すみくにぼちぼち日記

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機会費用とは何か-時は金なりを経営学の視点で考察

時は金なりという諺があります。時間は有限であるとわかっていてもなかなか有意義に過ごせないのが人間というもので、時の大切さを時には忘れてしまうことも。

この記事ではそんな大切でありながらもなかなか上手に使うことのできない「時」の価値を、経営学の「機会費用」という概念を用いて考えてみたいと思います。

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機会費用とはパラレルワールドを生きる自分からの訓告である

機会費用とはなんでしょうか。ネットにある金融経済用語集によると、下記のように説明されます。

機会費用は、「オポチュニティーコスト」とも呼ばれ、ある行動を選択することによって失われる、他の選択可能な行動のうちの最大利益を指す経済学上の概念をいいます。これは、ある行動を選択した場合、実際に選択しなかった他の行動は実現されないことから、仮に選択しなかった他の行動をした場合に得られたであろう利益が犠牲になっていることを意味します。

一般に機会費用は、日々、様々な選択肢がある中、現実的に行動する上で全ての選択肢を実現できないことから生ずるものであり、意思決定の際には非常に重要な概念となります。

出典「金融経済用語集」

機会費用とは|金融経済用語集 - iFinance

 

何となく分かったような、分からないような説明です。少し平たく言うと、自分が何かした時に、別の行動をしていたら得られていたはずの利益を得ることができなかった場合の損失のことです。

 

機会費用の例

例えば、バイトをサボって昼寝した時、昼寝と言う安息の時間の変わりに、その日の稼ぎを失うこととなります。

自給800円だとすると、バイトに行っていれば得ることができたであろう800円x5時間分を稼ぐことができないということです。つまり、実際には支払っていないお金であっても、バイトをサボったことで4000円損しているということになり、この4000円の損を機会費用といいます。

このように、機会費用という考え方を使うと、「もしも違う選択をしていたら、どのくらい得をしていたか、もしくは損をしていたか」を念頭に自分の選択肢を決めることができるようになります。つまり、機会費用とはパラレルワールドを生きる自分からの訓告なのです。

 

企業活動における機会費用の実用

機会費用経営学の概念ということで、企業においてその概念が使用されることもあります。

例えば、従来の普通のチョコレートを継続販売するのか、もしくは新商品スペシャルチョコレートを大々的に売り出していくのかなどを考える際に用いることができます。

普通のチョコレートを販売し続けると、一個100円で月100個、合計10000円売り上げることができます。スペシャルチョコレートは一個300円ですが、知名度が低いため月の販売量がわかりません。

ですが、市場調査で高級路線のチョコが流行りだと分かっており、普通のチョコレートを売り続けるためには、スペシャルチョコへの切り替えを行った時の機会費用より普通チョコの売り上げが上回る必要があるのです。

他にも、製造設備への投資などに関してもこの機会費用の考え方が役に立ちます。10億の設備を導入するかしないか。しない場合は10億の出費は無くなりますが、代わりに生産キャパオーバーでまだまだ沢山隠れている需要に対して十分な供給ができなくなり、未来の売り上げを失うことになります(機会費用)。

一方で投資した場合、投資しなかった場合に比べて10億の出費がかかりますが、将来的な売り上げ拡大につながる可能性があります。この投資した場合の予想利益が投資しない場合の費用を超える場合、投資を行うべきと判断することができるのです。

 

機会費用の概念の応用

機会費用がどのようなものか分かったところで、この概念の応用可能性について考えてみたいと思います。

そもそも、人間が何かを選択するときに、「お金」だけを見て選択することはありません。人の人生には、各々が満足した生活を送るためのいろいろな尺度があり、各個人は自分が幸せに暮らすことができるための選択を常に行っています。

先ほど見た、アルバイトを休んで昼寝した場合の例ですが、確かにお金の側面を見ると機会費用は4000円となりますが、一方で昼寝をしたからこそ得られる満足感や、体力の回復などの利点もあるわけです。ですから、ある選択をしたときの機会費用と別の選択をしたときの機会費用は、各々異なってくるといえます。

この考え方を応用すると、人生で自分がする選択に裏付けを与えてあげることが可能となります。

例えば、大学院に進学するか大学卒業後に就職するかです。大学院に進んだ場合、大学卒業後直ぐに就職したときに得ることができたはずだったお給料を得ることができません。

内定を貰っていた会社の初任給の年収が300万だったとすると、年間300万の損失、大学院は2年間ありますので、大学院に行かずに就職していたら稼げるはずだったお金は300万x2=600万ということです。また、大学院の費用がかかりますので、ここに支出(実費)も加わります。年間学費が50-100万ほどですので、2年間で150万と仮定すると、大学院進学によって失われる費用は2年間で実質750万円となり、これが機会費用となります。

この大学院進学に関して言うと、その後大学院に進んだおかげでお給料がアップする可能性も有りますし、逆に大学院卒の採用が厳しく就職できない可能性もありますので、この機会費用に見合った収入を将来得ることができるかどうかで大学院進学の価値が変わってくることになります。

一方で、大学院に行く場合にはいかなかった場合に比べて様々な学びを得ることができますし、卒業することで学位も得ることができます。進学した場合のメリット・デメリット、進学しなかった場合のメリット・デメリットを考えて進路を決定することになりますが、その際の判断材料として機会費用の考え方を取り入れることができます。

遊びやデートに関しても同じで、遊びやデートに行く場合の機会費用が行かなかった場合の機会費用を上回る時は遊びやデートに行くべきということです。

 

終わりに

人生というのはどんな時でも時が流れています。

自分が過ごした時間では発生しなかった損失であっても、パラレルワールドを生きる自分がからしたら損失を生み出している、そんな不思議なことが起こるのです。そしてその考え方を機会費用と言い、例え架空の世界のことを考えているにしろ、自分の選択をより確かなものにするために、この機会費用の考え方は有用だといえます。

今日バイトに行こうかデートに行こうか、家の手伝いをしょうかゲームをしようか、宿題をしようか遊びに行こうか…選択には常に何らかのコスト(不利益)がかかり、また、何らかの便益(その選択をして良かったと思うこと)もあります。

時は金なり。機会費用とはこの諺の現代語訳なのです。

 

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