等加速度直線運動の代表例の一つに自由落下運動があります。
自由落下運動は、手に持ったものをそっと離して落下させるような運動で、有名なガリレオ・ガリレイがピサの斜塔から2つの重さの異なるものを落として実験したとされる「落下の実験」で検証した運動でもあります。
この記事では、自由落下運動について、その公式の意味を具体例やグラフを用いてご紹介します。
- 自由落下とは? 公式の意味と覚え方-具体例やグラフを用いて自由落下運動を解説
- 自由落下の公式
- ①v=gt(t秒後の速度を求める公式)
- ②y=1/2gt^2(t秒後の変位を求める)
- ③v^2=2gyは組み合わせ
- 自由落下の3つのグラフ
- 自宅学習ならスタディサプリがおすすめ
- 終わりに
自由落下とは? 公式の意味と覚え方-具体例やグラフを用いて自由落下運動を解説
自由落下は等加速度直線運動の代表例で、初速度0で手から物をそっと落下させるような運動を指します。
自由落下させたものは、物が重いか軽いかに関わらず同じ速度で落下しています。これがガリレオ・ガリレイが発見した「落下の法則」です。
ガリレオ・ガリレイ以前は重いものほど早く落下すると考えられていたため、ガリレオ・ガリレイの発見は世紀の大発見だったのです。
では、落下するもののスピードはどのように定まっているのか、ですが、実は後の研究によって明らかにされました。
地表において、物体が落下するときの加速度を「重力加速度」と呼び、重力加速度の値は g=9.8[m/s2] であり、この値は物体の形、大きさ、質量に依らず一定だというのです。
この重力加速度を用いて、実際にモノがどのくらいの速さで落下するのかを計算したり、落下したときの移動した距離を計算できるのが自由落下の公式です。
自由落下の公式
公式①:v=gt
公式②:y=1/2gt^2
公式③:v^2=2gy
この記事では、自由落下の公式について、その意味を具体例やグラフを使いながらご紹介します。
自由落下の公式
自由落下の公式は、等加速度直線運動の公式とほぼ同じです。
等加速度直線運動の公式は以下の通り。
①v=v0+αt(t秒後の速度を求める公式)
②x=v0t+1/2αt^2(t秒後の変位を求める公式)
③v^2-v0^2=2αs(tが分からない時に便利な公式)
この3つの公式に
・初速度v0が0(手をそっと離す)
・加速度αに重力加速度 g=9.8[m/s2] (落ちるものの速度は一定)
の2つの条件をつけ足すことで公式が完成します。
完成した公式が
公式①:v=gt
公式②:y=1/2gt^2
公式③:v^2=2gy
の3つです。
このままだと意味が分かりにくいので、一つ一つの公式の意味を考えてみたいと思います。
尚、等加速度直線運動のことがよくわからないという場合には、まず下記の記事を読んでから、本記事を読み進めていただくと自由落下の説明がよくわかるかなと思います。
※等加速度直線運動についての詳しい説明はこちら
①v=gt(t秒後の速度を求める公式)
最初の公式は、物を落としたあと、t秒たった時の速度を求める公式です。
この公式は等加速度直線運動の公式
v=v0+αt
に初速度(v0)=0、加速度α=重力加速度g=9.8を代入したものです。
実際に代入してみると、
v=0+gt
v=gt
となりました。
自由落下は、初速を付けずに静かに落下させるという意味なので、もちろん初速度は0となり、物が落ちる速さはどんなものでもg=9.8m/s^2で一定という決まりに従い、重力加速度gを時間に掛け算することで求めることができます。
上の図のように、1秒ごとに9.8m/sずつ落下速度が速くなっていくイメージです。
例えば、リンゴを高層ビルの屋上から自由落下させる時の10秒後の速度は
v=9.8x10
v=98m/s
となります。
公式①をグラフにあらわすと上のグラフのようになります。
自由落下を表すグラフは0から出発しているもので、等加速度直線運動を表す線はv0から出発しているグラフです。
自由落下は初速度0を基本としているので、等加速度直線運動のように、グラフに初速度が加算されず、0から描かれるグラフとなります。
②y=1/2gt^2(t秒後の変位を求める)
公式②は、自由落下を始めてからt秒後の変位を求める公式です。
変位というのは、物が動くことで変化した位置のことを指します。つまり移動した距離です。
自由落下の変位を求める公式も、等加速度直線運動の変位を求める公式に初速度v0)=0、加速度α=重力加速度(g)=9.8を代入することで作ることができます。
等加速度直線運動の変位を求める公式
x=v0t+1/2αt^2
にv0=0、α=gを代入すると
x=1/2gt^2
となりました。
ただ、等加速度直線運動の変位は左右の動きを表していました。つまり、家から駅まで少しずつ加速しながら進んでいくイメージです。
