すみくにぼちぼち日記

メキシコ生活や欧米旅行記、語学、大学、美術館について

海外駐在後2年で過去最高売上実現。メーカー営業で予算達成に向けで実践した10のこと(BtoBメーカーの事例)

海外駐在員としてメキシコに赴任してきたのが2年前の2018年。赴任当初と現在とでは所属している現地法人の雰囲気がガラッと変わりました。当時赴任先のメキシコ法人は毎年のように予算未達を繰り返しているような弱小企業でした。

今回は赴任してから過去最高売上及び予算達成を実現させるまでに行った施策について、記録したいと思います。 

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2カ年計画-組織作りと種まきの初年度、収穫の2年目

メキシコへは2018年に赴任してきたのですが、既に年初から数ヶ月過ぎており、赴任時点で絶望的な受注・売上を記録していました。

赴任後初めに思ったことがオフィスが死んでいること。あまりにも暗い雰囲気のオフィス、言われたことだけを実施し創意工夫の無いスタッフ…また、売上の偏重も目立ちました。大手顧客、主力製品に大きく売上が偏り、新規案件も大穴狙いで進んでおらず、社内が停滞してしまっていました。そこで、2018年の売り上げは度外視して、2019年での飛躍に挑戦することにきめました。

実践したことは主にオフィスの改革と新規市場の開拓の2つ。オフィス改革では日本人が殆どの仕事を実施していた状況の改革に力を注ぎ、新規市場開拓では偏った売上比率の是正に努めました。

 

オフィス改革と社員の自発性育成-明るく、自主的に、自立して

赴任後初めに取り組んだのはオフィスの改革です。当時は従業員は言われたことだけを実施する受身の雰囲気が蔓延していました。また、オフィスがとにかく暗かったのを覚えています。この雰囲気改革のために掲げた目標が「明るく、自主的に、考えて」です。

 

①明るいオフィス作り

私は幸いにも?末っ子気質なため、周りに可愛がってもらうのは得意です。その特徴を生かして、明るいオフィス作りを実践しました。まず、挨拶は基本です。毎日の挨拶を従業員ひとりひとりに元気に実施しました。「Buenos dias!(おはよう!)」

するとだんだん挨拶が返ってくるようになるのです。たまに「おなかすいた!」、「あけましておめでとう!」や「I'll be back,Hasta la vista ,baby」的な挨拶を混ぜることで、「またあの駐在員馬鹿なこと言ってる」というような雰囲気を(あえて)醸成し、駐在員とスタッフとの壁を取り払いました。

 

②自主的に行動する大切さを学ぶ

メキシコ人スタッフの考えとして、「自分たちは言われたことだけを実施する」というものがあったように思います。この考え方は歴代の駐在員たちがハイパーやり手なスーパー社員だったので、全てを自分たちでコントロールできていたから根付いた文化でした。

私は基本自分では何もできない人間ですので、全てをコントロールするなんてとても無理。ですから、必要なこと以外は指示しないことに決めました。当然、仕事が進まないので、従業員たちは困ります。お客さんから電話が沢山かかってきます。するとこれまで指示待ちだったのが、「この駐在員の指示を待っていたら何も進まない」と思ったのか、自分から行動するようになって行きました。

 

③自分の考えは箪笥の奥底にしまってある

最後に実践したのは従業員から意見をまず言ってもらうことです。赴任当時の雰囲気として、「実施するのはメキシコ人、考えるのは駐在員」という感じがありました。考えない組織からはイノベーションは生まれません。

そこで、核の部分は自分の意見を持ちながら、従業員の「どうすれば良いですか?」と言う質問には「うーん…どうすればいいと思う?教えて?」と返すようにしました。すると従業員は「この駐在員に聞いてもだめだ。この人は現地スタッフに甘えている」という気持ちが芽生えたのか、数ヵ月後には「今こういう状況でここが困っているのですが、このように解決したらいいと思います。いかがですか?」と聞いてくるようになったのです。

