すみくにぼちぼち日記

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反論するには1つの例で事足りる-事例研究は理論の反証に役に立つ

社会科学系の大学院で研究し論文を書く時、統計分析と事例研究という2つの分析方法を学ぶことになります。この違いは、統計を用いると新しい理論を打ちたてやすくなり、事例を用いると現在の理論を反証しやすくなるというもの。

今回の記事では事例を用いることで、現在の理論を「いや、でもこういう事例もありますよ」という論理で反論できるようになるという、事例研究の意義についてご紹介します。

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統計分析と事例研究

社会科学の分野で研究する時に、大きく2つの方法で研究することができます。まず一つ目が統計分析、そして二つ目が事例研究です。

統計分析は、マクロな視点で物事を数値として分析する方法のこと。例えば、バイリンガル教育について、その習熟度と英語学習を始めた年齢についての相関関係を調べる、などをテーマにした場合に用いることができます。

一方で、事例研究は統計で打ち立てられた理論に対し、「それでもこの事例の場合は異なる結果となっているよ」ということを、事例を用いて反証することができ、新たな理論をもともとの理論に付け加える時などに用いることができます。

統計分析で打ち立てる理論は普遍的

 統計を用いて打ち立てられる理論の数々は普遍的な理論ということができます。この普遍的な理論というのは、「一般的には○○といわれている」とい様な理論のことです。

例えばバイリンガル教育について述べる場合は、「統計に基づくと、語学学習は早期に開始することが効果的である」というような理論です。

この理論は基本的には多くのデータを集め、それを比較検討し、完成したものですから、広く当てはまる理論であるといえます。

事例研究で導き出される結果は多面的

事例研究では、普遍的な理論を導き出すことは難しいといえます。というのも、1人に当てはまることが100人に当てはまるとは限らないから。

それでは何のために事例研究を実施するか、ですが、それは今研究の対象となっている事象対して、多面的に分析し、他の可能性を導き出すためであるといえます。

例えば、「バイリンガル教育は早期に行ったほうが良い」という、統計分析で導き出された理論に対して、「バイリンガル教育早期実施の反対!」という意見を主張したい場合、まずはバイリンガル教育の早期実施が及ぼす負の影響を分析すれば良いといえます。その場合に、事例を用いて、「バイリンガル教育早期実施は母語教育の発達を妨げる」というような事象を例示して、その例を多面的に研究することで、バイリンガル教育早期実施という理論を反証することができるのです。

 

日常生活でもよく見られる「事例を用いた反論」

 このような事例を用いた反証は、日常生活でも多く見られます。例えば、「いや、この理論はおかしい、だって、僕は違ったから」という反証が一番身近な例といえます。

実はこの反証方法、私もしばしば使用します。先日書いた下記の文書ですが、これは自分の例を用いて「ゲームは悪」という通説を反証しようと書いたものです。

sumikuni.hatenablog.com

この記事では、自分の経験のみを用いて、ゲームがいかに良いものかということを立証しようとしたものです(内容自体は特に真面目なものではありません)。

この記事自体は、科学的な根拠等に基づいていない記事ですので、科学的には証明されていることではないのですが、ひとつの事例を用いてとして、「ゲームは悪」という通説に多面的な見方をする必要があるのではないかという提言を行おうとしています。

このように、事例研究は、1つの例さえあれば、現在主流といわれている理論を覆すことができる可能性を秘めているのです。

 

事例一つであっても強力な道具となる

研究や交渉などの場合、自分が思っている結果に帰結しないということが多くあります。そのよう場合に、一つでも自分の主張を補強してくれる事例を提示することができると、その事例はとても強力な道具となります。

例えば、私が書いた修士論文は、事例研究だったのですが、ある理論が説明しきれていない部分を事例を用いて、「この事例ではこういう風になっているので、この理論のこの部分はこういう風に理論を付け足すことができます。」

という様な感じで自分の理論をつくりました。

研究として事例研究を行う場合には、一般的とされる理論の足りない部分やおかしい部分を一つでも良いので事例を用いて反証できると、自分のオリジナルの結論へと導くことができます。

 

反論の後には自分独自の理論を展開しよう

事例を用いた説明では一般的な理論への反証ができると書いてきましたが、反証した後に、「だから○○なんだ」 、「つまり○○したほうが良い」など、自分独自の理論を展開することが大切です。

研究だけでなく、自分の生活や仕事の中で例を用いて反証する場合も同様で、反証だけで終わると「結局解決案を提示していない」という反応が返ってきてしまうからです。

ですから、「この理論はここがこうなって、事例ではこういう例があって、だから私はこう思います。」という一連の流れがとても重要なのです。

つまり、

①一般的な理論の理解 

②理論の反証のための事例提示 

③自分の意見の提示

の3つを一連の流れとして実施することが大切であるといえます。

 

終わりに

今回は事例研究について、事例研究とは何か、事例を用いて反証すること、そして、反証に続いて自分の意見をしっかりと説明することの大切さをご紹介しました。

事例は研究においても、日常生活においても、自分の意見をサポートするためのとても重要なツールなのです。

 

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