すみくにぼちぼち日記

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知れば100倍面白くなる美術館の見方(歴史画神話編)-神話画は好きなテーマの物語を絵に読む

ギリシャ神話を題材にした西洋絵画である神話画。美術館や西洋のお城などに行くと必ずと言っていいほど飾られている絵画で、天井画の主題が神話をモチーフにしていることも多いです。

日本人にとっては馴染みが薄いギリシャ神話の絵画ですが、実は絵画の中には神話の物語の世界が広がっており、「絵画を読む」ことができると、美術館がこれも出よりも一層面白いものになります。

この記事ではそんな神話画について、「知れば100倍面白くなる」をテーマにご紹介します。

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知れば100倍面白くなる美術館の見方(歴史画神話編)-神話画は物語を絵に読む

美術館で絵画を鑑賞している時に多く目にする神話をモチーフにした絵画。この絵画は歴史画と呼ばれる絵画で、神話と聖書が題材になっています。

神話画は、綺麗な絵画を心で鑑賞するだけとても楽しいのですが、実は、「絵を読む」ことで本当の面白さを引き出すことができる絵画なのです。

一方で、日本人には馴染みのないテーマが多く、難しい印象を持ってしまうことも。そんな神話画ですが、おすすめの鑑賞方法は、事前に物語を少しだけ頭に入れておくこと。好きな題材を探しながら美術館を歩くことで神話画を100倍楽しく鑑賞できます。

この記事では歴史画の中でも神話をテーマにした神話画について、「好きなテーマを探し、神話画鑑賞の魅力を美術館で堪能しよう」をコンセプトに、筆者のおすすめ作品をご紹介していきます。

 

ギリシャ神話のあらすじはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

神話画鑑賞の秘訣は好きなテーマを探すこと

神話画は読み物だということを最初にご説明したのですが、実際何が書いてあるのか分からない、ということも多いです。

そんな良く分からない神話の世界ですが、全てのお話を覚えておくのはものすごく難しいというのが実際のところ。

そこでお勧めしたいのは、自分の好きなテーマの絵を探す、という鑑賞方法です。

例えば、私は『パリスの審判』が大好きなのですが、美術館に行ったら、パリスの審判を自然と探してしまいます。自分の好きな主題があると、その絵画を見つけたときの感動も大きくなりますし、何よりも絵画を見て頭の中にストーリーがあふれ出てきて、絵画が生き生きと見えてきます。

好きなテーマの探し方ですが、ギリシャ神話はものすごく沢山のお話がありますので、全部読破するのは結構大変。そこで、今回はおすすめのギリシャ神話をモチーフにした作品をご紹介しながら、ギリシャ神話のストーリーを楽しんでいただければと思います。

ギリシャ神話の神様一覧はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

『ダナエ』-多くの画家が黄金を美しく描いた

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最初にご紹介するギリシャ神話は『ダナエ』という物語です。上の作品はレンブラント作の『ダナエ』。ロシアのエルミタージュ美術館で鑑賞することができます。

ダナエが生まれる前、父であるアクリシオスは神の神託を仰ぎます。すると「お前は孫に殺される」という神託が下りました。アクリシオスは恐れおののきダナエを塔に幽閉するのですが、ギリシャ神話の神様であるゼウスが見初め、黄金になってダナエに降り注ぐ。するとダナエは男の子を身ごもってしまったのです。

レンブラントの『ダナエ』はゼウスが黄金となってダナエに降り注ぐシーンを描いた作品。レンブラントの他にも多くの画家によって同じシーンが描かれました。

ダナエと黄金の雨 ティッツィアーノ プラド美術館

こちらはプラド美術館に所蔵されている、ティッツィアーノが描いた『ダナエと黄金の雨』。同じテーマでも画家によって表現方法に違いがあるのが面白いです。

ちなみに、ダナエの子が生まれたとき、ダナエの父アクリシオスは断腸の思いでダナエと子どもの二人を島流しにするのですが、生まれた子はペルセウスという英雄でした。メデューサ(ゴルゴンの首)を退治したり、アンドロメダを救ったりしながら最終的に母国アルゴスへ帰還しました。

アクリシオスは殺されるのを恐れて家督を譲り、隠居し、姿を暗ませるのですが、ある日開かれた円盤投げ大会でペルセウスが投じた円盤が老人に当たり、老人は死んでしまいます。そしてその老人こそがアクリシオスその人だったのです。

