すみくにぼちぼち日記

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言葉のパレット-多言語話者の言葉の使い分けと練習方法,マルチリンガルの頭の中とは

外国語を話す時、頭の中はどのような感覚になっているのでしょうか。

小さい頃ずっと不思議に思っていたことなのですが、複数言語を話せるようになった今感じているのが、「頭の中に言葉のパレットがある感じ」ということです。

今回はそんな言葉のパレットについて紹介していきたいと思います。

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多言語話者とは

一口に多言語話者といっても、大きく3種類の多言語話者がいます。

まず、生まれた時から多言語使用環境で育ったマルチリンガル

次に生まれた時から多言語使用環境にいるが言語教育の問題からどの言語も十分なレベルで運用ができないセミリンガル。

そして生まれた時は単言語環境で育ったが、ある時期から外国語を学び話せるようになった国語学習者です。

 

マルチリンガル

マルチリンガルの多言語話者は何も考えずに言語を切り替えることができる所謂ネイティブスピーカー。発音や文法面どちらの面でも自由自在に多言語を操ることができます。

特に二か国語話者をバイリンガル、三ヶ国語話者をトリリンガル(トライリンガル)、それ以上をマルチリンガルと呼ぶことが多いです。

 

セミリンガル

セミリンガルとは母語とされる言語の運用がどの言語も低いレベルでのみ実施可能な多言語話者のこと。適切な母語教育を受けることができない環境下で育つことでどの言葉も不完全な状態となります。

セミリンガルの不完全な言語運用の一例として、コードスイッチングと呼ばれる、言語の無意識の入れ替わりが頻繁に起こる現象が挙げられます。例えば、「私はドッグを飼っていてその犬がソーキュートだからすごい幸せ」の様な話し方になります。この場合、同じ単語である犬=ドッグ、すごい=ソー、が脈略なく混用されており、この様なコードスイッチングが頻出する場合、その話者はセミマルチリンガルと考えることができます。

セミリンガルは家庭とコミュニティで異なる言語を話す場合に多く見られ、例えば移民の家族に多い問題です。日本においても日系ブラジル人移民などで子どもがポルトガル語も日本語も少しずつしかわからないなどの問題を抱えていることがあります。

他にも日本人帰国子女などの場合でも、家庭環境や学校環境によっては子どもがセミリンガルとなることもあるため、家庭内での母語教育がとても重要です。

ちなみに、発音面に目を向けるとバイリンガルと同じようにどの言語も流暢な発音となります。

 

③外国語学習者としての多言語話者

国語学習者は多言語話者ではあっても、マルチリンガルの様に母語として多言語を話すのではなく、文法や単語などを勉強した結果様々な言語を話すことができるようになった多言語話者のことを指します。日本人の多くはこの外国語学習者に分類されます。

国語学習者としての多言語話者は勉強して多言語を話すため、その言語ごとの運用能力は、本人の努力に依拠します。一方で、マルチリンガルのように全ての言語を同じレベルで運用することは不可能です。外国語のレベルは母語以上にはならないため、母語能力向上のための研鑽が外国語能力向上には不可欠です。

また、発音面においては余程の努力がない限りネイティブの発音に近づけるのは難しいため、外国語の発音が気になる場合は外国語の聞き込みがとても重要です。

 

母語教育についてはこちら

母語教育の必要性と英語学習-外国語は母語を超えない - すみくにぼちぼち日記

 

多言語話者の頭は言葉のパレット

多言語話者の何たるやが分かったところで、今回は③外国語学習者としての多言語話者がどのように言語を使い分けているのかをご紹介します。

冒頭で多言語話者の頭には言葉のパレットがあると紹介しましたが、言葉のパレットとはどのようなものなのでしょうか。

 

パレット

一度、中学の美術の授業を思い浮かべてみてください。目の前に真っ白なパレットが置いてあり、仕切りの中に様々な色の絵の具を注していきます。

パレットはカラフルに染まり、一つの色を選んで筆を浸し絵画に色をつけます。次の色に変えるときには筆洗の水に筆を浸し、洗ってから次の色に絵の具を浸します。洗いが甘いと絵の具の色が混じりますが、しっかり洗うと綺麗に色をつけることができます。

 

