おうち英語を進める時に注意したいのが子どもの頭の中にしっかりとした母語基盤を作ること。
この記事では言語の切替「コードスイッチング」の紹介と、バイリンガル子育てで失敗しないための注意点をご紹介します。
- バイリンガル子育てで失敗しないための方法-おうち英語はコードスイッチングを意識してセミリンガル, ダブルリミテッドを回避する
- バイリンガルとセミリンガル(ダブルリミテッド)
- セミリンガルの問題点とは
- コードスイッチング
- 子どもによっては早期外国語教育は適さない
- 終わりに
バイリンガル子育てで失敗しないための方法-おうち英語はコードスイッチングを意識してセミリンガル, ダブルリミテッドを回避する
子どもがバイリンガルって、憧れます。小さな頃から海外で生活していると家庭環境とは別に外部環境の影響でバイリンガルとして成長する可能性があり、また、両親の国籍が異なる場合にも、バイリンガルとして育つ可能性が高いです。
一方で、日本で生活している日本語話者の間に生まれた子どもであっても、近年は早期英語教育やおうち英語などを実践し、複数の言葉を子どもに習得させる、という動きが活発となっています。
そんなバイリンガル子育てですが、実は気をつけるべきことがあります。それがコードスイッチングと呼ばれる現象です。
バイリンガルとセミリンガル(ダブルリミテッド)
二ヶ国語を話すことができる話者のことを一般的にバイリンガルと呼びます。
厳密には二ヶ国語を母語としている場合をバイリンガル、母語は一ヶ国語で外国語として別の言語を話す場合は外国語学習者と呼びます。
本稿では、分かりやすく表現するため、バイリンガルと外国語学習者の区別はつけずバイリンガルと表記します。
セミリンガル(ダブルリミテッド)とは、二ヶ国語を話すことができる話者の中で、二つのうちどちらの言語も十分なレベルで話すことができない話者のことを指します。移民の子どもなどがセミリンガルになりやすいといわれています。
セミリンガルがどのレベルを指すのか、という指標は無いのですが、第1言語(母語)も第2言語も年齢レベルに達していない状態や特抽象的思考ができず、複雑な表現ができないという点で十分な言語能力に達していない場合、セミリンガルとであると考えることができます。
セミリンガルの問題点とは
セミリンガルは言語運用という面で十分なレベルに達していない状態にあるのですが、その問題点として自分の気持ちを言葉で表現できないことや言葉の混ざりが発声してしまうことなどが挙げられます。
自分の気持ちを上手く表現できない場合には、鬱屈とした気持ちなどを言葉にすることができず、それを暴力で表現してしまったり、ストレスが溜まりチック症が出てしまったりと、感情の表現ができないという点で問題が発生することがあります。
また、高レベルでの言語の運用ができないことで、学習に遅れが出てくるといった問題もあるといわれています。
コードスイッチング
コードスイッチングという言語学の言葉あります。コードスイッチングとは、複数言語を話しているときに、脳が言語Aから言語Bへと切り替わる現象です。実はこのコードスイッチングが上手く実施できるように練習することはバイリンガル教育では必須なのです。
多くの場合、人間は母語を使って難しい事柄を理解し、思考します。つまり、母語と言う柱が人間の頭には必須なのですが、バイリンガル環境で育った場合、母語の形成が上手くできないことがあるのです。すると、日本語を話している間に別の言語の言葉が混ざり込んだりという現象が起こります。
また、その現象は一定の規則を持ったものではなく、例えば、「私はキャットを飼っていてその猫がソーキュートだからすごい幸せ」の様な話し方になります。この場合、同じ単語である猫=キャット、すごい=ソー、が脈略なく混用されています。
母語の確立が最優先
言語獲得で一番重要なことは、本人が何かを思考するときに、どの言葉を使うのかと言うことを定めてあげること。例えば日本語母語話者であれば、難しいことを考えるときには日本語を使用します。
私も4ヶ国語を話しますが、ものを考えるのは日本語です。確かに、聴いて話すという一連の流れは外国語で話すときは日本語を介さず話しますが、論文を書いたり、仕事でものを考えたり、難しい事象を理解しようとするときには母語である日本語を使用します。
母語という一本の柱があることで、どの言語もあやふやと言うセミリンガルの状態になることを回避することができます。
※母語の重要性はこちら
シチュエーションごとの言語の使い分け
コードスイッチングを上手く行えるように練習するためには、シチュエーションごとの言葉の切替の練習を実施するのが効果的です。
例えば、母親とは日本語、父親とは英語、学校では英語、家庭では日本語、友達とは英語、など、しっかりと言語を使う環境や相手を決めて、その環境・話し相手とは常に同じ言語を使うことで、子どもの頭の中で言葉が混乱しないようにする鍵であるといえます。
また、言葉と言うのはコミュニティで学ぶものだといわれています。例え母親と日本語で話していたとしても、所属するコミュニティが英語環境であれば、必然的に英語のほうが日本語よりも上手くなっていくのです。これは、両親が関西弁で話していても東京の学校に通えば東京弁になるのと同じ感覚です。
ですから、コミュニティで使用していない言語の能力を維持するためには、家庭の中で、その言語の学習を行ったり、テレビでの会話を聞かせたりと、言語と触れ合う環境を作ることが重要であるといえます。
※子どものおうち英語の実践についてはこちら
子どもによっては早期外国語教育は適さない
多言語学習は、確かに小さな頃から実施することで効果が高まるといわれていますが、子どもによってはその環境がストレスとなることもあります。
その場合には、無理にバイリンガル教育を行うのではなく、一度多言語でのコミュニケーションを止めてみるというのも1つの方法です。
早期学習では確かに外国語を身につけるのが早くなりますが、4ヶ国語程度であれば中学くらいからの外国語学習で十分身につきます。私自身も、小学校4年生から英語を学び、大学でスペイン語、ポルトガル語、フランス語を身につけて、それらの言語を使用しながら仕事をしています。
ですから、子どもの適性に応じたバイリンガル教育の実施を目指すのが良いのではないかなと思います。
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終わりに
今回はバイリンガル子育てについて、コードスイッチングという言語学の概念を用いて紹介しました。
環境や子どもの特性などで、上手く行く場合や上手く行かない場合もあると思いますが、何よりも大切なことは母語の確立ですので、焦らずじっくりと言葉の学習を実施することが一番かなと思います。
※言語の使い分けについてはこちら