英語を使って仕事をしたい、仕事で海外と関わりたいと思ったとき、誰もが一度は目にする仕事が「貿易事務」です。
名前を見ると、なんとなく貿易に関わる仕事だということは分かるのですが、いまいちイメージが湧きません。貿易事務の仕事を一言で言うのであれば、製品を海外のお客様へ届ける手続きを担う仕事です。
今回はそんな貿易には欠かすことのできない貿易事務の仕事についてご紹介します。
※特に企業内貿易部門のお話です。
貿易の専門家か商品の専門家
一口に貿易事務といっても、大きく分けて2つの場合があります。
貿易を仕事にするフォワーダーと、企業の一部門として貿易業務を担う企業内の貿易部門です。
フォワーダー
貿易を専門としているフォワーダーという仕事。フォワーダーは特に貿易知識が必要となる業種で、輸出入のプロ。荷主(メーカーや商社)と輸送業者(船舶、飛行機等)の間に入る役割を担っています。
※詳しい仕事内容はこちらのHPをご参照ください。
メーカーから見たフォワーダーの存在
フォワーダーさんは私たちのようなメーカーにとって頼れる専門家。貿易関係の書類や通関関係のことで分からないことはフォワーダーへ相談します。
物流業者さんは、申し訳ないのですが、価格やリードタイム等でより良い選択肢があれば変更することは多いのですが、フォワーダーさんはそのサービスの良し悪しで大きく仕事の進み方が異なりますので、信頼の置けるフォワーダーさんと良い関係を保ちたいと私は思っていました。
企業内貿易部門とは
フォワーダーは貿易の専門化ですが、企業内の貿易部門はどうのような存在なのでしょうか。企業(主にメーカー)は、製品を製造し、それをユーザーへ届けるのが仕事です。その為に製造部門、技術部門、営業部門、マーケティング部門などがあります。
貿易部門は開発し、製造し、受注を取ってきた製品を、お客さんのもとへ輸出する(輸入する)ために必要な手続きを行う部門です。
企業内貿易部門は製品と貿易のプロ
メーカーの貿易部門に求められる知識は、①製品の知識、②輸出入の知識 の2つ。製品を輸出入するとき、その製品がどのような用途に使用されるのか、どのような素材でできているのか、どの国の工場で作られているのか、などの情報がとても重要です。
例えば、新製品が出た場合、これまでの輸出入の実績にはありませんので、その製品について詳しく説明する必要があります。機械なら、何用の機械か、どのようなものを加工するのか、どのような材料でできているのか、武器生産に使用される恐れは無いか…この様な情報を的確に使用し、輸出入できるよう準備を行い、フォワーダーさんと連絡を取りながら物を動かしていくのです。
そして、このような情報はフォワーダーさんは知りえない情報ですので、製品を輸出入したいと思っている企業が情報を正しく発信しなければなりません。正しく自社製品を理解し、それを滞りなく輸出入することが、貿易部門に求められる能力なのです。
貿易部門の貿易実務の仕事内容(輸出)
会社によって異なる仕事内容なのですが、ここでは私の会社ではどのような仕事を行っているのかをご紹介します。
①受注した製品の製造への手配
営業が製品を受注してくると、それを工場で製造するための準備をしなければなりません。どの顧客向けに何の製品を何枚作ってくださいという指示を工場へ出します。
②完成した製品の梱包指示
製品が完成すると、完成連絡が入りますので、梱包・出荷部門へ連絡し、パレットなどを組んでもらいます。この製品はいつ、どこへ、どのように(船、飛行機、郵便)出荷するのかを出荷部門へ指示します。
この指示が疎かになっていると、製品が間違った場所に輸出されたり、輸出されずに工場に残ったりしてしまいます。
③梱包した製品の出荷書類準備
指示を出して梱包された製品について、今度は出荷時に必要な書類を製作します。出荷用のインボイスやパッキングリスト(重さや寸法を書く書類)、原産地証明書、被該当証明書などを準備します。
④出荷のためのフォワーダー、物流業者との打ち合わせ
準備した書類をフォワーダーへ送り、梱包した製品の港や空港への搬入指示を出します。この段階になると実際に製品が動いていきます。
⑤出荷後の売上処理
搬入指示を出し、工場から物が出荷されると最後は売上処理を行います。売上処理が終われば、この日の売上となり、「物が売れた」という結果になるのです。
⑥入金処理
モノが売れたらあとはお金をしはらってもらいます。支払ってもらったお金を確認し、入金の手続きを行い、適正にお金の動きを管理することも貿易に関する大切な仕事の1つです。
貿易部門の貿易実務の仕事内容(輸入)
①受注した製品やほしい製品の発注
商社やメーカーの海外拠点が営業活動を行い受注した製品を、製造元へ発注します。また、製造拠点やサービス拠点がある場合にはそこで使用する材料や備品を発注します。
②出荷指示
発注した製品をいつ、どのように(船、飛行機、郵便)輸入したいのかを発注先へ連絡します。また、製品の完成連絡が来た時には輸出を依頼します。
③輸入手続き
発注先から送られてくる輸出書類をチェックし、問題があれば再度造りなおしてもらいます。問題が無ければ輸送業者へ連絡し輸入手続きを行います。
④入庫処理
製品が届いたら製品を入庫します。入庫時には製品が壊れていないか、製品が足りているかなどを細かくチェックし、入庫時期などを製品に記載し、管理を行います。
⑤支払い
製品が入庫した後、支払い期日までに支払いを行います。支払いまでが終わると、一連の輸入作業は完了です。
※エントリーシートの書き方はこちら
貿易事務のやりがい
貿易実務は製造された製品をお客様のもとへ届けるためには必ず必要な重要な仕事です。失敗が許されず、成功して当たり前という環境であり、褒められる機会は少ないのに一つのミスが命取りになるという難しい仕事でまります。その為、辛く厳しいことも多いですが、反対に言えばそれだけプロフェッショナルな仕事内容が求められるやりがいのある仕事だということ。物は動かないと使えませんので、そのやりがいを感じながら仕事ができると、楽しい仕事だと思います。
※海外駐在(メーカー営業)の仕事内容はこちら
終わりに
今回は貿易事務の仕事について、特に企業内貿易部門を中心にご紹介しました。
物を動かす仕事は完璧を求められる難しい仕事ですが、それだけ重要なお仕事でやりがいもある仕事ですので、海外に興味がある、物流に興味があるという場合には是非一度企業の貿易部門も検討してみてください。
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