はa, e, i, o, uの5つとそれぞれの音に鼻母音という鼻に抜ける音があります。
フランス語の母音はa, i, ou, eu, eu, é, è, o, o, u, an, in, onの13個あります。同じつづりでも、口の形の違いによって違う母音として扱われるなど、発音が日本人にとっては難しく、その点で英語と似ています。
どちらも鼻母音があったり、Rの音を(音は違えど)「は行」で発音したりと、発音面では、ポルトガル語とフランス語は似ている部分もあります。
一方で、会話で話される両言語を聞いた際には、全く異なる言語として聞こえてくるほど。特にフランス語にはエリジオン・アンシェヌマン・リエゾンといった独特な発音規則があるため、その分リズムや抑揚が独特で、ポルトガル語とフランス語の音は全く異って聞こえます。
日常で使用する語彙ほど異なる
ポルトガル語にはアラビア語の語彙が、フランス語にはゲルマン系の語彙が影響していたり、同じ意味を表すものに対して異なる単語が使用されている場合があます。
語彙の差異は特に日常単語で大きいです。
例えば、ベッドはポルトガル語ではCama(かま)ですがフランス語ではLit(り)といいます。
難しい単語はラテン語起源の単語が多く、よく似ています。
例えば、「国際的な」という単語はポルトガル語でInternacional(いんてるなしおなう)でフランス語はInternational(あんてふなしょなる)といいます。
葡語と仏語の難易度-学び易いのは?
ここまでポルトガル語とフランス語の似ているところを見てきましたが、ポルトガル語とフランス語、どちらの難易度が高いのでしょうか。
ポルトガル語は奥が深い
発音B、文法-A、語彙-B、やりこみ度-A
ポルトガル語の特徴として、「奥が深い」ことが挙げられます
ポルトガル語は発音は比較的簡単なのでとっつきやすい言語ですが、動詞の活用の数が多く、多用するなど、文法も段々と複雑になっていくため、奥が果てしなく深い言語です。
また、主語を省くこともあり、会話中に誰のことを話しているのかがわからなくなることもあります。
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フランス語は間口が狭い
発音-A、文法-B、語彙-B、やりこみ度-B
フランス語は、発音が難しい、アルファベットが読み辛い、冠詞や発音の規則がややこしいなど、入り口がとても狭い言語です。
一方で、語順が明確で活用も簡略化されているので、最初の難しい関門さえ突破すれば極めるのはポルトガル語ほどは難しくない言語であるといえます。
また、主語を絶対つける必要がある為、耳が慣れれば会話の主語述語がはっきりしていて、理解し易いのも特徴。
ルールは複雑ですが、例外が少なく、明快な言語です。
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役立つのはポルトガル語?フランス語?
ここまで紹介してきたポルトガル語とフランス語ですが、役に立つのはどちらなのか、と言うと、結論としては同じくらい役に立ちます。
ポルトガル語ポルトガル意外に南米のブラジル、アフリカのサオトメ・プリンシペ、アジアの東ティモールなど世界全体で2億1500万人の母語話者がいます。
一方でフランス語は フランスを始めアフリカ地域でも公用語としている国が多く、母語話者数2億 740 万人と、両言語同じくらいの話者がいます。
ポルトガル語もフランス語もどちらも良い所がありますので、好きな言語を学ぶのが一番かなと思います。
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終わりに
この記事では、ポルトガル語とフランス語のが似ているのか、どのような違いが有るのか、難しいのはどちらか、など、二つの言語についての類似点や違いをご紹介しました。
ポルトガル語もフランス語も、学ぶのが楽しい言語ですので、興味を持ったときは是非ポルトガル語やフランス語の世界に触れてみてください。
※ポルトガル語とフランス語の同時学習についてはこちら
※スペイン語とフランス語の違いはこちら
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