この作戦の肝は相手の意見を尊重すること。私は絶対に「違う」とは言わないように心がけていました。違うかな?と思った時には、そのように思った理由をしっかりと聞き、それを踏まえて「この可能性は考えた?」、「このアイディアはこういう風にもできるんじゃない?」など修正していきます。すると最終的にはスタッフが答えを言ってくれるため、その答えを絶賛し、モチベーションに繋げられるように会話を進めました。

 

①-③を実践するうちに、必要は発明の母といいますが、上司である駐在員(私)が馬鹿なことばかり言っている、何もできない、甘えてばかりいる人間だと気づいた従業員たちは次第と自ら考え行動するようになってくれたのです。

 

人材育成-ブラックボックスを作るな!

情報を日本人駐在員で囲ってしまうのは非常に危ない行為です。この方法で仕事を行うと、情報は守ることができますが、従業員が「自主的に、考えて」仕事をすることができなくなってしまいます。機密事項を教える必要は有りませんが、製品情報やマーケット情報の開示は必要だと思います。私が赴任してきた当初、情報は日本人が囲い、ブラックボックス化していました。

 

④勉強会の定期開催で製品情報を共有

勉強会の実施はとても効果がありました。まず従業員に自分の会社のことを殆ど知らないという事実を実感させることができました。1年目は全て私が準備し研修を実施。従業員の知識の底上げを実践しました。

2年目からは従業員を2グループに分け、従業員による従業員のための勉強会へと変更。お互いが教えあう雰囲気を作っていきました。自分たちで研修を行うようになると、自分の仕事だけではなく、他の部署の仕事にも興味を持ったり、より深い知識の獲得を目指すなど、良い効果が現れました。また、一人の社員(営業員)が、プレゼン方法や営業メソッドの勉強会を自主的に企画するなど、自主性を促すことにも繋がりました。

 

※人材育成はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

⑤市場情報共有は毎月の差異分析で

市場の情報についても現地スタッフには展開されていませんでした。

スタッフはアシスタントのような立場に終始していたため、まず担当地域を決め、地域ごとに責任を持たせることにしました。月に一度の差異分析も日本人だけで実施していたのを全社で行うよう変更し、各地域の情報が相互に確認できるよう仕組みづくりを行いました。

 

市場開拓-種まきはバラエティを重視して

売上の比率と言うのは非常に重要な要素です。

私の会社では1つの分野に特化した販売戦略が組まれており、市場拡大への取り組みができていませんでした。偏った売上比率となると、当然成長が頭打ちとなってきますし、その市場の動向に左右される体制となってしまいます。この状況を打破するため、市場の多角化を実施することにしました。

 

⑥市場は無限大。自社製品の可能性を最大限活用する。

私の会社はBtoBの会社ですから、様々な工場へ製品を販売しています。すると、一部の大きなお客さんへの営業活動が中心となっていき、裾野が狭くなってしまいます。この状況を打破するため、新規開拓では別分野の製品を作っているユーザーへの販売、商社網の拡大、動きが無いユーザーへの取組の中断を実施しました。

特にこれまでとは別の分野への参入とそれに伴う商社網の拡大は効果があり、新規ユーザー獲得が加速しました。まだまだ売上の柱にはなっていない新規ユーザーへの販売ですが、これからも絶対数の増大を目指して、小さな案件でも真摯に対応したいと思います。

また、動きの無いプロジェクトの中断も思い切って実践してよかったと思います。これまでは大穴狙いで大口の顧客へのアプローチを繰り返していましたが、中々参入が難しく、同じユーザーへの営業活動を4-5年実施しながらも結果が出ていない事例が散見していました。確かに大手ユーザーへの参入は重要ですが、4年間も動きが無いユーザーへの対応に明け暮れるのであれば、その時間を規模は小さいが確実に参入できるユーザーへの活動に切り替えたほう確実に実績がつみ上がります。最終的には積み上げた小さな売上が全体の中でも大きな存在感を示すようになりました。

 

