家事の分担は誰かと同居している全ての人の永遠の課題。特に同居人が自分ほど家事ができない場合には、その非効率性に見ているだけでイライラがつのることも。また逆に自分が家事が出来なさすぎて同居人の反感を買うことだってあります。
そんなイライラの元凶、家事ですが、実は効率よくこなすための、うってつけの分担方法があるのです。
それが「比較優位」の考え方を用いた家事の割り振りです。
比較優位って? -貿易の必要性の根拠となる理論
比較優位とは、「世界の貿易で生まれる利益を最大にするにはどうすれば良いか」と言う疑問を解決するために考え出された経済学の概念で、一言でいうと「得意なことに従事しよう」と言う考え方のこと。
絶対優位-比較優位の対になる言葉
比較優位の反対派絶対優位という言葉。AとBの生産性を比べて生産性が高い方が優位であるという、一般的なものの優劣をつける時の考え方です。
例えば、日本が100人で車を100台、アメリカが100人で40台生産できるとします。すると車の生産数は全体で140となります。米は日本が100人で100、アメリカは100人で90生産できます。合わせて190です。この時、日本はアメリカに対してどちらも効率が良い生産を行なっていることになり、この優位性を「絶対優位」と言います。
比較優位は比較的得意なことに従事する
一方で、アメリカの車の生産は日本に対して4割の生産性を持ち、お米は9割の生産性です。
つまり、アメリカは日本に対して車も米も生産能力が負けていますが、割合を見ると、日本に対する車と米の生産性は米の方が優っているので、アメリカは米の分野で車に対し「比較優位」であるといいます。世界全体で見ると、両国が得意な分野に従事し、不足分は貿易で補う事で、最大限の生産性を得ることができるようになります。
例えば日本が車の生産に180人、米の生産に20人割くとすると、車は180、米は20生産できます。一方でアメリカは200人全てがお米を生産すれば、お米の生産は合計180となります。
世界全体では、車180、米200生産できるようになり、はじめに見た、どちらもが車も米も生産する場合に得ることができる車140、米190に比べて、全体的に生産数が上がるという結果となります(車は40、お米は10アップ)。
つまり、世界全体の生産効率を上げるためには比較優位の理論使い、「アメリカは米の生産に注力し、車は日本から輸入すべき」となるのです。
家事や仕事も比較優位
比較優位がどのようなものか分かったところで、この理論を家事の分担決めに応用してみたいと思います。
例えばAさんとBさんが家事を行うとき、Aさんは料理1人分を30分、掃除1部屋20分、Bさんは料理1人分50分、掃除1部屋60分かかります。AさんはBさんに対して、料理も掃除も絶対優位にあります。各々が1人で家事を行なった場合には、Aさんは30+20で50分、Bさんは50+60で110分かかります。
この家事を効率よく終わらせるために使いたいのが比較優位。BさんはAさんに対して、料理は6割の生産性、掃除は3割の生産性です。したがって、BさんはAさんとの比較で相対的に得意な料理に注力すべきとなります。
そこで、Aさんは掃除担当でBさんの部屋まで掃除するようになりました。かかった時間は20+20で40分。Bさんは料理をAさんの分まで行います。50+50で100分で料理の完成です。
ここで家事をどちらも各々やっていた時と比較すると、Aさんは料理と掃除で50分かかっていたのが掃除だけを行うことで40分に短縮、Bさんは料理と掃除で110分かかっていたのが料理だけ行い100分となり、2人とも家事の時間を10分ずつ削減することができました。
一見、BさんはAさんに対して料理も洗濯も効率が悪いため、Aさんはどちらも自分でやった方が早くできるように感じますが、比較優位の考え方を取り入れて、Bさんに得意な家事を担当してもらうことで、AさんBさん両方の家事の時間を短縮することができたのです。
家事も習熟すると生産性が上がる
比較優位で家事分担を割り振ったら、後はその家事に注力するだけ。始めは自分のほうが配偶者に比べて料理も掃除も早くできるとしても、家事の割り振りが決まったらぐっとこらえて配偶者の家事を見届けてあげるのがポイントです。
経営学では、生産性が右上がりに増えていくという状況の中で、作業者の習熟度が大きく影響を与えていることが知られています。つまり、生産性は習熟すればするほど高くなっていき、且つ品質も良くなっていくのです。
ですから、家事を割り振ったから心を鬼にして配偶者の家事を見守ってあげると、手際も、質も良くなっていきますので、文句を言うのはぐっとこらえて習熟度が上がっていく様子を観察すると良いと思います。
終わりに
今回は家事の効率化に経済学の理論である「比較優位」の考え方が活用できると言うことを例を用いて見てみました。
今回の場合、AさんとBさんの各々の時間短縮に焦点を当てましたが、家事はその家に住む居住者がみんなで協力するものですので、実際にこの考え方を応用する場合には家庭内のトータルの削減時間で考えてみると良いと思います。
ちなみに、この考え方は仕事でも応用可能です。例えばデータ作りが苦手だがプレゼン資料作りが得意な社員とその逆のデータ作りが得意な社員への仕事の振り方などを比較優位の考え方を用いて考えてみると、効率よく仕事を振り分けることができるようになります。
さて、比較優位の考え方、いかがだったでしょうか。あくまで理論ですので、現実への応用が難しい場合もありますし、同居人が全く家事を行わない場合もありますので一概には言えませんが、1つのアイデアとして是非比較優位の考え方を使ってみてください。
※おすすめなマネースクールの紹介記事はこちら