すみくにぼちぼち日記

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スペイン語へのアラビア語の影響について-似ている単語が多い理由とは

スペイン語はヨーロッパや中南米で使用される言語というイメージの言語。実際、そのイメージどおりの言語なのですが、実は、アラビア語と深い関係がある言語でもあるのです。スペインなのにアラビア語?と思うのですが、イベリア半島の長い歴史は、イスラム諸国との関係無しには語ることができず、両言語は深い関わりを持っています。

今回はそんなスペイン語アラビア語の関係についてご紹介します。

スペイン アルハンブラ宮殿

 

スペイン語へのアラビア語の影響について

スペイン語は実はアラビア語の影響を大きく受けた言語です。ラテン系言語として知られるスペイン語ですが、スペインの歴史はイスラムとキリストの文化融合の歴史。二つの文化が互いに交じり合う中で、人々の使用する言語までもがだんだんと影響しあっていったのです。

 

スペインはイスラム国家だった?-800年間イスラム国家だったイベリア半島

スペインはイスラム国家だったことがあります。正確に言うと、スペインと言う国ができる前、イベリア半島(スペインがある半島)には一時期イスラム国家が治める国があったのです。

元々イベリア半島には、イベリア人やケルト人が住んでいました。その後カルタゴイベリア半島を支配したのですが、ローマ帝国ピレネーを越えて侵略を開始し、ローマの属州ヒスパニアとなります。

長らくローマの属州という立場でしたが、ゲルマン大移動と共にゴート族が移動し、イベリア半島を支配、西ゴート王国が形成されます。

一方、アフリカのイスラム国家であるウマイヤ朝は711年、イベリア半島を支配していたゲルマン系の西ゴートを滅ぼします。ここにイベリア半島を支配するイスラム国家が誕生したのです。

その後、約800年もの間、イスラム国家がイベリア半島の大部分を治めました。そして、その800年の間にイスラムとキリストの文化融合していきました。

1492年、カトリック両王カスティーリャ女王のイサベルとアラゴン王フェルナンド)がスペインを征服し、スペインがカトリック国家となります。

このイスラム勢力の支配からカトリック勢力の支配までの一連の動きをレコンキスタと呼びます。

 

スペイン語のおすすめ入門書はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

イスラムとキリスト文化の交わり-他宗教への寛容さが文化融合を生んだ

イベリア半島は激動の歴史の中でイスラムとキリストの文化が融合しました。特にイスラム教は他の文化を受け入れることを是とする宗教だといわれており、イスラム勢力が支配していた800年の間に、イベリア半島独特の文化が醸成されていきました。

長い間イベリア半島を統治していた後ウマイヤ朝は、キリスト教ユダヤ教徒の権利を保護し、文化が融合していったといわれています。

1492年、カトリック勢力がレコンキスタを完了させました。一般的にキリスト教は排他的な宗教で、宗教的な寛容性をイスラム教ほど持ち合わせていません。

例えばキリスト教の十字軍、ユダヤ教徒への迫害、新大陸やアジアでの現地人支配などは、キリスト教の持つ排他的側面を如実に表しているといえます。

一方で、イベリア半島キリスト教勢力下では、意外にもイスラム教徒は公認された異教徒としての権利を保障され、ユダヤ教徒同様一定程度の権利と信仰の自由が与えられました。

このような特殊な環境は、イベリア半島で話される言語にも影響を与えたのです。

 

イスラムとキリストの融合で有名なコルドバの記事はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

アラビア語の語彙を多く吸収したスペイン語

ここまで見てきたようにイベリア半島では様々な文化が混ざり合い、その独特な文化を形成してきました。そして、その混ざり合った文化の一つに言語がありました。

スペイン語という言語は元々ローマ帝国で話されていたラテン語から派生した言葉で、ロマンス諸語と呼ばれるグループに属しています。所謂ラテン系の言語です。

そんなラテン系のスペイン語ですが、実は語彙の面でアラビア語が語源の言葉が多く使用されています。

例えば、スペイン語で油は「aceite(あせいて)」、オリーブは「aceituna(あせいとぅな」と言いますが、これはラテン語系のoleum(オイルの語源)ではなくアラビア語由来の単語が使用されています。

「Algodon(綿)」は、アラビア語の「qutn」がスペイン語に変化する過程で定冠詞alがくっつき「Algoton」となり、更に変化して「Algodon」となりました。英語のCotton、日本語のコットンの語源でもあるそうです。

他にも、「Azucar(砂糖)」、「Naranja(オレンジ)」などがアラビア語由来であり、一説ではスペイン語の語彙の8%ほどがアラビア語由来だとも言われています。

Alを見たらイスラムを感じる

スペイン語の単語でAlから始まる単語はアラビア語由来のものが多いです。と言うのも、Alはアラビア語の定冠詞であり、スペイン語へと変化する過程で定冠詞であるAlがくっついた状態でスペイン語の単語となったのです。

 

スペイン語アラビア語の語彙が多いのはその歴史的背景が理由だった

ここまで見てきたとおり、スペイン語ではアラビア語の語彙が多く借用さえています。そしてその理由は、800年もの間イスラム勢力がイベリア半島を支配したことに起因しており、また、イスラム勢力の宗教的寛容性によって、異なる言語文化が許容されて互いに影響を与えたからだったのです。

 

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終わりに

今回はスペイン語アラビア語の関係についてご紹介しました。

一見、何の関係も無いように見える二つの言葉ですが、実はその背景には深い歴史があり、その歴史の中で互いに影響を与え合っていたため、アラビア語の単語がスペイン語流入していきました。。

言葉の語源というのは、その国が歩んできた歴史の証人でもあります。ですから、言語を学ぶとき、ほんの少しだけ、「この単語の語源は何かな?」と考えてみると、その言語が持つ特有の歴史を感じることができ、さらに言語を学ぶことが楽しくなるのではないかなと思います。

 

※英語とフランス語の関係はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

 

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