⑦販売網を全国に

市場への参入は新規プロジェクトへの参入だけでは有りません。

販売網をメキシコ全土に広げることもとても大切な取り組みでした。日本の5倍の国土があるメキシコですが、これまで営業活動を行っていた場所はかなり限定されており、手付かずの地域が沢山ありました。未開拓の地域への参入を目指し、積極的に新規商社との取り組みを開始しました。

 

⑧お客さんはグローバル

日系企業のメキシコ海外進出で上手くいく場合と上手く行かない場合では大きな違いが1つあります。それは、日系企業だけを相手にしているのか、グローバルに販売先を拡大しているのかということ。幸いにも私の会社は日系企業だけに偏った販売は行っていなかったのですが、これまでにも増してユーザーのグローバル化を意識して種まきを行いました。

 

結果は後からついてくる-しかしその為には準備が必要

オフィス改革と市場開拓を実施した後は果報は寝て待て。後からついてくる結果を待つだけ…と言うわけには行きません。結果を回収するためには結果回収のための準備が必要だったのです。

 

⑨購買は計画的に

様々な営業活動を実施する中で、特に頭をひねって行ったのは、製品の購入です。

私の会社はメーカーですが、メキシコはサービス拠点ですので、製品は事前に工場から送ってもらう必要があります。それを在庫化するのですが、この在庫化のコントロールがとても難しいところでした。

毎月のユーザーへの販売量、ユーザーの使用量、自社の購入量をバランスして、計画的に購入を行います。多すぎても少なすぎてもいけない製品の購入は、2年目の末まで自分自身で実施していました。これからはこの仕事もメキシコ人スタッフにお願いしますが…

 

結果よりも何故売れたのか・売れなかったのかを分析

これまで記した取り組みによって売上は拡大していったのですが、私が重視したのは予算達成率ではなく、何故売れたのか、売れなかったのかを分析し、改善策を練ることです。

 

PDCAの効果最大化はCとAにかかっている

「今月の売上は●●がトップ」、「売上が足りないからお客さんに頭を下げて来い」どこかで聞いたセリフではありませんか?そう、お仕事系ドラマに出てくるセリフです(先入観です)。

個人的な気持ちとして、毎月の達成率や売上高を比べること自体はそこまで重要ではないと思っています。私が重視したのは、予算と売上に差異が出ている顧客のその差異の理由を突き詰めること。そしてその差異の是正のためにどのような行動を取らなければいけないかをスタッフと一緒に考えることでした。

月初に実施する差異の分析は、予算超過している場合も予算未達の場合もどちらの場合にも実施します。そこで売りすぎていたり、注文が途絶えているユーザーを把握し、その月に訪問を実施します。差異がある時には必ず理由がありますので、その理由を事前に把握し、先んじて解決策を顧客に提案することで、問題を未然に解決し、客先の信頼獲得に繋げることを意識しました。

この分析についてもスタッフ自身が行うことで、当事者意識を持ってもらうことに注力しました。また、当初は分析がゴールとなってしまっており、分析後翌月まで何も実施していないという状況も起こっていました。ですから、最近は分析後、行動計画まで落とし込み、アポイントメントを取るところまでを一連の流れとしてシステム化しています。

 

過去最高売上を達成して

幸運にも色々実行した施策が功を奏して2年目に過去最高売上と何年かぶりの予算達成を実現することができました。

この2年間を通して学んだことは、「チームの力は一人の力の何倍もすごい」と言うこと。確かに始めは全ての仕事を自分で実行したほうが早いのですが、体が1つしかないので、動きには限界があります。その限界を自分が認めることで、周りのスタッフとチームとして仕事を行うことができたように思えます。

また、私の個人的な能力の低さを十二分に補完してくれるスタッフの能力の高さにもとても助けてもらいました。

色々実践してみましたが、結局私が行った最大の仕事は一緒に働くスタッフに甘えること。できないところを助けてもらって、みんなと一緒に会社を成長させることができたこと、また、自分やスタッフの個人的な成長をお互いに促進できたことが、今回の結果に繋がったのではないかなと思います。

 

※海外駐在で大変なことはこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

※海外駐在の仕事内容はこちら

sumikuni.hatenablog.com

 

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