言葉をパレットに

これを外国語を話す時の頭に置き換えてみます。

頭の中には白いパレットが入っており、言葉を勉強するとこのパレットに絵の具が注されます。この絵の具が言葉です。話せる言語が4つであれば、パレットには4色の絵の具がある状態であり、上手な言語ほど濃い色になっていきます。

 

筆の洗浄と頭のリセット

自分がいる国や話す相手によって言葉を変えるのですが、このときに一度頭をリセットします。このリセットの作業が筆洗に筆を浸し絵の具を落とす作業です。時間をかけて筆を洗うと色は混じらなくなります。

一方で頻繁に違う言葉で話す状況になると、筆の洗いが甘くなり、だんだんと濃い色(得意な言語)が薄い色(苦手な言語)に混じりこみ、薄い色が侵食されます。

これが、外国語を話すときに別の言語が混ざりこんでしまうという現象です(若しくは言葉が出てこなくなる現象)。

この現象を防ぐためには、言葉を使って、次の言語に切り替えるときに、頭をリセットすることが必要。つまり、今話そうとしていない言語を一度忘れることが大切です。その為には、繰り返し言葉を切り替える練習が不可欠です。

 

言葉の侵食-コードスイッチングが上手くできない

言葉の侵食というのは、例えば英語で何か話しているときに、急にスペイン語の単語が頭の中に現れ、それからスペイン語がパレットの仕切りを超えて溶け出すように頭を埋め尽くすというイメージです。

この現象は、普段スペイン語を話している相手と急に英語で話さなくてはならなくなった場合などに起きやすいため、言葉を綺麗に話すためには、話す相手によって使う言語を変えるというのが有効です。

帰国子女、両親の母語が異なる子どもや移民の子どもがコードスイッチング(言語の混ざり)を起こしてしまう1つの理由として、人に合わせた使用言語の変更ができていないことが挙げられます。

例えば、父親/母親が英語と日本語の両方で子どもと話してしまう家庭では、子どもの頭は英日言語が入り混じっている状態となるため言語教育の観点からは良い環境とは言えません。

父親とは日本語、母親とは英語、兄弟間は日本語、家族全員で話すときは英語など、きっちりとしたルールで言葉を運用することが、子どもがセミリンガルとなるのを防ぐためには有効だと言われています。

 

セミリンガルについての解説と防ぎ方はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

話せる言葉を増やすには

話せる言葉を増やすには、パレットの上の絵の具の種類を増やすとともに、その色を濃くする作業と、絵の具を塗り筆を洗いまた絵の具を塗るという練習を繰り返す必要があります

そのためにはまずは一つの言語を話す練習を行い、話せるようになったら頻繁に言葉を切り替える練習を行うことで、より正確に言葉を切り替えることができるようになります。

この言葉の切り替えを上手く行うためには、切り替えた後、これまで話していた言葉を一度忘れることが重要です。ですから、複数言語の使い分けは、いかに話していない言葉を忘れるか、その忘れる練習が不可欠であるといえます。

 

※英語を話せるようになるための練習方法はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

普段使いでは人ごと場所ごとで言葉を決める

言葉を覚えて、切り替えの練習をしても、人間の脳は完璧じゃないのか、普段多言語を使っている中で言葉が出てこなくなったりします。

言葉が出てこなくなる現象を防ぐためには、話す相手、話す場所、などで使う言葉を決めておくのが効果的です。

例えば、子供とは日本語、Aさんとは英語、Bさんとはスペイン語、のように言葉を決めると、頭がかなり楽になります。

他にも、場所で使い分けるという方法もおすすめ。学校では英語、家では日本語、職場ではスペイン語などなど、一定のルールに基づいて言葉を変えてあげると、頭の混乱も最小限となります

 

終わりに

今回は多言語を話す時の頭の中の雰囲気についてご紹介しました。如何だったでしょうか。

頭の中の言葉はそれぞれパレット上の異なる仕切りの中に存在しており、使いたい言葉を使いたい場面で切り替えながら使います。

しかし、頭の切り替えがうまくできないと、それぞれの言葉が混ざり合います。

レベルの高い言葉がレベルの低い言葉を侵食するという現象がおきるため、外国語学習者にとってはこの言葉の侵食という頭の中の洪水をいかに乗り越えるかが、レベルアップのためにとても重要なテーマなのです。

 

 

トリリンガルになるための練習方法はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

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