 

『怒れるメディア』-メディアの心を絵で表現

怒れるメディア ドラクロワ ルーブル美術館

こちらはドラクロワ作の『怒れるメディア』という作品。ルーブル美術館で鑑賞できます。

メディアというのは、英雄イアソンと結婚した魔女。イアソンは、イオールコスという国の王アイソーンの子どもです。父王アイソーンが死んだときにイアソンがまだ幼かったため、叔父のペリアースが王位を継ぎました。

ケンタウロスの賢者ケイローンのもとで育てられたイアソンは、成人を迎えるとイオールコスに戻り、王位に就くことを求めました。しかし、叔父のペリアースはイアソンが王位を継ぐ条件として、黄金の羊皮を持ち帰ることを要求します。

イアソンは黄金の羊皮の探索のためにコルキス国へ遠征します。その際にイアソンを助けたのが魔女メディアでした。

イアソンとメディアは困難の末、黄金の羊皮を手に入れ、イオールコスに持ち帰ったのですが、叔父ペリアースが王位を譲ろうとしません。そこでメディアがペリアースの娘たちに若返りの魔法といって嘘を教え、娘たちはメディアの言う通り、ペリアースを釜で茹でて殺してしまうのです。

イアソンとメディアはペリアースを殺したということで反感を買い、コリントスという国へ逃亡。しかしこのコリントスという国で、イアソンはコリントスの王女グラウケーに心変わりしてしまいます。そんなイアソンにメディアは激怒し、イアソンとの間に生まれた二人の子供に手をかけようとするのです。

この作品はメディアが子どもに手をかけようとする瞬間を描いた作品です。

 

『パリスの審判』-トロイアを滅亡に追い込んだトロイア王子の選択

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ルーブル美術館所蔵のパリスの審判。

パリスの審判は、ホメロス叙述詩の「イリアス」によって伝えられている、トロイア戦争のきっかけとなった一番面です。

ある日、天上界で神様の結婚式が行われました。すべての神様が招待されましたが、争いの神エリスのみ招待されませんでした。怒ったエリス。腹いせに「世界一美しいものへ」と書かれたリンゴを投げ込みました。すると、3人の女神(ゼウスの妻ヘラ、知恵の女神アテナ、そして愛欲の女神アプロディテ)がそのリンゴは自分のものと主張します。困った全知全能の神ゼウスがその選択を人間に託してしまうのです。

そのリンゴを受け取ったのがトロイア(現在のトルコ)の王子パリス。するとパリスの前に3人の女神が舞い降りました。ヘラは「権力と富」を、アテナは「戦場での誉と名声」を、そしてアプロディテは「絶世の美女」を、リンゴを渡せば、パリスに与えると約束したのです。王子パリスが3人の女神の中から選んだのは愛欲の女神アプロディテ。彼女にリンゴを渡しました。そして、その見返りが絶世の美女であるスパルタ王妃ヘレネでした。

パリスの審判 バチカン美術館

パリスの審判は多くの芸術家の手で絵画や彫刻として表現された主題です。バチカン美術館にも彫刻が展示されています。

 

さて、パリスは絶世の美女ヘレネを迎えますが、この略奪愛にスパルタの王メラネオスは激怒。兄のミケーネ王のアガメムノンと共にトロイアへ攻め込み、トロイア戦争が勃発。トロイアを滅亡に追い込むことになってしまったのです。

このときにギリシャ軍が使った戦術が「トロイの木馬」。

何年も戦争が続いたある日、トロイアの城の前に大きな木馬が置かれ、ギリシャ兵がいなくなっていました。実はこの木馬の中に兵士が潜んでいるのです。そして、残りの兵士は見せかけの退却。この作戦に気づかないトロイア兵は勝利を誤認し、木馬を戦利品として城の中に運びれ、勝利の宴を行いました。

夜深く皆が寝静まった頃に木馬の中からギリシャ兵が抜け出し、城の内側から城門を開き、ギリシャ軍が一気に開門された城内へなだれ込み、トロイアは滅亡してしまいました。

その後、このトロイア戦争で逃げ延びたアイネイアスというトロイアの王子がローマの地に国を建国したことでローマが誕生したといわれています。

 