ですが、自由落下は上から下に落ちる動きなので、左右の動きの変位と落下の動きの変位を同じxで表すのはすっきりしません。そこで先人たちは自由落下の変位はyで表すこととしました。
y=1/2gt^2
これが自由落下の変位を求める公式です。
v-tグラフで確認
等加速度直線運動の変位の公式を考えるときにv-tグラフを使って考えると一目瞭然だったので、今回もv-tグラフを使って公式を確認してみたいと思います。
まず、v-tグラフの簡単な説明ですが、変位=移動した距離ですので、距離=速度v×時間tで求めます。
上の図は速度v0を持つ場合ときにt秒移動した距離を表しているのですが、時間が横軸(底辺)、速度が縦軸(高さ)となっているため、通常の時間×速度で求まる移動した距離(変位)が、上の図では時間t(底辺)×速度v(高さ)で表される面積だということが分かります。
つまり、v-tグラフでは、描いたグラフの面積を求めることが、変位を求めることなのです。
一方で、加速度というのは、t秒後の速度が10m/sだったとしても、そこまで達するのに、0m/s、1m/s、2m/sとだんだん速度が上がっていくので、10m/s x時間が進んだ距離とはなりません。
加速していく物体が進む距離を求めるためには、上のように、青色の三角形の部分の面積を求める必要が出てきます。
三角形の面積を求めるのですから、
底辺×高さ÷2を計算していくと、
t×gt÷2
1/2gt^2
y=1/2gt^2
となり、自由落下の公式が出来上がりました。
③v^2=2gyは組み合わせ
公式①のt秒後の速さを求める公式v=gtと公式②の変位を求める公式y=1/2gt^2の組み合わせが3つ目の公式です。
公式③v^2=2gy
この公式は時間tが分からない時に役立つのですが、作り方はとても簡単。
①を②の公式に代入することで公式を作ることができます。
①v=gtをt=の形に変形
t=v/g
②y=1/2gt^2のtに①を代入。
y=1/2g(v/g)^2
y=1/2×v^2/g
2y=v^2/g
v^2=2gy
これで3つ目の公式の完成です。
公式③はどう使う?
公式①はボールを落下させてからt秒後の速度を、公式②はt秒後の距離を求める公式だったのですが、③はどのように使うのでしょうか。
実は公式③は時間tが分からない時に使えるとても便利な公式なのです。
例えば、高い塔からボールを落下させたとき、10m落下した時点での速度を求めよ。尚、重力加速度は9.8m/s^2とする。
という問題。
時間tが分からないのですが、公式③v^2=2gyを使うとすぐに解くことができます。
y=10m, g=9.8m/s^2なので、
v^2=2x10x9.8
v^2=196
V=14m/s
と答えを求めることができました。
※鉛直投げ下ろしについてはこちら
自由落下の3つのグラフ
最後に、自由落下運動を考えるときに便利な、g-tグラフ、v-tグラフ、y-tグラフという3つのグラフをご紹介します。
g-tグラフ
g-tグラフは、縦軸にg(重量加速度)、横軸にt(時間)が使用されるグラフで、重力加速度gの変化量を一目で把握できるグラフです。
自由落下運動というのは、重力加速度が9.8m/s^2で常に一定の運動ですから、グラフのgは変化せず、下の図のようなグラフとなります。
v-tグラフ
2つ目の公式の説明に使用したv-tグラフは速度を縦軸に、時間を横軸に記してあります。
自由落下運動では初速度が0のため、0点から右上がりに重力加速度分だけ加速していくグラフとなります。
ちなみに、等加速度直線運動の場合、初速度が加わるので、v0から右上がりに上がるグラフでした。
y-tグラフ
y-tグラフは縦軸に変位が、横軸に時間が記されるグラフです。
落下の場合、初速度は0から始まり、時間がたつにつれて重力加速度g(9.8m/s^2)分だけ速度が増えていく(加速する)ので、落ちる距離も加速した分だけ大きくなっていきます。
この落ちていく変位(下向き)を正としたグラフを描くと、グラフは右上がりの曲線となります。
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終わりに
この記事では、自由落下運動についての3つの公式の紹介とそれぞれの公式が持つ意味をご紹介しました。
公式①:v=gt
公式②:y=1/2gt^2
公式③:v^2=2gy
公式を暗記するのはとても大変なですが、公式の意味や成り立ちを理解することで、納得して公式を使うことができるようになると思いますので、是非、この3つの公式の意味を考えながら自由落下運動の勉強を進めてみてください。
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