金属加工には様々な種類がありますが、その中で切る・削る・穴をあけるという加工を切削加工と呼びます。
この記事では、主要な切削加工の一つ「コールドソーでの金属切断」の切削条件をご紹介します。
コールドソーの切削条件-金属切断オンライン切断とオフライン切断
金属の丸鋸切断では、切削条件の中でも特に切削速度(Vc)と1刃当たりの切削量(Fz)が重要なパラメーターです。
それぞれの値を求める公式は下記の通りです。
V=πDN/1000
Fz=1000F/NZ
D:鋸外径 N:回転数RPM Z:刃数
ここからは金属切断での一般的な切削条件をご紹介します。
機械の種類と条件
コールドソーを使用する機械には、造管ラインで使用されるオンライン切断機と、バー材やパイプの寸法を決めるオフライン切断機があります。
鋸の径が被削材や機械によって異なるため、基準となる条件は回転数ではなく回転の速度である切削速度を使います。
走行切断機(オンライン)
オンラインの切断機は、走行切断機と呼ばれる機械で、鋼のコイルから鋼管を製造するラインで使用されます。
鋼管の用途によってパイプ内部で溶接ビードを嚙みこむ切断と溶接ビードが内部にくっついたままの切断があり、ビードを噛みこむ切断では耐衝撃性が高い仕様、ビードが内部にくっついたままのパイプ切断では耐摩耗性が高い設計のものを使用します。
走行切断機の切断ではコールドソーだけでなく、メタルソーやプレスカッターも使用されます。
走行切断機 切削条件
オンラインの切削条件は、V=250m/minから550m/minなどの高周速の領域での切断です。
簡易式でも公転式でも同じくらいの周速となりますが、機械によってはメタルソー専用機で周速が200m/minまでしか上がらない機械もあります。
このような機械ではコールドソーは使用できず、メタルソーを使用します。
送りは機械のラインスピードの範囲でできるだけ落とすのが理想的。
切削肌は基本的に低地型のような美麗さは期待できません。
オフライン切断機
オフラインの切断機は、中実材やパイプの寸法決めを行う機械です。
中実材用の切断機ではサーメットチップの使い切りタイプを使用することが多く、パイプ切断ではサーメットと超硬コーティングの鋸を使用する場合があります。
コーティング品は高速切断機で使用され、基本的に耐熱コートが施されていることが多いです。
オフライン切断機では、中実材の場合はチップ付きのコールドソーでの切断かバンドソーでの切断が一般的ですが、パイプ切断ではチップ付きコールドソーもしくはハイスのメタルソーを使用することが多いです。
オフライン切断機 切削条件
切削条件は機械によって異なります。
一般的なオフラインの機械ではV=100m/min程度、パイプ用高速切断機(オフライン)はV=200m~300m/minの切削速度です。
被削材によって条件を変更する必要があるため、うまく切れないという場合は工具メーカーに問い合わせるのがおすすめです。
1刃当たりの切削量(Fz)は0.03mm/zから0.05mm/zくらいが標準的。
尚、ステンレスはV=50m/minくらいで切断します。
被削材の硬度
コールドソーでの切断は基本的に生材の切断を行い、硬度は25HRC以下で本来の力を発揮する一方、30HRCを超える材ではうまく切断できない可能性が高いため注意が必要です。
刃数選定
工具選定においては刃数の選定が重要です。
中実材の場合、切断中に被削材の中に入る刃数「同時切削刃数」が鉄の切断時には3-4刃程度となるような刃数を選びます。
また、パイプではできるだけ多い刃数の工具を選ぶこととなりますが、この辺は工具メーカーがそれぞれ独自のノウハウを持っているため工具メーカーに確認しながら選定していきます。
鋼材と切削を詳しく知るなら
鋼材の特性や鋼材ごとの切削方法をより深く学びたいと思ったときにおすすめな本として、『元素から見た鉄鋼材料と切削の基礎知識』という本がおすすめ。
鋼材の特徴を詳しく解説しながら、その特性に適した加工方法を解説している本で、私もこの本を使って勉強しました。
切削について興味があるという場合には是非こちらの本を読んでみてください。
終わりに
この記事では、金属切削加工の主な加工方法である「コールドソーの切削条件」について基礎知識をご紹介しました。
金属加工では切削工程は特に重要な工程ですので、工具は良いものを選定するのが重要。また、問題が発生した時には工具メーカーに相談するのがおすすめです。
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