『ヴィーナスとアドニス』-ヴィーナスの愛が花になる

アプロディテとアドニス ストックホルム国立美術館

ストックホルム国立美術館の『ヴィーナス(アプロディテ)とアドニス

ヴィーナスが子どものキューピッド(エロス)と遊んでいる途中、不注意からキューピッドの矢で傷ついてしまいます。そして側を通りかかったのがアドニス。ヴィーナスは瞬時に恋に。その日からヴィーナスはアドニスから片時も離れることなく毎日を送るようになります。しかしある日、アドニスは狩をしている途中、猪の牙により命を落としてしまったのです。

 

ヴィーナスとアドニス ティッツィアーノ プラド美術館

 ヴィーナスはアドニスを深く愛していたため、アドニスの死を前に涙を流します。その涙は春に咲き儚く散り行く花なりました(アドニスの血が花となったとも)。その花は春の風が吹く頃に咲くというところからギリシア語の風という言葉anemosにちなんでアネモネと呼ばれるようになったのです。

こちらも同じく『ヴィーナスとアドニス』ですが、ティッツィアーノ作でプラド美術館に展示されています。

 

ギリシャ神話のあらすじを知るのにおすすめな本はこちら

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アポロンとダフネ』-月桂冠と悲しい愛

アポロンとダフネ ベルギー王立美術館

こちらの作品はベルギー王立美術館で展示されている『アポロンとダフネ』。

ギリシャ神話の神であるアポロンはある日ヴィーナス(アプロディテ)の子キューピット(エロス)とすれ違いました。キューピットは人を恋に落とすことができる矢を持っているのですが、アポロンは言いました。「お前の矢、かっこ悪いな」怒るキューピット。キューピットは金の矢を放つ。するとたちまちアポロンはその辺りで一番美しく純粋な女性ダフネに恋をしました。

一方キューピットにぬかりはありません。ダフネには鉛の矢を放ちます。射抜かれたダフネは反対にアポロンが大嫌いになってしまいました。追うアポロン、逃げるダフネ。ダフネは願います。「どんな姿になってもいい、アポロンから逃げさせて。。。」するとどうでしょう。ダフネはたちまち月桂樹に姿を変えてしまったのです。

この絵はまさにこのダフネが月桂樹に姿を変える瞬間を描いた絵なのです。目を凝らしてみるとダフネの手が木に変わっているのがわかります。つまり、この絵のアポロン月桂冠を持っていない理由がそこにあります。

アポロン月桂冠は、アポロンがダフネを想い、ダフネが変身した月桂樹の枝を折って作った冠です。一方、この絵のシーンはダフネが月桂樹に姿を変える正にその時の情景。つまり、この絵のアポロンは時間軸を考えると、月桂冠を持ち始める前のアポロンだったというわけです。

 

ヘラクレスの神格化』-英雄が神になる時

ヘラクレスの神格化 ルモンヌ ヴェルサイユ宮殿

ルモンヌ作のヴェルサイユ宮殿の天井画『ヘラクレスの神格化』。

ゼウスは、ある日アルクメネに一目ぼれしてしまいアンフィトリュオンが戦争で居ない間に彼に扮してアルクメネの前に現れ一夜を共にします。そしてアルクメネが身ごもったのがヘラクレスでした。

夫ゼウスに浮気されたゼウスの妻ヘラはその怒りの矛先をヘラクレスへと向けます。そしてある日、ヘラクレスの正気を失わせ、彼の子ども2人を火の中に投げ込ませてしまったのです。

深く後悔したヘラクレスが神の神託を仰ぐと、神から3つの神託を得ます。

①ミケーネ王エウリュステウスに使える

②彼に課される12の難行を果たす

③すると神々の仲間入りをする

その後ヘラクレスは①、②を成し遂げ、死する時、神々の仲間入り(ヘラクレスの神格化)することとなったのです。

 

終わりに

今回は世界各国の美術館でよく目にする神話画について、「好きな題材を見つけて絵を読んでみよう」をテーマに、絵画の読み方をご紹介しました。

とても美しく見ているだけで心が癒される絵画ですが、その内容が分かればより一層絵画の魅力が深まっていきますので、是非、今回ご紹介した作品や他のギリシャ神話の題材からお気に入りを見つけて、美術館で神話画を読んでみてください。

 

ギリシャ神話などの西洋古典を学ぶならこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

※宗教画の見方はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

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